Dear my...

28章

家にどう帰ったのか記憶はない
真っ直ぐ母さんの元へ行く
無言で机に指輪ケースと手紙をおく
怒ってる訳では無いけれど心に余裕などなかった

「これ…」

母さんの顔が強ばる

「…これは想定外ね…」

「俺、何を忘れてるの？」

声が上ずって、ただでさえ言葉が上手くないのに、一言言うのがやっとだった
俺の推測は多分9割当たっている
俺の本能みたいなものが正しいと告げている
それなのに、誰も俺に話さなかった
「俺が」思い出すことに意味があるなら他のやり方があるはずだ
思えば色々とおかしいパズルを自動的にはめていっているように状況証拠は揃っていく
それでも、「彼女」は俺の頭の中のどこにもいない
目覚めた後、初めての出会いのような「再会」のあとの記憶しかない

「…なんで、…」

言葉が続かず俺は座り込んだ
母さんは手紙を持ち上げると封筒の住所を指さした

「この住所の所に行きなさい」