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プロローグ
2話
しおりを挟む「あ、飯食いそびれた」
目元の赤みも取れ、イラつきが治まった高那は髪型を整え、歯を磨き、投げつけたフェイスタオルを隣室にある洗濯機に放り込んで荷物を持って寮の部屋を出て学校に行くためのホールに向かっている時、朝食をとっていないことに気づいた。
「今何時だろ、時間あるならなにか食べに行けるが……」
いつもは自室で朝食(夕食もだが)をとっているが、今日は夢を見たのと、嫌なことを考えたせいですっかり忘れていた。
食べ物が入っていないと今頃認識した胃がぐぅぐぅと鳴り出す。
右袖をめくって部屋を出る前につけた腕時計を見ると今の時刻は八時五分。学校が始まるのは九時からだ。まだ食堂は空いているはずなので今から食べてもぎりぎり間に合う。
「時間的に余裕はないが食べる時間はなんとかあるな。さっさと食堂に行って軽くなにか食べるとするかな」
このままぐぅぐぅと鳴り続けたまま流石に授業には出たくないし、空腹で授業を受けるどころの話ではなくなるだろう。
そうと決まればさっさと行かなくてはと思いながら高那は向かう方向をホールから食堂に変えた。
+++
食堂は寮の一階にある。生徒用の部屋は二階からで一般生徒の一年生が二階、二年生が三階、三年生が四階、特別生徒が五階となっている。特別生徒とは役職持ちや特待生のことを指す。高那は二年生で風紀会副会長という役職を持っており、五階に住んでいる。ちなみにこの学校は全寮制だ。寮自体もかなりでかい。煌びやかな装飾が寮の廊下などに設置されているため高那はいつも無駄に金を使いすぎじゃないのかとよく口にする。そのくらいここは可笑しいのだ。
食堂に入ると、時間が遅いのにも関わらず混雑していた。ざわざわとする中、高那は入口近くにある食券機に向かう。何人かが並んでいたので列の後ろに行き、食券機の上の電光掲示板のメニュー表を見ながら何を食べようか悩んでた時、前に並んでた人が高那に気づき話しかけた。
「おはよう高那。珍しいな食堂に来るなんて。お前自炊派だろ? どうしたんだ?」
「おはようございます仁科風紀会長。ちょっと夢見が悪くて作る時間なかったんで久しぶりに食堂もいいかと思いまして」
「ふーん、なぁついでだし一緒に食わねぇ?」
「別にいいですが……」
仁科祐紀風紀会長。責任感が強くてすごくかっこいい!と一般生徒には人気だが、その本性はめんどくさがり屋の重度なブラコン。風紀室では仕事もやらないで携帯に入っている写真を見ては「可愛いな~」と気持ち悪いくらい頬を緩ませてはぁはぁ言ってる変態である。流石に一般生徒がいるところでは自重しているようだが……。
高那が了承の返事を返すと、仁科は「わかった、券買ったら席とっとく」と言って、空いた食券機(食券機は4台ある、何故かタッチパネル式)に向かった。今日はもう疲れたなぁと高那は、はぁっ……とため息をついた。
「無難にコーンスープでいいかな」
疲れを表すように眉をしかめながらメニュー表を再度見た高那は決めた。値段は212円でわりと軽いものだしそんなに時間もかからない。
高那は空いた食券機に移動しコーンスープの券を買った。
「これ、お願いします」
買った券は、”食券お渡し口”という場所にいる人に渡すのだが(渡し口は全部で6つ)、種類ごとにわけられている。コーンスープはスープ類に分けられるので高那はスープ類の場所に行き、そこにいる青年に券を渡した。
「あいあいさ~! んーと、コーンスープお願いしますー!!」
券を受け取った青年は船乗りのような返事をし、厨房にいる料理人たちに声をかけた。
「んじゃ、受け取り口でお渡ししますんで受け取り口の方でちょっと待っててくださいな!」
ニカッと爽やかな笑顔を高那に見せながら青年は移動を促した。
「お待たせしました~、コーンスープでお待ちのお客様~?」
「あ、俺です。ありがとうございます」
コーンスープが出てくるまでにそう時間はかからなかった。コーンスープを受け取り、仁科を探すために高那は食堂内を見渡した。
「おーい! こっちだ!」
見渡している高那に気づいたのだろう、仁科が手を振りながら高那を呼ぶ。
その様子を生徒達が見てキャーとはしゃいでいた。
思わずこめかみにコーンスープを持っていない方の手を当ててしまった高那は今行きますと小さく呟きながら仁科の元に向かった。
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