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🌹『翠玉のケエス:芽吹』🌹 本編 💎 WHEEL of FORTUNE:U 💎
Drop.003『 WHEEL of FORTUNE:U〈Ⅱ〉』【2】
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その低く優しげな声に、法雨は、少しだけ罪悪感を覚えた。
法雨にとって、この男は、見ず知らずの赤の他人であるが、この男からしても、法雨は、見ず知らずの赤の他人だ。
だが、この男は、そんな――義理ひとつない赤の他人である法雨を助けるべく、必死になって駆けつけてくれた。
もちろん、助けなど頼んではいないし、放っておいてほしいという言葉は本心に変わりない――とは云え、感情のままにとった態度は――、投げつけた言葉は――、やはり、適切ではなかったように思う。
法雨は、そんな後悔から密かに反省すると、己の罪悪感を和らげるべく、取り繕いの言葉を添えた。
「――えっと……その……、――アタシは大事にしたくないって気持ちもあるのよ。――だから、助けようとしてくれた事には本当に感謝してるわ。でも、本当に平気だから。――だから、もう、これきりにしてもらって大丈夫よ」
すると、そんな法雨の言葉を素直に受け取った男は、念のため――、といった様子で言った。
「――分かりました。――では、ご自宅までの道も、おひとりで大丈夫ですか?」
法雨は、その男の心遣いに驚きつつも――、
「――え、えぇ……。――大丈夫よ……」
と、ぎこちなく頷いた。
もちろん、男の申し出を不要としたのは、彼が信頼できないからではない。
むしろ、このような経緯でさえなければ、法雨はきっと、この男と喜んで帰路を共にしただろう。
だが、今の法雨の中には、これ以上、この男への酷い行いを重ねたくないという思いしかなかった。
だからこそ、一刻も早くこの男と別れ、この居心地の悪い状況から脱したかったのだ。
それゆえ、法雨は、この場を脱するための言葉をさらに紡ぐ事にした。
「――あの、もしかしたら、アタシのこの話し方で脳が勘違いしてるのかもしれないけれど、――アタシ、見ての通り男なの。――もちろん、大柄なアナタからしたら軟弱に見えるでしょうけど、アナタが考えてるほど、か弱くはないわ」
そんな法雨に、男はまたゆっくりと頷き承諾の意を示すと、次いで、ポケットから小さなアルミケースを取り出した。
そして、そこからまた一枚の小さな紙を取り出すと、静かに差し出した。
「――? ――えっと……」
それに、法雨が不思議そうにすると、男は、変わらず優しげな声で言った。
「――この度は色々とお節介をしてしまい失礼しました。――こちらには、自分の連絡先が記してあります。――先ほど、あちらの扉を壊してしまったので、修理費用が分かりましたら、ご連絡ください。――かかった費用は、すべて自分が弁償させて頂きます」
「――あ、あぁ。なるほど……。それはまた……ご丁寧にどうも……」
先ほどから散々と無礼な態度をとっているにも関わらず、男の親切心が微塵も揺らがぬ事に困惑しながらも、法雨はその紙を丁寧に受け取った。
差し出されたのは、一枚の名刺だった。
その飾り気のない名刺を法雨が見ていると、男は、ふと思い立ったようにして言った。
「――あぁ、それと……。――恐縮ですが、最後に一つだけ、お伺いしてもよろしいでしょうか」
法雨はそれに顔をあげると、不思議に思いながらも言った。
「――あぁ、えぇ。――何かしら」
法雨にとって、この男は、見ず知らずの赤の他人であるが、この男からしても、法雨は、見ず知らずの赤の他人だ。
だが、この男は、そんな――義理ひとつない赤の他人である法雨を助けるべく、必死になって駆けつけてくれた。
もちろん、助けなど頼んではいないし、放っておいてほしいという言葉は本心に変わりない――とは云え、感情のままにとった態度は――、投げつけた言葉は――、やはり、適切ではなかったように思う。
法雨は、そんな後悔から密かに反省すると、己の罪悪感を和らげるべく、取り繕いの言葉を添えた。
「――えっと……その……、――アタシは大事にしたくないって気持ちもあるのよ。――だから、助けようとしてくれた事には本当に感謝してるわ。でも、本当に平気だから。――だから、もう、これきりにしてもらって大丈夫よ」
すると、そんな法雨の言葉を素直に受け取った男は、念のため――、といった様子で言った。
「――分かりました。――では、ご自宅までの道も、おひとりで大丈夫ですか?」
法雨は、その男の心遣いに驚きつつも――、
「――え、えぇ……。――大丈夫よ……」
と、ぎこちなく頷いた。
もちろん、男の申し出を不要としたのは、彼が信頼できないからではない。
むしろ、このような経緯でさえなければ、法雨はきっと、この男と喜んで帰路を共にしただろう。
だが、今の法雨の中には、これ以上、この男への酷い行いを重ねたくないという思いしかなかった。
だからこそ、一刻も早くこの男と別れ、この居心地の悪い状況から脱したかったのだ。
それゆえ、法雨は、この場を脱するための言葉をさらに紡ぐ事にした。
「――あの、もしかしたら、アタシのこの話し方で脳が勘違いしてるのかもしれないけれど、――アタシ、見ての通り男なの。――もちろん、大柄なアナタからしたら軟弱に見えるでしょうけど、アナタが考えてるほど、か弱くはないわ」
そんな法雨に、男はまたゆっくりと頷き承諾の意を示すと、次いで、ポケットから小さなアルミケースを取り出した。
そして、そこからまた一枚の小さな紙を取り出すと、静かに差し出した。
「――? ――えっと……」
それに、法雨が不思議そうにすると、男は、変わらず優しげな声で言った。
「――この度は色々とお節介をしてしまい失礼しました。――こちらには、自分の連絡先が記してあります。――先ほど、あちらの扉を壊してしまったので、修理費用が分かりましたら、ご連絡ください。――かかった費用は、すべて自分が弁償させて頂きます」
「――あ、あぁ。なるほど……。それはまた……ご丁寧にどうも……」
先ほどから散々と無礼な態度をとっているにも関わらず、男の親切心が微塵も揺らがぬ事に困惑しながらも、法雨はその紙を丁寧に受け取った。
差し出されたのは、一枚の名刺だった。
その飾り気のない名刺を法雨が見ていると、男は、ふと思い立ったようにして言った。
「――あぁ、それと……。――恐縮ですが、最後に一つだけ、お伺いしてもよろしいでしょうか」
法雨はそれに顔をあげると、不思議に思いながらも言った。
「――あぁ、えぇ。――何かしら」
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