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🌹『翠玉のケエス:芽吹』🌹 本編 💎 JUSTICE:U 💎
Drop.018『 JUSTICE:U〈Ⅲ〉』【4】
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「あぁ、そういえばそうだったわねぇ。――その時、桔流君があまりにも乱暴に放るから、そのまま倒れちゃうかと思ったら、――案外平気そうにしてたわね。――でも、それがどうして悪かったの?」
「――“それが”、癪に障ったんです。――派手に転がってくれれば、まぁ気が済んだんですけど、生意気にも踏みとどまったんで、――やっぱ殴っとこうと思って」
「えっ……」
京は、そのさらなる真相に動揺し、再度鳴いた。
すると、桔流は悪びれもせず、変わらず胸を張ったまま言った。
「んだよ」
「――い、いえ……。――なんでも……」
京は、桔流が自身を殴ったのは、法雨への非道な行いに対する戒めが、その理由のすべてだと思っていたがゆえ、桔流の述べた真相にはいささか動揺せざるを得なかった。
――とはいえ、桔流がそう言っているだけで、実際は戒めのためであったのかもしれず――、京を動揺させた言い分は、桔流なりに、その場を和ませるために添えられたものかもしれないと、その二人のやりとりを見守っていた法雨は解釈している。
そして、その時の法雨は、その騒動を経た後の京と桔流の関係について、少しばかり心配していたのだが――、騒動が済んでからの桔流は、京とこれまで通りに接し始めた事もあり、その先も、二人の関係が変わる事はなかった。
💎
そんなひと騒動も、今となっては懐かしい話となっているが――、法雨は、その騒動で戒められた京が、カウンターで穏やかに眠っている姿を見やると、桔流との関係が崩れなかった事に、改めて安堵の笑みを零した。
その法雨に、桔流は溜め息交じりに言う。
「――それに、コイツ相手だったら、法雨さんは“食べる派”でしょ? ――それなのに、よく“頂かれて”やってましたね」
それに、法雨は悪戯っぽく応じる。
「アラ~。――流石、桔流君。――よく分かってるじゃないの。――これまでたっぷり食べられてただけあるわね」
そんな法雨に、桔流は不服そうに言う。
「お、俺の話はいいんですよ。――それに、それは、“始まり”の状況が状況だったから、それがズルズルいっただけの話で……、――俺だって、法雨さんの事、頂ける側なんですからね」
「ふふ。――はいはい」
桔流と法雨は、恋愛に発展する事はなかったが、とある理由から、過去しばらくの間、頻繁に体を重ねている時期があった。
その時期こそが、桔流が法雨を“恩人”として慕っている理由となっているのだが、その間の事を知っているのは、法雨と桔流だけである。
そして、その様な事もあり、桔流は法雨に“頂かれていた”経験が豊富にあるというわけなのだが――。
法雨は、そんな桔流との“かつて”の日々もしばし振り返り、立派になったものだと親心に浸る中、立派になった桔流が京を起こしている様子を見やりながら、“あの日”の事を思い出した。
(――今でも、“あのオオカミ”の事は嫌いだし、アイツのせいで、見ず知らずのオオカミには、警戒するクセがついてしまってるの事実。――だけど、京たちや雷さんには、警戒する方が難しいくらい、良くしてもらったし、今も、本当に良くしてもらってる……)
――だからこそ、と、法雨は思う。
(――だからこそ、――アタシじゃ、どうにもできない恋かもしれないけど……、――少しでも役に立てるなら、――恩返しも兼ねて、雷さんが幸せになるためのお手伝いをさせて頂きたい。――だから、――どうしたらお役に立てるか、――改めて考えてみなくちゃね……)
そうして、法雨は、再び雷の事を想うと――、カウンターから身を起こし、眠気眼を擦る京に、朝の挨拶を贈った。
Next → Drop.019『 The EMPRESS:R〈Ⅰ〉』
「――“それが”、癪に障ったんです。――派手に転がってくれれば、まぁ気が済んだんですけど、生意気にも踏みとどまったんで、――やっぱ殴っとこうと思って」
「えっ……」
京は、そのさらなる真相に動揺し、再度鳴いた。
すると、桔流は悪びれもせず、変わらず胸を張ったまま言った。
「んだよ」
「――い、いえ……。――なんでも……」
京は、桔流が自身を殴ったのは、法雨への非道な行いに対する戒めが、その理由のすべてだと思っていたがゆえ、桔流の述べた真相にはいささか動揺せざるを得なかった。
――とはいえ、桔流がそう言っているだけで、実際は戒めのためであったのかもしれず――、京を動揺させた言い分は、桔流なりに、その場を和ませるために添えられたものかもしれないと、その二人のやりとりを見守っていた法雨は解釈している。
そして、その時の法雨は、その騒動を経た後の京と桔流の関係について、少しばかり心配していたのだが――、騒動が済んでからの桔流は、京とこれまで通りに接し始めた事もあり、その先も、二人の関係が変わる事はなかった。
💎
そんなひと騒動も、今となっては懐かしい話となっているが――、法雨は、その騒動で戒められた京が、カウンターで穏やかに眠っている姿を見やると、桔流との関係が崩れなかった事に、改めて安堵の笑みを零した。
その法雨に、桔流は溜め息交じりに言う。
「――それに、コイツ相手だったら、法雨さんは“食べる派”でしょ? ――それなのに、よく“頂かれて”やってましたね」
それに、法雨は悪戯っぽく応じる。
「アラ~。――流石、桔流君。――よく分かってるじゃないの。――これまでたっぷり食べられてただけあるわね」
そんな法雨に、桔流は不服そうに言う。
「お、俺の話はいいんですよ。――それに、それは、“始まり”の状況が状況だったから、それがズルズルいっただけの話で……、――俺だって、法雨さんの事、頂ける側なんですからね」
「ふふ。――はいはい」
桔流と法雨は、恋愛に発展する事はなかったが、とある理由から、過去しばらくの間、頻繁に体を重ねている時期があった。
その時期こそが、桔流が法雨を“恩人”として慕っている理由となっているのだが、その間の事を知っているのは、法雨と桔流だけである。
そして、その様な事もあり、桔流は法雨に“頂かれていた”経験が豊富にあるというわけなのだが――。
法雨は、そんな桔流との“かつて”の日々もしばし振り返り、立派になったものだと親心に浸る中、立派になった桔流が京を起こしている様子を見やりながら、“あの日”の事を思い出した。
(――今でも、“あのオオカミ”の事は嫌いだし、アイツのせいで、見ず知らずのオオカミには、警戒するクセがついてしまってるの事実。――だけど、京たちや雷さんには、警戒する方が難しいくらい、良くしてもらったし、今も、本当に良くしてもらってる……)
――だからこそ、と、法雨は思う。
(――だからこそ、――アタシじゃ、どうにもできない恋かもしれないけど……、――少しでも役に立てるなら、――恩返しも兼ねて、雷さんが幸せになるためのお手伝いをさせて頂きたい。――だから、――どうしたらお役に立てるか、――改めて考えてみなくちゃね……)
そうして、法雨は、再び雷の事を想うと――、カウンターから身を起こし、眠気眼を擦る京に、朝の挨拶を贈った。
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