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聖女の力は万能で…はありません①
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お茶を啜っている間三人は無言だった。
その沈黙を破ったのは他でもないアドリアーヌだった。
「えっと……その……私を好きというのは……友情的なものですよ……ね?」
クローディスは一応上司に当たる存在だし(本当の上司はサイナスだが)、王太子殿下だ。
その彼が自分を好きだとは考えにくい。
現に今までそんな素振りは見えなかった。
一方アイリスは同性。
前世が二十一世紀OLの自分では同性愛者は別に何とも思わないが、アイリスがそっちの人間だと思わなかったのでちょっと戸惑ってしまう。
「今までの流れでそう思うのか?」
クローディスは深い深いため息をついて額で手を覆って上を見上げている。
「私は……本気です。私はお姉さまを誰にも渡したくないんです。世界に二人になっても傍にいたいと思っています」
「と言うと二人ともその……恋愛的な意味で好意を持ってくれているというわけかしら?」
アドリアーヌとて前世も現世も通じて恋愛はそれなりにしてきた。
が、だが恋愛体質ではない上に、学生の時は部活と勉強と受験、社会人になってからは仕事優先な生活だった。
しばらく恋愛というものから遠ざかっていたのでどうしていいか分からない。
それよりもアドリアーヌには優先すべき事柄があり、この状況でも思わずそっちを考えてしまう。
そう……断罪ルートの事だ。
(待って待って……ということはクローディスルートには進んでない!?)
この間までようやく断罪ルートを回避できる可能性を感じていただけにアドリアーヌにとっては二人からの告白よりもそっちが勝っていた。
(それにアイリスが私を好きだってことは、更に言うと誰のルートにも入っていないことよね。うーん……よく分からなくなってきた)
そもそも以前アドリアーヌはアイリスと攻略対象者との恋愛フラグをことごとく折ってしまっている。
もしかして未来が変わっているのではないか……。
そんな思いが頭をよぎる。
(ここはゲームの世界じゃない……現実なのよね……。運命は……変えられる?)
確かに設定などなどは乙女ゲームの世界ではある。
自分もその中の登場人物で悪役令嬢というキャラクターでもある。
だが、この世界は現実で、攻略対象や他の登場人物にも感情もあるしゲームでは語られない毎日の生活もある。
そう思い至るとアドリアーヌは大きなため息をついた。
(運命を変えられるという流れもあるのかも)
グランディアスでは前世の記憶もなく、また運命に抗うこともしなかったから断罪という結末を迎えた。
だが今の自分は違う。
そう思うと断罪ルートを回避というよりは運命に立ち向かっていく方が自分らしいのではと思い始めた。
そんなことを考え込んでいたアドリアーヌはクローディスとアイリスの声によって現実に引き戻された。
「聞いていらっしゃいますか?お姉さま」
「あ?ごめん、なんだっけ?」
「俺とこの娘、どちらを選ぶんだ?」
「えっと……」
一瞬断罪ルートを考えて現実の問題を放置していたが、まずはこの状況に向き合わないといけない。
ただ現時点で選ぶというのは土台無理な話だ。
どう答えようかと口を開いた時だった。
突然ドアが開いたと思うと、サイナスが駆け込んできた。
いつも冷静な彼には珍しく息を切らしている。
「サイナス様、どうなさったのですか?」
驚いて声をかけるアドリアーヌだったが、サイナスはそれには目をくれずにその視線をアイリス向けた。
「あぁ、アイリス嬢。こんなところにいらっしゃったのですか」
「はい……どうかされたのでしょうか?」
「リオネルを助けてください……」
状況がつかめないままアドリアーヌ達はサイナスに引っ張られるようにバタバタ連れて行かれるまま、ある一室についた。
(ここ……医務院だわ)
リオネルに何かあったのだとすぐに分かった。
何が起こるのか……アドリアーヌには不安しかなかった。
嫌な予感が脳内を巡っていく。
「リオネル、入るよ」
リオネルの返事も待たずサイナスはドアを開けて中へと入っていく。
まるでこの部屋の主が返事ができないことを分かっているかのように。
そっと通されるようにアドリアーヌは室内に入り、息をのんだ。
そこにはうなされる様に眉間にしわを寄せて寝ているリオネルがいた。
体中に包帯を巻かれる形で、何より異様だったのはその包帯から血が滲んでいるのだ。
頬にもやけどの跡がある。
何とかガーゼのようなもので押さえられているが、広範囲に広がっているためにガーゼから火傷のただれているのが見えている。
「な……これは……」
「リオネルがこの間王命を受けて遠方に派遣されたことは知っていますよね」
「え?ええ」
「グランディアス王国との国境警備の視察ですが、そこで敵襲に合いました。敵から何とか砦を死守したのですが……その戦いの中でリオネルがこの状態に」
「敵というのは……グランディアス王国……ですか?」
グランディアス王国とは一応現時点では停戦条約を結んでおり、これから友好国としての一歩を歩き出そうという段階である。
それなのに国境沿いの砦に敵襲があった……ということはグランディアス王国が攻めてきたと思わずにはいられない。
「まだ決まったわけではありませんし、グランディアス王国とは微妙な関係ですからね。あまり断定したことは言いたくないですが……」
その時リオネルがうっすらと目を開け、か細い声で何かを言った。
「殿下……申し訳ありません……このようなお見苦しい姿を……」
「いい。戻ってきてくれただけで十分だ。大丈夫か?気をしっかり持て!!」
「もう少し……殿下のお傍で力を尽くしたく……思いましたが……無念です」
今にも途切れそうになるリオネルの意識を保つためアドリアーヌも知らずに駆け寄っていた。
「リオネル様!しっかりしてください!」
「アドリアーヌ……か……、貴方にはずっと謝りたかった……出会った時のこと……すまなかった」
リオネルと出会った時、アドリアーヌに敵意全開だった。
アドリアーヌとしてはその後リオネルとも良好な関係であったし、何かと気にかけてくれる存在だ。
今更謝られることなどない。
「そんなことはいいんですよ!それよりもいっぱい助けてもらいました!」
資料を片付けたり荷物を持ってくれたり、セギュール子爵の残党から襲われた後には護衛として共に帰りずっと側で守ってくれたことも多かった。
無表情な彼がアドリアーヌのお菓子を食べる時に少し微笑むのが好きなのもあって訓練場に差し入れに言っていたと過言でもない。
そのリオネルの命が消えようとしている。
「もしかして俺は……貴方が好きだった……のかも……知らない……だから最後に会えてよかっ……た……」
「リオネル様!」
アドリアーヌが声をかけても、リオネスからの反応はない。
かすかに息をしていることだけは確認できた。
「医者の診立てでは、もう長くはないということです」
「そんな……」
呆然としたアドリアーヌはそれしか言えなかった。
崩れ落ちそうになるアドリアーヌを支えたクローディスだったが、そのままアイリスを見た。
「都合がいい願いだとは分かっているがなんとかならないか?」
「僕もそれで貴方を連れてきました、アイリス嬢。お願いできませんか?」
初めて人の死に立ち会うであろうアイリスは青ざめた顔で震えてる。
それなのに話を振られ体がビクッとしていた。
「わ……私……ですか?」
「はい、聖女の貴方の力でなんとかならないでしょうか?」
「……お姉さまも……それを望みますか?」
サイナスの言葉を受けたアイリスはアドリアーヌに意見を求めてきた。
「もちろん……可能から助けて欲しいわ」
「分かりました……まだ……あの……力が使えるか分からないですけど……やってみます!」
そうしてアイリスはごくり小さく息をのむと、目を閉じてリオネルの手を握った。
淡いピンクを帯びた金の光がアイリスの体からリオネルの体に流れていく。
あまりにも幻想的で美しい光景を見て、光はアイリスの髪の色だなぁとアドリアーヌはぼんやりと見つめた。
やがて光が収まると、リオネルの顔のやけどはすっかり無くなっていた。
「……痛みがない……これは?」
驚きつつベッドから体を起こすリオネルをアドリアーヌは慌てて支えた。
「アイリスが聖女の力を使ってくれたんです」
「そうか……礼を言う。本当に……ありがとう。命の恩人だ」
「無事に力が使えて良かったです。まだ不安がありましたから」
アイリスもほっとしたように息をついた。
「まだ砦には負傷者も多い。殿下、医師の派遣と薬の手配をお願いできないでしょうか?」
どうやら戦いのあとリオネルは王都にそれを告げるために必死で馬を走らせてきたらしい。
一番負傷者していただろうに近衛兵としてクローディスに一番に報告しなければと言う思いからのようだった。
「あぁ、そのことは王太子としてこちらで対応する。お前は休め」
「ですが、私は近衛兵です。殿下のそばにおります」
「さっきまでボロボロだったんだぞ!いいから休め。これは命令だ!」
「……承知しました」
こうしてリオネルの怪我が全快した話は国王の耳にももちろん入った。
そして国境への支援として軍が派遣されたのだが、聖女アイリスも従軍することになってしまった。
これはアドリアーヌにとってもリオネルたちにとっても予想外のことだった。
リオネルの怪我を見て震えていた少女を救護といえ派遣するのはとアドリアーヌは思ってそれを止め
たかったが、王命には逆らえない。
危険な国境に妹にも似た友人を送り出すのは辛かったが、アドリアーヌの予想に反してアイリスは気丈に振る舞った。
「大丈夫ですよ、お姉さま……。怖いですけど……お姉さまもこの件でお忙しいでしょうし、私も頑張ります」
出立の日、泣きそうになりながらもアイリスは微笑んで城を発って行った。
あの自分に自信がなさそうにしていたアイリスの成長は喜ばしいものではあったが、こんな時に気丈に振る舞うアイリスには複雑な感情を持ってしまう。
そうしてアイリスが現地入りした七日後の夜の事だった。
その知らせは突然もたらされた。
アイリスが昏睡状態に陥ったと。
その沈黙を破ったのは他でもないアドリアーヌだった。
「えっと……その……私を好きというのは……友情的なものですよ……ね?」
クローディスは一応上司に当たる存在だし(本当の上司はサイナスだが)、王太子殿下だ。
その彼が自分を好きだとは考えにくい。
現に今までそんな素振りは見えなかった。
一方アイリスは同性。
前世が二十一世紀OLの自分では同性愛者は別に何とも思わないが、アイリスがそっちの人間だと思わなかったのでちょっと戸惑ってしまう。
「今までの流れでそう思うのか?」
クローディスは深い深いため息をついて額で手を覆って上を見上げている。
「私は……本気です。私はお姉さまを誰にも渡したくないんです。世界に二人になっても傍にいたいと思っています」
「と言うと二人ともその……恋愛的な意味で好意を持ってくれているというわけかしら?」
アドリアーヌとて前世も現世も通じて恋愛はそれなりにしてきた。
が、だが恋愛体質ではない上に、学生の時は部活と勉強と受験、社会人になってからは仕事優先な生活だった。
しばらく恋愛というものから遠ざかっていたのでどうしていいか分からない。
それよりもアドリアーヌには優先すべき事柄があり、この状況でも思わずそっちを考えてしまう。
そう……断罪ルートの事だ。
(待って待って……ということはクローディスルートには進んでない!?)
この間までようやく断罪ルートを回避できる可能性を感じていただけにアドリアーヌにとっては二人からの告白よりもそっちが勝っていた。
(それにアイリスが私を好きだってことは、更に言うと誰のルートにも入っていないことよね。うーん……よく分からなくなってきた)
そもそも以前アドリアーヌはアイリスと攻略対象者との恋愛フラグをことごとく折ってしまっている。
もしかして未来が変わっているのではないか……。
そんな思いが頭をよぎる。
(ここはゲームの世界じゃない……現実なのよね……。運命は……変えられる?)
確かに設定などなどは乙女ゲームの世界ではある。
自分もその中の登場人物で悪役令嬢というキャラクターでもある。
だが、この世界は現実で、攻略対象や他の登場人物にも感情もあるしゲームでは語られない毎日の生活もある。
そう思い至るとアドリアーヌは大きなため息をついた。
(運命を変えられるという流れもあるのかも)
グランディアスでは前世の記憶もなく、また運命に抗うこともしなかったから断罪という結末を迎えた。
だが今の自分は違う。
そう思うと断罪ルートを回避というよりは運命に立ち向かっていく方が自分らしいのではと思い始めた。
そんなことを考え込んでいたアドリアーヌはクローディスとアイリスの声によって現実に引き戻された。
「聞いていらっしゃいますか?お姉さま」
「あ?ごめん、なんだっけ?」
「俺とこの娘、どちらを選ぶんだ?」
「えっと……」
一瞬断罪ルートを考えて現実の問題を放置していたが、まずはこの状況に向き合わないといけない。
ただ現時点で選ぶというのは土台無理な話だ。
どう答えようかと口を開いた時だった。
突然ドアが開いたと思うと、サイナスが駆け込んできた。
いつも冷静な彼には珍しく息を切らしている。
「サイナス様、どうなさったのですか?」
驚いて声をかけるアドリアーヌだったが、サイナスはそれには目をくれずにその視線をアイリス向けた。
「あぁ、アイリス嬢。こんなところにいらっしゃったのですか」
「はい……どうかされたのでしょうか?」
「リオネルを助けてください……」
状況がつかめないままアドリアーヌ達はサイナスに引っ張られるようにバタバタ連れて行かれるまま、ある一室についた。
(ここ……医務院だわ)
リオネルに何かあったのだとすぐに分かった。
何が起こるのか……アドリアーヌには不安しかなかった。
嫌な予感が脳内を巡っていく。
「リオネル、入るよ」
リオネルの返事も待たずサイナスはドアを開けて中へと入っていく。
まるでこの部屋の主が返事ができないことを分かっているかのように。
そっと通されるようにアドリアーヌは室内に入り、息をのんだ。
そこにはうなされる様に眉間にしわを寄せて寝ているリオネルがいた。
体中に包帯を巻かれる形で、何より異様だったのはその包帯から血が滲んでいるのだ。
頬にもやけどの跡がある。
何とかガーゼのようなもので押さえられているが、広範囲に広がっているためにガーゼから火傷のただれているのが見えている。
「な……これは……」
「リオネルがこの間王命を受けて遠方に派遣されたことは知っていますよね」
「え?ええ」
「グランディアス王国との国境警備の視察ですが、そこで敵襲に合いました。敵から何とか砦を死守したのですが……その戦いの中でリオネルがこの状態に」
「敵というのは……グランディアス王国……ですか?」
グランディアス王国とは一応現時点では停戦条約を結んでおり、これから友好国としての一歩を歩き出そうという段階である。
それなのに国境沿いの砦に敵襲があった……ということはグランディアス王国が攻めてきたと思わずにはいられない。
「まだ決まったわけではありませんし、グランディアス王国とは微妙な関係ですからね。あまり断定したことは言いたくないですが……」
その時リオネルがうっすらと目を開け、か細い声で何かを言った。
「殿下……申し訳ありません……このようなお見苦しい姿を……」
「いい。戻ってきてくれただけで十分だ。大丈夫か?気をしっかり持て!!」
「もう少し……殿下のお傍で力を尽くしたく……思いましたが……無念です」
今にも途切れそうになるリオネルの意識を保つためアドリアーヌも知らずに駆け寄っていた。
「リオネル様!しっかりしてください!」
「アドリアーヌ……か……、貴方にはずっと謝りたかった……出会った時のこと……すまなかった」
リオネルと出会った時、アドリアーヌに敵意全開だった。
アドリアーヌとしてはその後リオネルとも良好な関係であったし、何かと気にかけてくれる存在だ。
今更謝られることなどない。
「そんなことはいいんですよ!それよりもいっぱい助けてもらいました!」
資料を片付けたり荷物を持ってくれたり、セギュール子爵の残党から襲われた後には護衛として共に帰りずっと側で守ってくれたことも多かった。
無表情な彼がアドリアーヌのお菓子を食べる時に少し微笑むのが好きなのもあって訓練場に差し入れに言っていたと過言でもない。
そのリオネルの命が消えようとしている。
「もしかして俺は……貴方が好きだった……のかも……知らない……だから最後に会えてよかっ……た……」
「リオネル様!」
アドリアーヌが声をかけても、リオネスからの反応はない。
かすかに息をしていることだけは確認できた。
「医者の診立てでは、もう長くはないということです」
「そんな……」
呆然としたアドリアーヌはそれしか言えなかった。
崩れ落ちそうになるアドリアーヌを支えたクローディスだったが、そのままアイリスを見た。
「都合がいい願いだとは分かっているがなんとかならないか?」
「僕もそれで貴方を連れてきました、アイリス嬢。お願いできませんか?」
初めて人の死に立ち会うであろうアイリスは青ざめた顔で震えてる。
それなのに話を振られ体がビクッとしていた。
「わ……私……ですか?」
「はい、聖女の貴方の力でなんとかならないでしょうか?」
「……お姉さまも……それを望みますか?」
サイナスの言葉を受けたアイリスはアドリアーヌに意見を求めてきた。
「もちろん……可能から助けて欲しいわ」
「分かりました……まだ……あの……力が使えるか分からないですけど……やってみます!」
そうしてアイリスはごくり小さく息をのむと、目を閉じてリオネルの手を握った。
淡いピンクを帯びた金の光がアイリスの体からリオネルの体に流れていく。
あまりにも幻想的で美しい光景を見て、光はアイリスの髪の色だなぁとアドリアーヌはぼんやりと見つめた。
やがて光が収まると、リオネルの顔のやけどはすっかり無くなっていた。
「……痛みがない……これは?」
驚きつつベッドから体を起こすリオネルをアドリアーヌは慌てて支えた。
「アイリスが聖女の力を使ってくれたんです」
「そうか……礼を言う。本当に……ありがとう。命の恩人だ」
「無事に力が使えて良かったです。まだ不安がありましたから」
アイリスもほっとしたように息をついた。
「まだ砦には負傷者も多い。殿下、医師の派遣と薬の手配をお願いできないでしょうか?」
どうやら戦いのあとリオネルは王都にそれを告げるために必死で馬を走らせてきたらしい。
一番負傷者していただろうに近衛兵としてクローディスに一番に報告しなければと言う思いからのようだった。
「あぁ、そのことは王太子としてこちらで対応する。お前は休め」
「ですが、私は近衛兵です。殿下のそばにおります」
「さっきまでボロボロだったんだぞ!いいから休め。これは命令だ!」
「……承知しました」
こうしてリオネルの怪我が全快した話は国王の耳にももちろん入った。
そして国境への支援として軍が派遣されたのだが、聖女アイリスも従軍することになってしまった。
これはアドリアーヌにとってもリオネルたちにとっても予想外のことだった。
リオネルの怪我を見て震えていた少女を救護といえ派遣するのはとアドリアーヌは思ってそれを止め
たかったが、王命には逆らえない。
危険な国境に妹にも似た友人を送り出すのは辛かったが、アドリアーヌの予想に反してアイリスは気丈に振る舞った。
「大丈夫ですよ、お姉さま……。怖いですけど……お姉さまもこの件でお忙しいでしょうし、私も頑張ります」
出立の日、泣きそうになりながらもアイリスは微笑んで城を発って行った。
あの自分に自信がなさそうにしていたアイリスの成長は喜ばしいものではあったが、こんな時に気丈に振る舞うアイリスには複雑な感情を持ってしまう。
そうしてアイリスが現地入りした七日後の夜の事だった。
その知らせは突然もたらされた。
アイリスが昏睡状態に陥ったと。
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