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2章 モンスターテイムと奴隷たち
27 お屋敷メイドとお風呂
しおりを挟む「こちらの家の新しい主人は貴方様でしょうか?」
「はい。そうですけど」
「お願いします! このお屋敷で働かせて下さい!」
昨日はヘタレてしまい寝不足だが、少しずつ家を住めるようにしていかなければならない。
なのでとりあえず家の掃除をしようと男奴隷たちと一緒に屋敷の前に行ったら、メイド姿の人々が50人くらい待っていた。
見るだけで壮観である。
人族が約20人。獣人が約20人。亜人が約10人ほどだろうか。
働かせて欲しいとは、一体何事だろうか。
「状況がよく理解できないんだが」
「ここにいるメイドたちは皆んな奴隷だったんです。全員仕えていた主人を失ってしまい、働く場所も無くなりました」
要約すると、ここにいるメイドたちは奴隷の身分だった。
それぞれ貴族たちに仕えていたが、先日の裁判騒ぎで全員解雇。
奴隷だから住み込みだったため、家も失ってしまい途方に暮れたらしい。
しかも誰一人、一昨日から何も口にしていないという状況のようだ。
奴隷は私財を持たないため、貯金なんてあるわけがない。
賤貨一枚のお金もなく、住む場所も失い、食べ物さえ何もない。
同じような境遇の者が一所に集まり、死を待つのみと絶望していたときに、誰かがこの屋敷を買ったと噂が流れたらしい。
そして一縷の望みにかけ、雇ってもらおうと全員で俺が買った屋敷を訪れたと。
「お願いします! 外で寝ろと言われても働きますので、どうか食べ物だけでもお恵み下さい!」
「私も食べ物さえいただければ働きます!」
「あたし、あまりモノでもいいよ!」
5歳くらいだろうか。こんな幼い子まで……。
「事情は分かった。エクル、マシュ。このお金ですぐに食べられる食糧を買って来てくれ。胃に優しいもの優先で頼む。あと調理が簡単なものも大量に。調理器具もな」
「お任せ下さいシンヤ様。至急行って参ります」
「行ってくるねご主人様!」
エクルとマシュは食糧を調達させる。
お金は勿論ジジイから借りた金。
「グラン、バルティン。このマジックバッグにベッドのシーツや最低限必要な生活雑貨を人数分、いや、取り敢えず100セットずつ買って来てくれ。あっ、出来ればアリアとミュマの店で」
「おぅ! 任せろ!」
「分かりました」
グランとバルティンは生活に必要な物の調達。
内覧のとき確認したが、ベッドはシーツさえあれば使える状態だった。
家具もある程度大きいものは残っていたものがほとんど。
一夜では大きな家具を全て運び出せなかったのだろう。
処分して新しくしてから引っ越そうと思っていたが、こうなったら好都合だ。
使えるものは使っていこう。
「あの、ということは雇っていただけるのでしょうか?」
「私たち全員?」
「ごはんたべられる?」
「あぁ。全員雇うし、しっかりご飯も提供するよ。安心してくれ」
俺の一言で、近くの人と手を取りながら喜ぶ者、嬉しくて泣き出してしまう者、ホッとして力が抜け座り込む者など、反応は様々だった。
家が手に入って喜ぶ俺のような者もいれば、失って仕事までなくなるやつもいるよな。
ここにいるだけじゃなくて、他にも路頭に迷ってしまった者がいるかもしれない。
こんな状況だと聞かされて、見捨てられるわけがない。
他にも同じ状況の人々が来たら、可能な限り受け入れるようにしよう。
「自己紹介がまだだったな。俺がみんなを雇うことになったシンヤだ。とりあえずみんなの部屋を決めよう。以前この家で働いていたメイドはいるか?」
「はい、働いていました。ラナッカと言います。他に四名この屋敷で働いていた子がいます」
最初に働かせて下さいと言ったメイドだな。
三つ編みのお下げが可愛らしい中学生くらいの子だ。
「ではラナッカを臨時のメイド長に任命する。10人ずつくらいでグループを作ってくれ。この家で働いていたメイドはそれぞれグループリーダーになって屋敷の部屋へ案内。二棟使っていいから部屋を決めてくれ」
「ご主人様、奴隷メイドは大部屋で10人ほど集まって就寝します。一棟で十分です」
「今回は裁量をラナッカに任せる。ちゃんとした部屋割りは後日決めよう」
「かしこまりました」
「空腹だと思うけど、もう少しだけ待って欲しい。ごめんな」
「そんな、ご主人様が謝られる必要なんてありません!」
なんか、居た堪れないんだ。どうか謝らせてくれ。
大体10人ずつに分かれて、一つの建物に皆んな入っていった。
しっかり指示通りに動いてくれているようだ。
「たっだいまー! みんな早く食べて食べて!」
「マシュ、シンヤ様に許可を頂くのが先だ。シンヤ様、メイドたちに食糧を提供しても宜しいでしょうか?」
「勿論だ。みんなに配ってくれ」
ほとんどのメイドたちはマシュとエクルから渡された食糧を泣きながら食べていた。
中には残飯以外初めて食べたという声も聞こえてきて、流石に心が痛む。
今までどんな扱いを受けて来たのか想像に難くない。
雇ったとはいえ、これから一緒に住むということはみんな家族みたいなもの。
不憫な思いをさせないようにしよう。
メイドたちがご飯を食べ終えたところに、グランとバルティンも帰ってきて、みんなに生活用品を渡していた。
ご飯を食べて元気になった者は早速掃除に取り掛かかってくれた。
体調が悪そうな者は無理させず、部屋で横になっているように命令した。命令に関しては奴隷は厳守だ。
「グランとバルティン。一応聞くが女の子に必要な物って買ってきたか?」
具合の悪い子には女の子の日の者もいるようだ。
メイドは女の子だけだし、小さい子は多いけど大きい子もいる。
「あ、すまねぇ」
「何のことでしょうか?」
グランは元既婚者だが、流石に買うときは思いつけなかったか。
まあ仕方ないよな。男はあんまり考えないし。
「マシュ、買いに行ってくれるか?」
「あの、ご主人様。また忘れてるみたいだけど、僕、男の子だからね? 一応何を買ってくるかは分かるけどさぁ」
ハッ、そうだった。
顔が美少女だからいつの間にか女の子扱いしてしまった。
ほんの少し唇をムッと突き出した怒顔は、瞬時に録画した。
今日もマシュが可愛い。
可愛ければ細かいことは関係ないよな。
なんかラノベのタイトルみたいになった。
「まあ細かいことは気にしないでくれ。マシュ、頼んだぞ」
「分かったけど、細かくないよ?!」
男なら細かいことは気にするなって言うし、つまりマシュは女の子だな。証明完了した。
冗談はさておき、今回でもっと大所帯になったし、具合が悪くなったときの薬とかも常備した方が良いよなぁ。
全部俺が回復魔法で治していたら大変だ。
病気とかなら話が別だがな。
薬か。買うより自作してみようかな。
無ければ買うは現代っ子の癖になってしまっているよな。
今は異世界にいるんだし、簡単に手に入る物ばかりとは言えない。
作ることもたまには考えないとな。
これを機にポーション作りでも始めよう。
メニューのオートメモのやることリストに、新たな項目が一つ追加された。
「ご主人様、この棟のお掃除が終わりました。本宅の方はどう致しましょう?」
早くもメイドたちが住むことになった建物内の掃除が終わってしまった。
流石は本業のメイドたちである。
俺たちだけでやってたら、一日じゃ終わらなかっただろうな。
「俺たちは本宅に住む予定はまだないから、今日のところはやらなくて良い。あ、お風呂は本宅にしかなかったよな。そこだけ掃除して使ってくれ」
「ご主人様、お風呂を使うとはどういう意味ですか?」
「汗とかかいただろう。入らないのか?」
ちなみに止まっている宿にもお風呂は無かったから、引っ越したら毎日湯船に浸かれる。楽しみだ。
「ど、奴隷ですしメイドですし、体はお水で拭きます! みんなお風呂なんて一度も入ったことないですよご主人様!」
まくし立てるように言葉を紡いだメイド長のラナッカ。
「じゃあ今日は俺が先に入るからとりあえず用意して欲しいかな。その後で体調が悪い者以外はみんなちゃんとお風呂に入るように」
主人より先に入れないとかいうやり取りが無いように、あらかじめ断ち切っておいた。
そして命令したのでこれで入らないといけない。
「か、かしこまりました。そういうことですね、ご主人様」
うん、そういうことだ。
みんなにお風呂の素晴らしさを日本人として宣伝しないとな。
体を洗い、入れてもらった一番風呂に入った。
お風呂は銭湯くらいの広さだ。
湯船に肩まで浸かって足も伸ばせる。
なんなら泳げる。しないけど。
「し、失礼しますご主人様」
「「「失礼します!」」」
は? 一体何が起きている?
ゆっくりお風呂に入っていたら、メイドたちが続々と入ってきた。
「ちょ、待て! ラナッカ、なんで俺が入ってるのにみんなが入って来てるんだ?! 男女別って知らないのか?!」
「ご主人様の後から入れというのは、そういうことではないのですか?」
「そういうことじゃなぁぁぁい!」
「あ、ご主人様、行っちゃった」
馬車を助けたとき以上の全速力で浴場を出た。
だが色んな子の裸体が目に焼き付いてしまった。
眼福ではあったが、臆病者なので録画はできなかった。
こういう勘違いを無くせるように、ちゃんと伝えないとダメだな。
「お手つきしていただけると思ったのに」
「お手つきをしていただけたら、お妾さんになれるんだったよね?」
「みんなお妾さんになれなかったね」
「お手つきって何するんだろうね」
「ねー」
シンヤの去った浴場内でそんな会話が繰り広げられているとは露知らず、シンヤはくしゃみをしながら急いで服を着るのだった。
◇後書き
誤字確認して保存しようとしたらタップミスで投稿しました。書き終わってはいたのでそのままにしておきます。
メイドって良いですよね。
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