ルームメイトが釣り系男子だった件について

perari

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西山と板垣が連れ立って出ていった直後、
俺のスマホが鳴った。
編集さんからだった。
「最近の原稿は!?原稿はどこにあるのよ!!」
……一日だけ更新を止めただけで、DMに「包丁送りたい」って人が数百人増えた。
怖すぎ。
「今、インスピレーションを溜めてる最中で……」
「インスピレーションで更新が止まるわけないでしょ!何があっても連載は止めちゃダメ!!」
ごもっともすぎてぐうの音も出ない。
スマホを机に投げて、自分のストックを確認してみたけど、……うん、全然ない。やばい。
「わかったわかった、ここ数日でちょっとずつ書くから……」
私は素材ノートを取り出して、ペンをくわえながら書き込む。
【肌アレルギー、スキンシップ】
……他に使えそうなのは……
「電話、してたの?」
――その時、テントの入口から声がして、思わず素材ノートをバタンッと閉じた。
仁野くんだった。
私が電話を切ったのを確認してから、ゆっくりと中へ入ってきた。
私はあわててノートを寝袋の下に隠す。
「さっき、電話楽しそうだったから、邪魔しないように待ってたんだ」
……楽しそう?あれが?
どう見ても説教電話だったけど……?
私は目を逸らしながら答えた。
「え、ああ……どこにいるかちょっと報告しただけだし、すぐ終わったよ」
でも、なーんかこの空気おかしくない?
……え、なんか俺、仁野くんに隠れて“浮気電話”でもしてたみたいな空気じゃない?
気のせい?いや、気のせいじゃない!
この空気、なんか変!!
仁野くんは気にしてないふうに話題を変えた。
「みんな、そろそろバーベキュー始めるって。呼びにきた」
――バーベキュー。
その言葉だけで、俺の中のすべての疑問が霧のように消え去った。
「行く行く!!」
だって……お腹すいたし!
俺が外に出たときには、すでにみんなバーベキューを始めていた。
香ばしいスパイスの香りが風に乗って鼻をくすぐる。
仁野くんが姿を見せると、数人の女子たちが嬉しそうに串を差し出した。
「仁野~、これ焼きたてだよ!食べてみて!」
だけど、仁野くんは一瞬だけ俺の方を見て――それから、きっぱりと断った。
「君たちが食べて。俺はいい」
さすが仁野……やっぱりブレない。
俺はこっそり彼の腕をつついた。
「アレルギーには、脂っこいのよりあっさりしたのがいいって聞いたよ。サンドイッチ持ってきたけど、食べる?」
仁野くんの目が、まるで俺をドラえもんでも見るかのようなキラキラした感じになった。
「……サンドイッチ?」
「俺が作ったやつ。ほんとは朝ごはんに食べてもらおうと思って持ってきたんだ」
「……俺のために?」
「うん。二つ持ってきたから、一つは明日の分にしようと思ってたけど」
「じゃあ……君は?」
「俺?俺はバーベキュー食べるよ」
だって――
俺がこのキャンプに来た目的、そもそも“仁野くん”だし。
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