エルーシアの物語

ねむ太朗

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  次の日。私は朝早くから作戦を決行する事にした。
  衣類を運んでいたメイドに話掛ける。

「おはよう!  私に何か手伝える事はある?」

「お、お嬢様おはようございます。私達の仕事ですのでお嬢様のお手を煩わせる訳には……」

  私の後ろに控えていた、侍女のラサが呟いた。

「お嬢様……」

「ん?  みんなに私が働ける事を、証明しなくてはならないのよ」

  ラサは困った顔をしていた。
  そこにお兄様がやって来た。

「エルーシア?  何かあったの?」

「今、何か仕事が無いか尋ねていたのよ」

「仕事?」

「掃除とか洗濯とかあるじゃない」

  それを聞くとお兄様の顔つきが、少し怖くなった。

「まだ、諦めていなかったのか!  使用人の仕事をとってはいけないよ。エルーシアには、貴族令嬢としてやる事があるだろう?」

「私は、庶民になりたいの!」

「だから、甘ったれのエルーシアには無理だよ」

「それを証明する為に、屋敷の中で働こうと思っているのよ」

「エルーシアが屋敷の掃除をしていたら、他の使用人達が気を使うだろう?  迷惑が掛かるんだよ」

「じゃあ、どうやって証明したらいいのよ」

  兄は少し考えてから答えた。

「少し落ち着いてくれないか。庶民になるのは、今すぐでなくていいじゃないか」

「私は今すぐ庶民になりたいの」

「エルーシア……外の世界には悪い人間がたくさんいるんだよ。庶民になったら、外に出掛ける時に護衛はいないんだよ」

「分かっているわよ。普通の女性は、外を一人で歩いているわよ」

「エルーシアは、庶民になってもプラメル家の人間であることに変わりない。誘拐をされたらどうするんだ。それに怖い思いをした女性は、世の中たくさんいるよ」

「では、剣を扱えるようになればいいのね?」

「そう簡単に言うけどね、剣を扱うって毎日練習をして大変なんだよ。エルーシアは、だから甘ったれって言われるんだ」

「もういい!  お兄様には相談しないわ」

  怒った私は、そのままお姉様の部屋に向かった。
  ノックをしてから、入室をする。

「あら?  おはよう、エルーシア」

「おはようございます、お姉様。相談があるの。今大丈夫かしら?」

「もちろん、いいわよ」

  私はお兄様との会話を話した。お姉様は、クスクス笑っていた。

「お兄様って過保護で心配性な所が変わらないわね。それから、少し怒りん坊ね」

「そうなの。それから、全然私の話を聞いてくれないのよ」

「そうねー。んー。けれどね、庶民になるのは、本当に大変な事だと思うわ。エルーシアは伯爵令嬢として育ったでしょう?  だから、生活がガラリと変わってしまうのよ。今はラサが困ったら助けてくれるけれど、エルーシアが伯爵令嬢を辞めたら、もうラサは側には控えてくれないのよ。エルーシアは、何でも一人で出来るの?」

「そ、それは……」

  私はこの時に自信を持って、返事をする事が出来なかった。

「ほら、お母様も言っていたじゃない。冷静になって考えてみて。ってね」

「分かったわ。もう少し考えてみるわ。ありがとう、お姉様」

  お姉様は優しく微笑んでいた。

  自室に戻った私は、しばらくさっき話をした内容を頭の中で整理をした。

  このまま言葉で説得をしても、難しそうだ。きっと、家を出てしまえばなるようになるだろう。
  よし!  決めた!  家を出よう。
  頑張って働いて、証明をしよう。
  プラメル領では、すぐに見つかってしまうわね。

  西に行くのはいいが、プラメル領が西よりだからな……私が居なくなったら、西から探しそうだ。

  南にはハーヴェス領とグリデーラ領があるので、お兄様に見つかる確率が高いだろう。

  北は隣のリーベル領通って行かないといけない。それに、王都がある。その二つを迂回しないと北の領地には、行けないな。王都を通ると知り合いの誰かにに会いそうだ。

  東!  東に行こう!
  東が一番誰にも見つからないわね。

  私はラサにしばらく一人になりたいと声を掛け、こっそりと家出の準備を進めていった。
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