つばき

斐川 帙

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三、同棲

(四)

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 時計を見ると、十一時半を過ぎている。悟は、二十分ほど早めに昼食を取りに外へ出た。店が混む前に取っておきたかったからだ。
 鮫洲の商店街の方まで足を伸ばし、中華料理屋で回鍋肉定食を頼んだ。若い中国人女性のアルバイトが注文を無愛想に取っていた。食べ終わると、すぐにレジで会計を済まし、店を出た。店を出る頃には、店内の席はほとんど埋まっていた。
 店を出ると、すぐにオフィスに戻ろうと思ったが、途中で鮫洲八幡の参道入り口の前を通り過ぎたとき、自然に足が止まった。そして、参道の奥をじっと見るとはなしに見ていた。
 そう言えば、つばきは、もう帰ったのだろうか。
 いなくなると思うと少し寂しい気もしたが、ずっといられても、やりにくいわけで、そう思うと、悟の顔には、自然と苦笑いが出た。
 変な子だったな。
 話すことやらすることが世間離れして非常識なところがあったので、妄想癖のあるちょっと精神に異常のある子だったのかもしれない。相手をして何かのトラブルに巻き込まれるのもいやだし、昨日一日だけのつきあいで済ましておいてよかったのだと考える事にした。
 悟は、結局、神社の境内に足を踏み入れた。そして、池の方にも寄ってみたが、今日は、いつも通り、フェンスの門塀は閉まっていた。悟は、橋の前まで進み、厳島神社と水神社の小さな社殿をしばらく見つめていた。厳島神社の傍らにある椿の木には、昨日、一輪だけ残っていた花が、まだ変わらず咲いていた。やがて、気持ちを切り替え、オフィスに戻ることにした。途中、境内入り口に案内板が立っている事に気づいた。読むと、神社の縁起、摂社の祭神などが書かれている。それによれば、水神社と扁額に書かれている方は、綿津見の神が祭られているということだった。
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