つばき

斐川 帙

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三、同棲

(六)

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 戸部も、悟と同様、急遽集められた四人のうちの一人だったが、職場が気に入ったのか、仕事内容が気に入ったのか、引き続き、この職場で働きたいようだった。それは、時々、話している中で、彼が漏らす言葉の端々からわかることだった。派遣会社の担当営業にも、その意向は伝えているらしく、悟が担当営業との月一の面談の時に、戸部の意向を引き合いに出して、悟にはそういう意向がないか確かめてきた事もあった。担当営業としては、新たに契約先を見つけるよりも、今の契約を延長してもらった方が楽なのだろう。
 悟は、憂鬱になった。この雰囲気だと、参加せざるを得ないのだろうか。今回の会社とのつきあいは今回が初めてで、悟には今後も契約延長の意志はないし、会社に知り合いなど皆無だった。そんな連中と居酒屋で一時間も飲み食いするのは相当な苦痛である事は容易に想像が付いた。
 結局、午後は、午前中に終わったモジュールの動作確認で終わり、気が付くと定時の時間が過ぎていた。周囲の社員達は、みなそわそわして、そろそろ、飲み会にでかけるために仕事を切り上げようかという趣であった。悟は、その雰囲気を感じ取ると、誘いの言葉をかけられるのを恐れて、夕食でも取りにしばらく外出しようと目論んだ。しかし、その目論見は、席を立つよりも一瞬早くかけられた戸部の言葉によって、失敗に終わった。戸部は、「そろそろ行きましょうよ。」と、参加する事が当然のように声をかけてきたのだ。周りに関係者がたくさんいることもあり、露骨に理由もなく「行かない。」とは言えない状況であった。悟は、激しく落胆した。しかし、顔には出さなかった。
 飲み会は品川駅近くの洋風居酒屋で行われた。悟たち、臨時雇いの派遣社員は四人全員来ていた。そして、四人で一つのテーブルにかたまって座った。悟は、すこし気が楽にはなった。
 今回の飲み会の主人公は、このプロジェクト開始当初から参画しているメンバーで、中核メンバーだったらしかった。ミーティングがあれば、必ず名指しで呼ばれていたし、顧客企業の担当者とも懇意のようだった。そのせいで、今日の飲み会には、プロジェクトに関係している社員のほとんど全員が出席していた。もう始まってから何年も経っているプロジェクトだから、思い出話も尽きることがないのか、他の古参のメンバー達とは談笑が絶える事がなかった。
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