つばき

斐川 帙

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五、いつきの島

(四)

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 つばきは茂みの前で右手に折れて、しばらく進むと、その先に、砂浜を裂いて海に注ぐ川の流れが見えた。つばきは、その河口まで歩くと、その川沿いに上流へと進んでいった。川幅は二、三メートルの小河川だったが、流量は結構あって、滔々と海に水晶のように輝く水を注いでいた。
 川は、小さいが険しい谷を形成していて、尾根と尾根の間に水の転がる音を響かせていた。ごろごろと大小の岩石が露出する渓流を、岩づたいに上流へと登っていき、やがて、高さ二メートルほどの滝が出現した。滝を迂回して、より上へと行き着ける足場を探し出し、滝の上に出ると、そこには翡翠の色をたたえて静かに佇む池がぽっかりと現れた。悟は、その美しさに息をのんだ。一方、つばきは、辺りをきょろきょろと見回していた。つばきは、悟の手を取ると、強引に、池の反対側に連れて行った。そこには、小さな石の祠が笹叢に埋もれていた。祠の裏には、細い獣道が笹叢の中に辛うじて視認できた。その獣道は茂みの奥に消えていた。つばきは、その道を悟の手を引っ張って奥へ奥へと進んでいった。やがて、目の前には、険しい斜面が立ちはだかり、そこに道が右下から左上へと斜めに伸びていた。それは斜面の上の削平地に導いていた。
 つばきはその上り道をとった。斜面の上に行き着くと、そこには板張りの粗末な小屋が立っていた。屋根も板葺で所々に小石が乗せてあった。
 つばきは、片手では、なかなか動かない引き戸を両手で体重を乗せて押し開けると、小屋の中に入った。小屋の中には、がらんとした空間が広がっていた。長い間に自然に磨かれて黒光りしている床と、何もかかっていない板の壁に囲まれているだけで、室内には何も置いていなかった。
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