つばき

斐川 帙

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五、いつきの島

(五)

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 つばきは、その空間の中央に悟を導くと、腰を下ろした。悟も腰をおろした。悟が腰を落ち着けるやいなや、つばきは、悟の背中に両腕を回し、悟を押し倒して覆い被さった。つばきは、悟の上から、静かに見下ろしていた。何も言おうとはしなかった。悟も、黙っていた。そのまま、つばきは、悟の上に倒れ込んだ。その意味を汲み取った悟は、つばきの背中に両腕を回して抱きしめた。つばきは、悟の首筋に唇をつけた。そして、悟に全身を預けた。悟は、それを何かの合図のように感じて、つばきの体を味わい尽くそうと挑んだ。しかし、つばきは、帯を解こうとする悟の胸を押し離して拒否すると、逆に悟の服を脱がし始めた。下になっている悟の着物を脱がすのは難儀なようだったが、悟は半身を起こして、つばきの動作に協調した。上半身があらわになった悟に対して、これまでになく、積極的に、つばきは、唇や指先で悟を刺激し始めた。つばきが与える、幼くぎこちない刺激に、返って、悟の体は、敏感に反応し、欲情が全身をつきぬけ、やがて、抑えきれなくなった悟は、上になっているつばきをおろして、自分が上になった。悟は、下になっているつばきをまじまじと見つめた。つばきは、恥ずかしくなって、悟にしがみついた。悟は、つばきを脱がしにかかり、帯が解かれ、襟がはだけ、もはや布地が体に乗っかっているだけの状態になったつばきを眺めた。そして、改めて、挑みかかった。つばきは、しがみつくばかりで、悟の欲情の赴くままに、華奢で柔らかな体を委ねた。白い肌にはうっすらと汗をかいていた。
 悟はつばきの固く閉ざされた両足を割り、ゆっくりと中に押し入っていった。つばきは、我慢できずにかすかに声が出た。悟の背中に回した手には更に力が入って悟を抱きしめていた。つばきは、壊れるくらいに悟にしがみついた。悟はゆっくりと長い間、何回か姿勢を変え、つばきの上で、自分とつばきがつながっていることを確かめるように動いていた。
 悟が終わったとき、つばきは、悟の腕の中で、小刻みに震えていた。悟は、つばきの上で、しばらくの間、そのままの状態でいた。つばきの黒髪を撫で、汗で濡れた肩口にキスをした。つばきは、悟の胸の中に埋もれていた。つばきが、何かを口にしたように聞こえた。「ありがとう。」と言ったように聞こえたが、声が小さすぎて聞き間違いだったかもしれなかった。
 つばきと悟は立ち上がると着衣を整え、手に手を取って、小屋から出た。もと来た獣道を戻り、池の前に出た。そして、滝の傍らをつばきを抱えるように下りながら、やがて、浜辺に出た。浜辺には、ボートが残っていた。
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