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四、一人の昼食
(二)
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彼女の名前は、早川照代と言った。古風な名前に、彼女自身は気に入っていないようであったが、みんなからは「てるちゃん」と呼ばれて、温和で明るい性格のせいか、友人は多くいたようだった。三重県の伊勢市の生まれだったはずだ。祖父は地元の市議会議員をしていて、父は、小さな会社を経営しているそうだが、何の会社を経営しているのかは、結局、聞かず仕舞いだった。彼女は、その家の三人姉妹の次女だと言っていた。長女は、既に養子をとって結婚しており、末娘は京都の女子大に通っていると言っていた。
彼女とは、大学時代に、同じサークルにごく短い期間だが、在籍したのが縁でつきあい始めた。平安文化の研究みたいなことをするサークルだったと記憶しているが、実態は、源氏物語の漫画の同人サークルみたいなものだった。フランス語を専攻していた宮本は、日本の歴史にも関心があって、それでたまたまのぞいた、そのサークルで、サークルの性格からか男が不足していた会員の熱心な勧誘に遭い、しばらく顔を出していたのだ。そのサークルに同じく迷い込んでしまっていたのが照代であった。彼女は、国文を専攻して平安期の和歌を研究していたのだが、その興味の延長で、間違ってこのサークルに入ってしまったらしい。源氏物語には、そこそこ興味のあった照代には、誇張や現代風の脚色のある漫画の世界は、好きになれないみたいで、一ヶ月もしないうちに足が遠のいてしまっていた。しかし、そこで出会った宮本とは、その後も逢瀬を重ねていた。最初にアプローチをかけたのは宮本の方だが、三回目くらいからは、ほとんど照代の方から誘ってくるようになっていた。照代には、宮本のしつこくない性格が性にあったみたいだった。
大学を卒業して、宮本が現在の会社に就職し、照代が大手の商社に入社しても、つきあいは変わらず続いた。
社会人になってからも三年ほどは、交際が続いただろうか。ある日、照代の部屋に行ってみると、既に引っ越した後だった。そして、宮本のもとには、後日、手紙が届いた。文面は至って短く「別れましょう。私の事はもう忘れて。」としか書いていなかった。別れる理由については一切書かれていなかった。宮本は、その手紙を受け取ると、行方をくらました恋人に未練を感じるものの、どうしようもできないことにいらだちを覚え、しかし、その感情を押し殺して、無理矢理忘れる事にした。もう、五年ほど前の事になるだろうか。
彼女とは、大学時代に、同じサークルにごく短い期間だが、在籍したのが縁でつきあい始めた。平安文化の研究みたいなことをするサークルだったと記憶しているが、実態は、源氏物語の漫画の同人サークルみたいなものだった。フランス語を専攻していた宮本は、日本の歴史にも関心があって、それでたまたまのぞいた、そのサークルで、サークルの性格からか男が不足していた会員の熱心な勧誘に遭い、しばらく顔を出していたのだ。そのサークルに同じく迷い込んでしまっていたのが照代であった。彼女は、国文を専攻して平安期の和歌を研究していたのだが、その興味の延長で、間違ってこのサークルに入ってしまったらしい。源氏物語には、そこそこ興味のあった照代には、誇張や現代風の脚色のある漫画の世界は、好きになれないみたいで、一ヶ月もしないうちに足が遠のいてしまっていた。しかし、そこで出会った宮本とは、その後も逢瀬を重ねていた。最初にアプローチをかけたのは宮本の方だが、三回目くらいからは、ほとんど照代の方から誘ってくるようになっていた。照代には、宮本のしつこくない性格が性にあったみたいだった。
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