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四、一人の昼食
(三)
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それ以来、恋愛はしていなかった。もともと面倒くさがりやの宮本だったが、恋人に理由もなく逃げられる体験をして恋愛をひどく面倒なものと認識するようになってしまっていた。照代のことは、本人が別れたかったのだから仕方がない、自分が一方的にこだわっていても始まらないと悟って、今では、すっかり、記憶の片隅の埃を被った一角に追いやられていた。宮本にとって、恋愛は、もうどうでもいいことになっていた。
「そうか、崇徳院だ。確か、反乱をおこして四国に流罪になって讃岐の院と呼ばれていたとか言ってたな。」
宮本は、やっと、歌の作者の名前を思い出した。そして、上の句も思い出した。
瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に 逢はむとぞ思ふ
「照代は、この歌を解説しながら、私たちが万一別れたとしても、この歌みたいに、結局、いつかはまた再会することになるのかしらとか言ってたな。そう言いながら、勝手に自分から別れたわけだが。」
宮本は、自嘲するように苦笑いした。その宮本の前にバジルが絡んで鮮やかな緑色に染まったジェノベーゼが置かれた。宮本は、フォークとスプーンをとると、食べ始めたが、自嘲の苦笑は長く宮本の表情から去らなかった。
「まあ、どうでもいいことだ。今となっては。」
パスタを食べ終わり、付け合わせのサラダをつつきながら、独り言を続けた。
「しかし、今日、再会するとは思わなかったよ。ほんと、びっくりしたな。」
そして、下の句を何度も口ずさんでは苦笑いして、オフィスに戻った。早く代替の基盤を探して客先に持って行かねばならなかった。客先には、もうどうでもよくなった照代が待っているのだ。
「そうか、崇徳院だ。確か、反乱をおこして四国に流罪になって讃岐の院と呼ばれていたとか言ってたな。」
宮本は、やっと、歌の作者の名前を思い出した。そして、上の句も思い出した。
瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に 逢はむとぞ思ふ
「照代は、この歌を解説しながら、私たちが万一別れたとしても、この歌みたいに、結局、いつかはまた再会することになるのかしらとか言ってたな。そう言いながら、勝手に自分から別れたわけだが。」
宮本は、自嘲するように苦笑いした。その宮本の前にバジルが絡んで鮮やかな緑色に染まったジェノベーゼが置かれた。宮本は、フォークとスプーンをとると、食べ始めたが、自嘲の苦笑は長く宮本の表情から去らなかった。
「まあ、どうでもいいことだ。今となっては。」
パスタを食べ終わり、付け合わせのサラダをつつきながら、独り言を続けた。
「しかし、今日、再会するとは思わなかったよ。ほんと、びっくりしたな。」
そして、下の句を何度も口ずさんでは苦笑いして、オフィスに戻った。早く代替の基盤を探して客先に持って行かねばならなかった。客先には、もうどうでもよくなった照代が待っているのだ。
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