三首の和歌

斐川 帙

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七、福岡

(一)

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 土曜日の朝、休日にもかかわらず、宮本は、朝七時に目が覚めた。いつもなら起きては寝て、起きては寝て、気がついたら昼近くまで布団に潜っている事が多いのだが今日は用事ができていたのだった。寝床から出ると、そそくさと着替え、前夜に用意した一泊するのに最低限必要な荷物をリュックに詰め込んだ。一通り準備が終わると、一息ついて、テレビをつけた。そうして、三十分ばかりぼうっと朝のニュースを見たあと、スイッチを消して、リュックを肩にかけ、玄関を出て駅に向かった。これから羽田空港に向かって十一時の福岡行きの飛行機に乗るのだ。
 
 昨日の夜のことだった。退社して自宅でテレビを見ていると、テレビの横に置いてある電話の電子音が鳴った。めったに自宅に電話がかかってくる事がなかったので、恐る恐る出ると照代だった。携帯電話に何回かかけたが出てこないので、こちらにかけたと言って、明日、九州に行かないかと突然、誘ってきた。特に用事もない宮本は咄嗟に断る理由が思いつかず曖昧に返答した。行き先は福岡だそうだ。飛行機のチケットは、旅行代理店の知人から安く分けてもらったのがあるから、大体、五、六万円あれば大丈夫かなと気軽に見積もりを出していたが、それでも急な出費で五万超は安くはなかったので、渋っていると、前回同様、照代は宮本に有無を言わせず、行く事を約束させてしまった。何でも飛行機のチケットは二人分、もう購入しているそうである。
 浜松町から羽田に向かうモノレールに揺られながら、何で福岡なんだろうと首をかしげた。
 照代とは、羽田空港の出発ロビーで会う約束になっていた。
 出発ロビーで照代と会った宮本は、すぐに、出発ゲートに向かった。照代は、ダークブラウンのツイードのパンツに白いフードの付いたふわふわしたジャンパーを着て、首にはふんわりと暖かそうなグレーのマフラーを巻いていた。肩からバッグを提げ、片手にはキャスターのついたケースをころころと引いていた。
 出発ゲートに着くと、搭乗開始までまだ少し余裕があったので、ゲート前の椅子に座って待つ事にした。照代は、ケースを椅子の横に立てかけ、バッグを膝の上に置いた。バッグの口が開いていたので、中に入っている物がよく見えた。宮本は、横目でバッグの中を見ながら聞いた。
 「福岡に行って、何するの?」
 照代は笑っていた。
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