三首の和歌

斐川 帙

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七、福岡

(二)

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 「ええやん、行ってから考えれば。」
 気が昂ぶってるのか珍しく方言が出ていた。声も心なしかうわずっていた。
 バッグの口からは、化粧品の入ったポーチが覗いていた。
 「ホテルは予約してるの?」
 「しとるに。まあ、ビジネスホテルやけど、ええやろ?」
 「安くつくからいいけどさ。でもさ、急に福岡に行こうなんて、もう少し前に言ってくれればねえ。」
 「もう少し前に言うてたら、何かいいことあったん?」
 照代はすこし機嫌を損ねたみたいだった。
 「断る理由を考えるひまがあったってことなんだけどさ。」
 「ほな、行きたくないわけ?」
 「だって、予定外の出費だもんなあ、特に福岡に行きたいわけでもないしさ。」
 「うざったいな。ええやろ、もうここまで来とんやから、ごちゃごちゃ言わんと行きないな。」
 「でも、どうして福岡なのかなあ。どっか観光名所とかあったっけ?」
 照代は黙っていた。別の事を考えているような素振りだった。
 宮本は、上の空の照代を見て、もう話しかけるのをやめにした。
 
 搭乗を開始する旨のアナウンスが聞こえた。目の前の搭乗ゲートに立っている女性係員が列を作って搭乗を待っていた人々の搭乗券を受け取り、ゲートに通して次々と飛行機に乗客を受け入れていった。宮本らも機内に向かった。座席は翼のすぐ後ろの窓際だった。翼が邪魔で、地上はあまり見えない位置だ。安いチケットだったので、この位置になったのだろう。照代が窓際で宮本が通路側の席になっていた。
 続々と機内に入ってくる乗客が、つま先立ちで手荷物を座席の上の収納スペースに押し込んだり、座席についてシートベルトを締めたり、客室乗務員があちらこちらと乗客の相手をして、慌ただしく人が動いている時間が、しばらく続いて、落ち着いたあと、飛行機はゆっくりと滑走路に向かって動き始めた。かなりの時間をかけて、滑走路の手前にたどり着くと、静かに停止した。目の前を旅客機が着地したり、離陸したりを繰り返していた。数機がそうして目前を過ぎていったあと、宮本らの乗った飛行機が滑走路に入った。そして、一呼吸の停止をしたあと、動き始め、ごろごろと車輪が転がる音が機内に響いた。そして、どんどん加速を続け、車輪が滑走路上を転がる振動が最大値に達しようかという瞬間、ふっと浮き上がったかと思うと、高角度で飛行機は上空に向けて離陸していった。
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