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七、福岡
(四)
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やがて、目的のホテルに着いたようで、照代は、「ここ。」と宮本に声をかけると、ガラス張りの入り口に向かっていった。自動ドアが二人を迎え入れると、まっすぐ受付に向かった。宮本は、先にさっさと入っていく照代の後を、とぼとぼとついて行く形でロビーに入るとフロントでキーを受け取る照代の後ろにぼおっと突っ立っていた。キーを受け取ると照代はエレベータホールに向かい、十階のボタンを押した。宮本は荷物を持ったまま、エレベータの奥に立った。後から、若い家族連れが入ってきて九階のボタンを押した。五、六歳の男の子と女の子の二人、そして二十代後半とおぼしき若い夫婦だった。二人の子供ははしゃいでいたが、別に気にとめる風でもなく、若い夫婦は、今日の予定を話していた。宮本は、子供が邪魔で気になって、注意を払わない親にいらいらしたが、何も言わずに黙っていた。
エレベータが九階に着いてドアが開くと、うるさく騒いでいた子供は親に促されて外へ駆けだしていった。宮本はほっとした。ドアが完全に閉まるのを待って、照代に話しかけた。
「今の子供、うるさかったな。」
しかし、照代は話しかけられているのに気づかず、うつむいていた。宮本は、それ以上、話しかける事はしなかった。
部屋に入ると、そこにはベッドが二つあった。そのとき、宮本ははっとしたのだが、部屋は一つしかとっていないようだった。ここに来るまで、まったく部屋の事など考えていなかった自分に驚いた。当たり前のように、照代は一つの部屋に宮本と入っていったのだ。昔、つきあっていたとはいえ、もう別れて何年も経つのに、同じ部屋に宿泊することに抵抗はないのだろうかと訝しんだ。そうは思ったものの、宮本は、疲れていたので、荷物を部屋の隅に置くと、ベッドの片方にとびこんで、寝転がった。そして、目をつぶった。照代は、もう一方のベッドの端に腰掛け、やはり、うつむき加減で黙っていた。さっきから、ずっと、こんな調子の照代に、何か、おかしな雰囲気を感じ取ったが、その理由を聞く勇気は湧いてこなかった。
「今日はこれからどうするんだい?まだ、三時すぎだから、どっか行こうと思えば行ける時間だと思うけど。」
しかし、照代は、返事をする素振りが見えなかった。宮本は、諦めて、ベッドから離れると、ポットのスイッチをいれ、お湯を作り始めた。コーヒーを飲もうと思ったのだ。すると、突然、照代が覆い被さってきた。顔を宮本の胸に埋め、泣いているような感じがした。宮本はびっくりして、照代を引きはがした。顔を見ると、泣いていると思ったが、目は乾いていた。
エレベータが九階に着いてドアが開くと、うるさく騒いでいた子供は親に促されて外へ駆けだしていった。宮本はほっとした。ドアが完全に閉まるのを待って、照代に話しかけた。
「今の子供、うるさかったな。」
しかし、照代は話しかけられているのに気づかず、うつむいていた。宮本は、それ以上、話しかける事はしなかった。
部屋に入ると、そこにはベッドが二つあった。そのとき、宮本ははっとしたのだが、部屋は一つしかとっていないようだった。ここに来るまで、まったく部屋の事など考えていなかった自分に驚いた。当たり前のように、照代は一つの部屋に宮本と入っていったのだ。昔、つきあっていたとはいえ、もう別れて何年も経つのに、同じ部屋に宿泊することに抵抗はないのだろうかと訝しんだ。そうは思ったものの、宮本は、疲れていたので、荷物を部屋の隅に置くと、ベッドの片方にとびこんで、寝転がった。そして、目をつぶった。照代は、もう一方のベッドの端に腰掛け、やはり、うつむき加減で黙っていた。さっきから、ずっと、こんな調子の照代に、何か、おかしな雰囲気を感じ取ったが、その理由を聞く勇気は湧いてこなかった。
「今日はこれからどうするんだい?まだ、三時すぎだから、どっか行こうと思えば行ける時間だと思うけど。」
しかし、照代は、返事をする素振りが見えなかった。宮本は、諦めて、ベッドから離れると、ポットのスイッチをいれ、お湯を作り始めた。コーヒーを飲もうと思ったのだ。すると、突然、照代が覆い被さってきた。顔を宮本の胸に埋め、泣いているような感じがした。宮本はびっくりして、照代を引きはがした。顔を見ると、泣いていると思ったが、目は乾いていた。
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