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八、太宰府天満宮
(三)
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「それでね、彼の実家に東京からはるばる来たわけ。はるばるっていっても飛行機で二時間もかからないんだけどね。」
「でも、ご破算になった。」
照代は苦笑いした。
「ストレートに言うわね。」
「どうして?」
「それは内緒。言わない。」
宮本はふうんと言ったきり、また、黙った。開け放たれた扉から冷気が入って車内は寒かった。
「しかし、寒いね。」宮本は、独り言のように呟いた。すこし、間があって照代は口を開いた。
「ほんとは、そういうのを五年前に、君に言ってもらいたかったわけだけどさ。」
照代は微笑を浮かべながら、「君に」の部分をことさら強調して言った。宮本の目を見ていた。
『そう言うの』が何を指すのか、初めは、わからなくてぽかんとしていた宮本だが、それがプロポーズの事であるのに気づくと複雑な気分になって、目をそらした。内心、嬉しく感じている自分がいることにも気づいていたが、宮本は、そういう自分の心情にはあえて目をつぶって、口にしなかった。
「その時もまだ、ちょっと、ほんのちょっとだけど、未練があったのかもね。」
列車が動き出した。
「未練というよりも、過去の思い出に惹かれる自分かしら。ほんとのところは、あなたのことなんか、とっくに終わっていたのかも知れないけど、でも、どっかで完結していない思い出があって、その区切りをつけたかったのかも知れない。区切りをつけて過去と現在の中間にちゅうぶらりんになっている思い出を完全に過去の完結された思い出に仕上げて、吹っ切れたいというか、それができないまま、婚約だったからなのかな。中途半端な感じだったのよね。」
最初は、ふんふんと頷いていた宮本だが、だんだん、面倒くさくなって、照代の独白のような心情吐露を、聞く振りだけして、聞き流すようになっていた。宮本には照代の独白に割って入る言葉の用意がなかったのだ。
「でも、これで終わりに出来るかしらね。」
宮本は腕を組んで目を閉じていた。
「聞いてる?」
宮本は慌てて目を開けた、
「いや、聞いてなかった。」
照代は笑った。
「でも、ご破算になった。」
照代は苦笑いした。
「ストレートに言うわね。」
「どうして?」
「それは内緒。言わない。」
宮本はふうんと言ったきり、また、黙った。開け放たれた扉から冷気が入って車内は寒かった。
「しかし、寒いね。」宮本は、独り言のように呟いた。すこし、間があって照代は口を開いた。
「ほんとは、そういうのを五年前に、君に言ってもらいたかったわけだけどさ。」
照代は微笑を浮かべながら、「君に」の部分をことさら強調して言った。宮本の目を見ていた。
『そう言うの』が何を指すのか、初めは、わからなくてぽかんとしていた宮本だが、それがプロポーズの事であるのに気づくと複雑な気分になって、目をそらした。内心、嬉しく感じている自分がいることにも気づいていたが、宮本は、そういう自分の心情にはあえて目をつぶって、口にしなかった。
「その時もまだ、ちょっと、ほんのちょっとだけど、未練があったのかもね。」
列車が動き出した。
「未練というよりも、過去の思い出に惹かれる自分かしら。ほんとのところは、あなたのことなんか、とっくに終わっていたのかも知れないけど、でも、どっかで完結していない思い出があって、その区切りをつけたかったのかも知れない。区切りをつけて過去と現在の中間にちゅうぶらりんになっている思い出を完全に過去の完結された思い出に仕上げて、吹っ切れたいというか、それができないまま、婚約だったからなのかな。中途半端な感じだったのよね。」
最初は、ふんふんと頷いていた宮本だが、だんだん、面倒くさくなって、照代の独白のような心情吐露を、聞く振りだけして、聞き流すようになっていた。宮本には照代の独白に割って入る言葉の用意がなかったのだ。
「でも、これで終わりに出来るかしらね。」
宮本は腕を組んで目を閉じていた。
「聞いてる?」
宮本は慌てて目を開けた、
「いや、聞いてなかった。」
照代は笑った。
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