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八、太宰府天満宮
(五)
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「いいわよ、無理しなくても。」
宮本は、お守りを購入するのを諦めて、楼門から外に出た。照代もゆっくりとその後をついて行った。そのとき、どこかで鶯が鳴いたように感じた。
「今、鶯の鳴き声がしなかった?」
照代は表情一つ変えず「そうかしら。」と応えた。拍子抜けした宮本は、諦めて周囲を見回した。どこに鶯がいるのだろうかと探した。照代は、立ち止まって鶯を探している宮本に、声をかけた。
「鶯が珍しいの?」
「いや、そういうわけじゃないんだけど。ちょっと気になって。」
「行きましょう。」
「うん・・・」
まだ、宮本は鶯に未練がありそうだった。
しばらくして宮本は鶯らしき小鳥を梅の小枝に見つけた。
「あの枝にいるの、鶯じゃない?」
照代は一瞥すると、また、たいしたことでもないように「そうね。」と答えるだけだった。
「雪の積もった梅の枝に鶯。なんか絵になりそうだね。」
照代は初めて表情を動かした。
「変な事、言うのね。」
「どうして?」
しかし、それには答えずに、照代は聞き返した。
「今日は、立春よね?」
「そうだったっけ?」
「そうよ。春立つ日の白雪のかかる枝に鶯ってところね。」
宮本はきょとんとしていた。
「春たてば 花とや見らむ 白雪の かかれる枝に うぐひすぞ鳴く。」
「また、和歌か。よく知ってるよな。感心するよ。」
照代は前にも増して笑いながら、こう呟いた。
「聞いた事ない、この歌?」
あまりに小さい声だったので、その質問が自分に向けられていることに確信がもてず、宮本は答えなかった。
照代は、宮本が答えない事に一切構わず、先に進んだ。雪は止んでいた。
宮本は、お守りを購入するのを諦めて、楼門から外に出た。照代もゆっくりとその後をついて行った。そのとき、どこかで鶯が鳴いたように感じた。
「今、鶯の鳴き声がしなかった?」
照代は表情一つ変えず「そうかしら。」と応えた。拍子抜けした宮本は、諦めて周囲を見回した。どこに鶯がいるのだろうかと探した。照代は、立ち止まって鶯を探している宮本に、声をかけた。
「鶯が珍しいの?」
「いや、そういうわけじゃないんだけど。ちょっと気になって。」
「行きましょう。」
「うん・・・」
まだ、宮本は鶯に未練がありそうだった。
しばらくして宮本は鶯らしき小鳥を梅の小枝に見つけた。
「あの枝にいるの、鶯じゃない?」
照代は一瞥すると、また、たいしたことでもないように「そうね。」と答えるだけだった。
「雪の積もった梅の枝に鶯。なんか絵になりそうだね。」
照代は初めて表情を動かした。
「変な事、言うのね。」
「どうして?」
しかし、それには答えずに、照代は聞き返した。
「今日は、立春よね?」
「そうだったっけ?」
「そうよ。春立つ日の白雪のかかる枝に鶯ってところね。」
宮本はきょとんとしていた。
「春たてば 花とや見らむ 白雪の かかれる枝に うぐひすぞ鳴く。」
「また、和歌か。よく知ってるよな。感心するよ。」
照代は前にも増して笑いながら、こう呟いた。
「聞いた事ない、この歌?」
あまりに小さい声だったので、その質問が自分に向けられていることに確信がもてず、宮本は答えなかった。
照代は、宮本が答えない事に一切構わず、先に進んだ。雪は止んでいた。
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