三首の和歌

斐川 帙

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八、太宰府天満宮

(六)

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 参道に出ると、駅に向かって歩いた。
 「飛行機の出発時間まで、まだ余裕があるわね。」
 「何時だったっけ?」
 「十五時半発。」
 「今、十一時か。天神に戻って、昼食取って、それから、すこし、どこかに行ってみようか。でも、そんなに遠くには行けないな。」
 「そうね。中途半端な残り時間ね。」
 宮本は、ふとここが太宰府という地名であることを思い出した。
 「太宰府って、昔の役所だろ?遺跡は残っていないのかな?」
 「平安時代に九州を統括していた役所よね。確か、大分歩くけど、跡地があったような記憶がある。ただの野原だったような気がするけど。行ってみる?」
 「遠いの?」
 照代は考え込む素振りを見せて、
 「結構、歩いた気がする。」と言った。それを聞いて宮本は躊躇した。
 「どうする?」
 照代は宮本の決断を催促した。
 「しょうがない。歩いてみるか。」
 宮本は、ぶらぶらと駅まで参道を歩くと、そのまま、駅前を通り過ぎ、交差点を渡って、更に進んだ。参道はなおも続いていたが、やがて観光バスのたまり場に行き着くと、道は、左に折れた。二十分くらい歩いていると、再び大きな交差点にぶつかり、それを右に曲がって、道づたいにまっすぐに進んだ。太宰府跡は、この道沿いにあった。途中、観世音寺や戒壇院などがあって、立ち寄っては見たが、一千年以上の歴史のある古刹とは思えないくらい周囲の牧歌的な風景にとけ込んだ地味な寺院であった。宮本は、ここが平安時代には九州の中心地であったとは想像がつかない田舎の雰囲気に、返って、安心感を覚えていた。
 太宰府の跡地は、果たして、照代の言った通り、うっすらと白く雪化粧をした、だだっ広い野原だった。野原の中に所々礎石が点在していて、周囲を細い溝が方形に囲繞していた。宮本と照代は、野原の中を奥に進み、政庁の中心的な建物があったと思われる場所にたどり着いた。宮本は、礎石の上にじかに腰を下ろした。照代はハンカチを置いてその上に腰を下ろした。雪が解けて濡れていた。
 陽が雲間から覗いていたが、まだ、肌寒かった。
 「ここに古代の役所があったんだね。想像がつかないな。」
 「そうね。」
 照代は頭を宮本の肩に乗せた。周囲には、誰もいなかった。ただ、白い野原が広がっているだけだった。
 「ねえ。」
 「何?」
 「うちに帰ったら、私の事、少しは気にかけてね。」
 「どういうこと?」
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