37 / 46
八、太宰府天満宮
(七)
しおりを挟む
照代は宮本の疑問には答えず、別の話題に振った。
「左知代のこと、覚えてる?」
「誰?」
「いつか、会社の帰りに会ったとき、一緒にいた子。覚えてない?」
「いつのこと?」
漠然としすぎて、いつのことを言っているのか、宮本には思い出せなかった。
「銀座で、お買い物してて、あなたが遅くなるからっていうから、さっちゃんと買い物して時間をつぶしてたとき、あったじゃない?有楽町駅の交番前でさっちゃんと私であなたを待って、あなたが来てからも、しばらく一緒に食事とかしたじゃない?覚えてない?」
有楽町の交番前で照代が友人と一緒に自分を待っていたことがあったような感じがした。そのとき、交番の屋根に立っている円い玉が先端についた棒が、実はデザインが間に合わなくて、仮に刺したまち針が、そのまま、上司の許可を通ってしまって作られてしまったという話を、二人にした記憶が蘇った。
「そういえば、そんなことあったような気がする。背の高くて髪の短い女の子だっけ?」
照代は少し考えた。
「そうだったかもしれない。」
「その子がどうしたの?」
「私の事が気になったら、彼女に連絡を取ってみて。」
宮本は怪訝な顔をした。
「わかったけど、連絡先知らないよ。」
「じゃ、教えてあげる。」
そう言って、照代は、鞄の中から手帳を取り出すと、一ページ破って、そこに電話番号を書いた。携帯電話の電話番号のようだった。
電話番号を見ながら、宮本は、照代の意図が理解できなくて、首をひねっていた。彼女の勤めている会社の電話番号や彼女の携帯電話の電話番号は知っているから、彼女に連絡を取りたければ、会社にかけてもいいし、直接、彼女の携帯電話にかけてもいい。それなのに、なぜ、一度しか会った事のない彼女の友人に連絡を取る必要があるのだろうか。宮本は、照代の不思議な言動に納得の出来ないまま、しばらく、礎石の上で白い野原に視線を泳がせていた。
「なんで、左知代って子に連絡をとるんだい?」
照代は黙っていた。
「世の中は 夢か うつつか うつつとも ゆめとも知らず 有りてなければ。」
そう言って、照代は、宮本を見ながら、やさしくほほえんでいた。そして、すぐにまた黙った。
「まあ、こんなものかしら。これでふっきれたかな。」
短い沈黙の後、照代はそう言って、一人で笑った。
その後、数分、二人は礎石の上でじっとしていたが、やがて、立ち上がると、また、さっきの道を西に進んだ。二十分くらい歩いたろうか、西鉄の都府楼駅に着いたので、そのまま、電車に乗り、天神に戻った。駅に着くと地下街で食事を取った。一時を少し回っていた。
食事を終えると、コインロッカーに向かい、荷物を取り出して、駅前でタクシーを拾った。そして、そのまま、空港に向かった。空港には、一時間以上早く着きそうだった。
「左知代のこと、覚えてる?」
「誰?」
「いつか、会社の帰りに会ったとき、一緒にいた子。覚えてない?」
「いつのこと?」
漠然としすぎて、いつのことを言っているのか、宮本には思い出せなかった。
「銀座で、お買い物してて、あなたが遅くなるからっていうから、さっちゃんと買い物して時間をつぶしてたとき、あったじゃない?有楽町駅の交番前でさっちゃんと私であなたを待って、あなたが来てからも、しばらく一緒に食事とかしたじゃない?覚えてない?」
有楽町の交番前で照代が友人と一緒に自分を待っていたことがあったような感じがした。そのとき、交番の屋根に立っている円い玉が先端についた棒が、実はデザインが間に合わなくて、仮に刺したまち針が、そのまま、上司の許可を通ってしまって作られてしまったという話を、二人にした記憶が蘇った。
「そういえば、そんなことあったような気がする。背の高くて髪の短い女の子だっけ?」
照代は少し考えた。
「そうだったかもしれない。」
「その子がどうしたの?」
「私の事が気になったら、彼女に連絡を取ってみて。」
宮本は怪訝な顔をした。
「わかったけど、連絡先知らないよ。」
「じゃ、教えてあげる。」
そう言って、照代は、鞄の中から手帳を取り出すと、一ページ破って、そこに電話番号を書いた。携帯電話の電話番号のようだった。
電話番号を見ながら、宮本は、照代の意図が理解できなくて、首をひねっていた。彼女の勤めている会社の電話番号や彼女の携帯電話の電話番号は知っているから、彼女に連絡を取りたければ、会社にかけてもいいし、直接、彼女の携帯電話にかけてもいい。それなのに、なぜ、一度しか会った事のない彼女の友人に連絡を取る必要があるのだろうか。宮本は、照代の不思議な言動に納得の出来ないまま、しばらく、礎石の上で白い野原に視線を泳がせていた。
「なんで、左知代って子に連絡をとるんだい?」
照代は黙っていた。
「世の中は 夢か うつつか うつつとも ゆめとも知らず 有りてなければ。」
そう言って、照代は、宮本を見ながら、やさしくほほえんでいた。そして、すぐにまた黙った。
「まあ、こんなものかしら。これでふっきれたかな。」
短い沈黙の後、照代はそう言って、一人で笑った。
その後、数分、二人は礎石の上でじっとしていたが、やがて、立ち上がると、また、さっきの道を西に進んだ。二十分くらい歩いたろうか、西鉄の都府楼駅に着いたので、そのまま、電車に乗り、天神に戻った。駅に着くと地下街で食事を取った。一時を少し回っていた。
食事を終えると、コインロッカーに向かい、荷物を取り出して、駅前でタクシーを拾った。そして、そのまま、空港に向かった。空港には、一時間以上早く着きそうだった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる