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十、残り香
(五)
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「彼女、宮本さんと会わなくなってから、会社を辞めて派遣社員になったらしいんですけど、それで派遣先の会社の関係で二年ばかり福岡に行ってて、そこで、ある男性と知り合ってプロポーズを受けたらしいんです。交通事故に巻き込まれたときは、フィアンセの実家に挨拶に行った帰りで東京に戻る途中だったんですって。私も詳しい話は知らないんですが、ご両親の話では、福岡空港まで乗ったタクシーの運転が乱暴だったらしくて、信号無視みたいな感じで交差点につっこんだら、側面に大型トラックが追突して。めちゃくちゃだったらしくて。」
左知代は言葉に詰まって、再びハンカチを取り出して鼻をすすった。もう、それ以上は話すのがつらそうだった。
一方、宮本は、不思議な感じで左知代の話を聞いていた。
宮本は、もう十分、話を聞けたので、その後は、照代の話題は振らず、互いの仕事の話などで時間をつぶした後、頃合いを見計らって店を出た。池袋駅のJR改札口まで左知代を見送ると、宮本は、地下鉄の改札に向かうと見せかけて、再び、駅から外へ出た。ぶらぶらとあてもなく、駅の周辺をさまよった後、公園に入った。空いているベンチに腰を下ろすと、考え込んだ。左知代の話で、照代との再会は、現実でない事はわかったが、しかし、夢にしては、あまりに現実に似すぎていた。死んだ照代が、何かを伝えたかったのだろうか、そんなことまで考えた。でも、死んでいるのだ。宮本は、それ以上、考える事を止めた。しかし、考えるのをやめても、数々の過去の情景が脳裏に浮かんでは消え、浮かんでは消えして、宮本の心を真綿で締め付けた。
宮本は、事実を知ったことで、更に、気持ちが募ってくるのを感じていた。切実なものになっていた。
ベンチを立ち上がると、ふらふらと地に足がついていないような感覚で公園を出た。公園を出ると、JRの池袋駅には向かわず、反対側のサンシャイン60の方に向かって歩いた。有楽町線の東池袋駅が、その辺りにあるはずなのだ。池袋駅の人混みにもまれるのがいやになって宮本は乗降客の少なそうな東池袋駅を選んだのだった。有楽町線なら新木場まで行って、そこで京葉線に乗り換え、武蔵野線直通列車で西船橋で総武線に乗り換えれば市川に行ける。都心から帰社するときによく使うルートだから、不安はなかった。
左知代は言葉に詰まって、再びハンカチを取り出して鼻をすすった。もう、それ以上は話すのがつらそうだった。
一方、宮本は、不思議な感じで左知代の話を聞いていた。
宮本は、もう十分、話を聞けたので、その後は、照代の話題は振らず、互いの仕事の話などで時間をつぶした後、頃合いを見計らって店を出た。池袋駅のJR改札口まで左知代を見送ると、宮本は、地下鉄の改札に向かうと見せかけて、再び、駅から外へ出た。ぶらぶらとあてもなく、駅の周辺をさまよった後、公園に入った。空いているベンチに腰を下ろすと、考え込んだ。左知代の話で、照代との再会は、現実でない事はわかったが、しかし、夢にしては、あまりに現実に似すぎていた。死んだ照代が、何かを伝えたかったのだろうか、そんなことまで考えた。でも、死んでいるのだ。宮本は、それ以上、考える事を止めた。しかし、考えるのをやめても、数々の過去の情景が脳裏に浮かんでは消え、浮かんでは消えして、宮本の心を真綿で締め付けた。
宮本は、事実を知ったことで、更に、気持ちが募ってくるのを感じていた。切実なものになっていた。
ベンチを立ち上がると、ふらふらと地に足がついていないような感覚で公園を出た。公園を出ると、JRの池袋駅には向かわず、反対側のサンシャイン60の方に向かって歩いた。有楽町線の東池袋駅が、その辺りにあるはずなのだ。池袋駅の人混みにもまれるのがいやになって宮本は乗降客の少なそうな東池袋駅を選んだのだった。有楽町線なら新木場まで行って、そこで京葉線に乗り換え、武蔵野線直通列車で西船橋で総武線に乗り換えれば市川に行ける。都心から帰社するときによく使うルートだから、不安はなかった。
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