三首の和歌

斐川 帙

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十、残り香

(四)

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 「すいません。メールでお返事さしあげるつもりだったんですが。」
 「いえ、直接、会ってお話しした方が、こちらの方も都合がよかったので。」
 左知代は、口をつぐんだ。何か、言いにくそうな感じであった。
 「早速なんですが。こないだの電話でも申し上げたことなんですが、早川さんと連絡をとりたくて、連絡先をご存じなのではないかと思いまして。それと、ご存じでしたら、彼女の近況などもお聞きしたいなとも思っているんですが。」
 左知代は宮本の顔を見つめていたが、やっと、意を決したように話し始めた。
 「てるちゃん、いえ、あの、早川さんは、亡くなられているんですよ。」
 えっと驚いたものの、同時に、納得したような気にもなっていた。
 「いつのことですか?」
 「一年は、もう、経っているかしらね。彼女が会社を辞めて派遣社員やりはじめてからも、時々、メールとかやりとりしていたんだけど、去年の今頃かしら、福岡の彼の実家に行ってくるってメールがあって、彼って言うのは、そのころ、彼女がつきあっていたフィアンセの事なんですけど、それ以来、連絡がなくて、それで、変だなとは思っていたんですけど、去年の夏に彼女の家に暑中見舞いのはがきを出したら、彼女のご両親から返事が来て、それで知ったの。何にも知らなかったから、びっくりした。今でも信じられないんです。だって・・・」
 そう言って、彼女は、黙るとうつむいた。我慢しているようだった。
 「ごめんなさい。」
 彼女は、辛うじて、そう言うと、膝の上に載せたバッグからハンカチを取り出して、目をぬぐった。
 「ごめんなさいね。宮本さんの事は、てるちゃんから、時々、聞いてたわ。会わなくなってからも、時々、宮本さんの名前はてるちゃん、口にしてた。会いたかったのかも知れない。」
 左知代は、少し落ち着いたのか、もう一度、両目をハンカチでぬぐうと、運ばれてきたコーヒーに口を付けた。運んできたウェイトレスはちらっと左知代の方を見たが、あえて声をかけずに去って行った。
 「宮本さんは、福岡のこと、ご存じないですよね?」
 宮本はどう返答していいか、困惑した。
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