戦国城廻り

斐川 帙

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一、山中に眠る城跡

(十四)

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 そうして、やっと、木々のない開けた平地に飛び降りたのは、どれくらい転げ落ちてからだっただろうか。体のあちこちに泥汚れがあり、腕には擦り傷で血がにじんでいた。わき腹を触ってみると、どうもない。刺さったように感じたのは、気のせいだったのかもしれない。念のため、シャツをたくし上げて、確かめてみると、軽い切り傷があった。やはり、刺さったのかもしれない。幸い、軽かったのだ。
 そのときになって、女を置いてきたのに気づいた。山頂の方を見上げた。だが、戻れるわけはなかった。後ろ髪を引かれる思いはしたが、どう考えても尋常ではないことが起こったのだ、彼女もまた、尋常ではないのだ、だから、気にしてはいけない、そう自分に言い聞かせて、下山することにした。
 さて、ここはどこだろう?地図を取り出した。周囲を眺める。小さな畑のようだ。右手には広い空き地が見える。眼下には線路やプラットフォームも視界に入ってきた。しかし、どこかはわからなかった。とりあえず、右手の空き地に出てみた。二階建てのプレハブがある。更に先には何軒か平屋の民家が見えた。どれも同じ作りの建物が整然と並んでいるので、多分、借家なのだろう。左手に降りる道があった。線路の下をくぐっている。その道を進むと左に神社、右には寄合所のような建物があり、近所の氏子だろうか、多くの人の話し声が聞こえる。
 道を降りると、車道に出た。左に曲がる。駅が見えたので、そちらに向かった。駅は吾野駅あがのえきだった。やっと現在位置がつかめた。
駅に向かって歩いていると、背後から袖をつかむ人の気配がする。振り向くと、女だった。驚いて、立ち尽くした。
「何ゆえ、ともに探してくださらないんですか?」
 女はきつい口調で詰問してきた。その後ろに、腰に刀を差した男が三人立っている。男たちは、すごい形相ぎょうそうでこちらをにらみつけていた。
 男たちは武装していた。具足姿が二人、残りの一人は甲冑を身に帯びている。ただ、兜はかぶっていない。具足姿の二人は手に槍を持ち、甲冑姿の武者は身の丈ほどはある大きな弓を手にしている。
 こいつら、何者だ?
 具足姿の男の一人が、近づいてきて、槍を突きつけると、「心当たりはないのか?正直に言え。言わないとただではおかないぞ。」と脅してきた。
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