柔らかく穏やかな陽の光の下で

斐川 帙

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二、交わる微熱

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渓流が、岩場にぶつかって無数に壊れていく水流の軽やかな騒音が、狭隘きょうあいな谷間を覆う深い森の木立に響く。
澤の流れを砕く岩の一つに腰掛けると、対岸の木立の奥に朽ちかけた作業小屋が目に入った。
柔らかい存在は笑みを浮かべた。
中に入る。

絹の布の肌触りを楽しんで、局部を刺激される。
ぬるぬるとした感触と、差し込んだ指を小刻みに動かして、抱きつく腕に力が入る。

開け放たれた窓から、白い光が射しこむ。

かすかに温もりを帯びた微風びふうが吹いた。

壊れかかった戸を開け、外に出る。
輝かしい日の光が土砂崩れのように襲ってくる。
光の塊を浴びて、見失う。

白光に塗りつぶされた視界を彷徨さまよい、切り株につまずいた。視線を上げると、
その先は静止した池、
澄み切った鏡面、
鏡に映る太古の森林、
時の流れがなかった。

手を引かれ、二人して水に入る。
鏡面が歪み、波打ち、割れる。
水中の静謐せいひつに埋没して、無音に溶解する。
苦痛が発散して、存在が透明になる。
水になる。

針葉樹の林立する隙間をまっすぐに抜ける道を進んでいる。
陽がさえぎられて薄暗い。
強くつないだ手にかすかに汗が滲む。
尾根道おねみちから外れて、緩斜面かんしゃめんくだり、朽ちかけたやしろに行き着く。

一部腐食して今にも崩れそうな鳥居が立っている。
小さな小屋のような社殿は鳥居がなければ神社とは気づけない。
やしろ格子戸こうしどを開ける。
がらんとして何もない。
中に入る。
ふくらんだ空気が生暖かく湿り気を帯びてもわっと包み込む。
優しい温もりが寄り添ってくる。
欲情が突き出る。
つかんで追い込んで、激しく突き動かす。
壁に立たせて後ろから突き動かす。
触れ合う熱と熱に、溶け合う皮膚の感触に、侵し責め立てられて受け容れるしかない中心は激しい熱に更に潤い、音を立てて乱暴な劣情に我を失う。
更に高まる欲求、砂地に水を撒くように、欲しても欲しても満たされない欲求は、突然、核を喪失して、落ちた。
濃い霧の中に沈んで温暖な大気の中に包まれた。
唇を重ねる。

棚田たなだ畦道あぜみちを歩く。
廃屋はいおくを見つける。
二階建ての瓦葺かわらぶきの農家のようで、一階は雨戸あまどが閉まっていた。
まだ、十分、住居の機能を果たせるであろう状態に、しばらく住むことを決める。

二人だけの空間に欲情が刺激されて、毎日のように交わる。
欲情に動かされて、欲情に振り回されて、満たしようのない渇きにさいなまれて、渇きをいやそうと欲情に頼るが、渇きは更に渇きを生み、幻をつかもうとするかの如く、実体のない欲情に苦しめられる。

土手の草むらに隠れた穴の奥で何かが小さく光った。

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