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エピローグ「悪夢の終わり、永遠の光」
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あれから、五年という月日が流れた。
龍瑛心の治世の下、紫龍帝国はかつてないほどの平和と繁栄を謳歌していた。公正で、時に厳しく、しかし民を深く慈しむ皇帝。そして、その隣で常に民の立場に立って彼を支える、心優しき皇后・玲花。二人は、民から「双龍の天子」と呼ばれ、深く敬愛されていた。
後宮もまた玲花が皇后となってから大きく変わった。嫉妬や陰謀が渦巻く場所ではなく、妃や女官たちが互いに手を取り合い国の発展のために尽くす、明るく華やかな場所へと生まれ変わっていた。
ある晴れた日の午後。
玲花は、庭園に設けられた東屋で刺繍をしていた。その膝の上では、三歳になる小さな皇子がすやすやと寝息を立てている。瑛心によく似た、利発そうな顔立ちの子だ。
「……あら、あなた」
ふと顔を上げると、政務を終えた瑛心が穏やかな笑みを浮かべてこちらへ歩いてくるところだった。
「起こしてしまったか?」
「いいえ。この子、本当によく眠るんです。あなたと違って」
玲花がくすりと笑うと、瑛心は少し照れたように鼻をこすった。
彼は、玲花の隣に腰を下ろし、眠る息子の頭を優しく撫でる。その眼差しは慈愛に満ち溢れていた。かつての氷の皇帝の面影は、どこにもない。
「お前と出会った頃は、毎晩悪夢にうなされていたのが嘘のようだ」
「もう、悪夢はご覧にならないのですか?」
「ああ。一度もな」
瑛心は、空を見上げた。
「お前と、この子がいる。俺の世界は光で満ちているからな。闇が入り込む隙間など、もうどこにもない」
彼は、玲花の肩を抱き寄せた。玲花も、彼の肩にそっと頭をもたせかける。
「玲花」
「はい」
「……愛している」
五年経っても、彼は変わらずにまっすぐな言葉で愛を伝えてくれる。その度に、玲花の心は温かい幸福感で満たされる。
「私もです、あなた。心から、愛しています」
二人は、言葉もなくしばらく寄り添っていた。穏やかな風が吹き抜け、花々の甘い香りを運んでくる。眠る我が子の、か細く、けれど力強い寝息。
全てが、満ち足りていた。
ふと、玲花は思い出したように瑛心に尋ねた。
「そういえば、あなた。私の、あの不思議な力は、どうなったと思われますか?」
皇后になってからは誰かのための針仕事をすることもなくなった。自分の力が今もあるのかどうか、確かめたことはなかった。
すると、瑛心はにやりと笑った。
「知っているぞ」
「え?」
「お前は、今でも毎晩、俺の夢の中に来ている」
瑛心の言葉に、玲花はきょとんとした。そんなはずはない。自分の夢しか見ていないはずだ。
「でも、私が夢で見ているのは、あなたとこの子と三人で笑っている、幸せな夢ばかりですよ?」
「そうだ。そして、俺が見ている夢も、全く同じだ」
瑛心は、玲花の手を取りその甲に優しく口づけをした。
「お前の力は、もう誰かの夢に入り込む力じゃない。俺とお前の夢を、一つに繋ぐ力になったんだ。……だから、俺たちは眠っている間でさえ、離れることはない」
その言葉に、玲花は息をのんだ。そして、たまらない愛しさがこみ上げてきて、彼の胸に顔をうずめた。
そうだったのか。だから毎朝目が覚めると、同じ夢を見たような不思議な幸福感に包まれていたのだ。
悪夢を癒すために始まった不思議な繋がり。それは、いつしか二人の魂を永遠に結びつける、愛の絆へと変わっていた。
孤独な皇帝と、心優しき針子。
悪夢の中から始まった二人の物語は、ハッピーエンドを迎えた。
いや、終わりではない。
これは、永遠に続く光に満ちた愛の物語。
二人が見つめる先には、愛しい我が子とこの国の輝かしい未来が、どこまでも広がっていた。
空には、祝福するかのように一羽の蝶がひらひらと舞っていた。
龍瑛心の治世の下、紫龍帝国はかつてないほどの平和と繁栄を謳歌していた。公正で、時に厳しく、しかし民を深く慈しむ皇帝。そして、その隣で常に民の立場に立って彼を支える、心優しき皇后・玲花。二人は、民から「双龍の天子」と呼ばれ、深く敬愛されていた。
後宮もまた玲花が皇后となってから大きく変わった。嫉妬や陰謀が渦巻く場所ではなく、妃や女官たちが互いに手を取り合い国の発展のために尽くす、明るく華やかな場所へと生まれ変わっていた。
ある晴れた日の午後。
玲花は、庭園に設けられた東屋で刺繍をしていた。その膝の上では、三歳になる小さな皇子がすやすやと寝息を立てている。瑛心によく似た、利発そうな顔立ちの子だ。
「……あら、あなた」
ふと顔を上げると、政務を終えた瑛心が穏やかな笑みを浮かべてこちらへ歩いてくるところだった。
「起こしてしまったか?」
「いいえ。この子、本当によく眠るんです。あなたと違って」
玲花がくすりと笑うと、瑛心は少し照れたように鼻をこすった。
彼は、玲花の隣に腰を下ろし、眠る息子の頭を優しく撫でる。その眼差しは慈愛に満ち溢れていた。かつての氷の皇帝の面影は、どこにもない。
「お前と出会った頃は、毎晩悪夢にうなされていたのが嘘のようだ」
「もう、悪夢はご覧にならないのですか?」
「ああ。一度もな」
瑛心は、空を見上げた。
「お前と、この子がいる。俺の世界は光で満ちているからな。闇が入り込む隙間など、もうどこにもない」
彼は、玲花の肩を抱き寄せた。玲花も、彼の肩にそっと頭をもたせかける。
「玲花」
「はい」
「……愛している」
五年経っても、彼は変わらずにまっすぐな言葉で愛を伝えてくれる。その度に、玲花の心は温かい幸福感で満たされる。
「私もです、あなた。心から、愛しています」
二人は、言葉もなくしばらく寄り添っていた。穏やかな風が吹き抜け、花々の甘い香りを運んでくる。眠る我が子の、か細く、けれど力強い寝息。
全てが、満ち足りていた。
ふと、玲花は思い出したように瑛心に尋ねた。
「そういえば、あなた。私の、あの不思議な力は、どうなったと思われますか?」
皇后になってからは誰かのための針仕事をすることもなくなった。自分の力が今もあるのかどうか、確かめたことはなかった。
すると、瑛心はにやりと笑った。
「知っているぞ」
「え?」
「お前は、今でも毎晩、俺の夢の中に来ている」
瑛心の言葉に、玲花はきょとんとした。そんなはずはない。自分の夢しか見ていないはずだ。
「でも、私が夢で見ているのは、あなたとこの子と三人で笑っている、幸せな夢ばかりですよ?」
「そうだ。そして、俺が見ている夢も、全く同じだ」
瑛心は、玲花の手を取りその甲に優しく口づけをした。
「お前の力は、もう誰かの夢に入り込む力じゃない。俺とお前の夢を、一つに繋ぐ力になったんだ。……だから、俺たちは眠っている間でさえ、離れることはない」
その言葉に、玲花は息をのんだ。そして、たまらない愛しさがこみ上げてきて、彼の胸に顔をうずめた。
そうだったのか。だから毎朝目が覚めると、同じ夢を見たような不思議な幸福感に包まれていたのだ。
悪夢を癒すために始まった不思議な繋がり。それは、いつしか二人の魂を永遠に結びつける、愛の絆へと変わっていた。
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悪夢の中から始まった二人の物語は、ハッピーエンドを迎えた。
いや、終わりではない。
これは、永遠に続く光に満ちた愛の物語。
二人が見つめる先には、愛しい我が子とこの国の輝かしい未来が、どこまでも広がっていた。
空には、祝福するかのように一羽の蝶がひらひらと舞っていた。
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