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【番外編】6.花は葉を愛し、葉は花を愛す。
しおりを挟む桜が豪華に咲き誇り、可憐に散ると葉桜に変わった。
大学を卒業した僕は5月の終わり、父と空港にいた。
保安検査場の近くにいた僕はスマホを見ていた。
「父さん、まだ時間あるよね?」
「ん?あるぞー」
「ちょっと友達に会って来てもいいかな?」
僕はスマホをポケットに入れ、立ち上がる。父はOKサインを指で作る。
父から少し離れたところで暖と葉山がいた。
暖がニコニコと手を振ってくれている。葉山は相変わらず嫉妬でもしているのだろう。あまりいい顔はしていなかった。
この間、僕と葉山の大学卒業を祝うパーティーを三人でしたばかりなのに。
「間に合ってよかったよ」
「暖、葉山、来てくれてありがとう」
葉山から何か渡される。中に入っていたのは、全てが揃った印が背中に描かれた可愛い人形だった。
「印はやっぱり家紋のようなもんだからって父が……その父の手作りだ」
暖も貰ったのか小さな人形を見せてくる。葉山も恥ずかしそうに見せてきた。
「ふふ、ありがとう。僕のと、これは父さんのだね。喜ぶよきっと」
「なんだ、これー」
背後から現れた父が貰った袋から人形を1つ出す。直ぐに誰が作ったのか分かったのか電話をし始めた。
「……おー、朝春ー。これいいじゃん。大事にするわー。また帰ったら飲もうぜー。もちろん、晴も誘うぞー」
父は楽しそうだ。元々、争いに興味はなかった円堂家。父もまた争いには興味がなかった。
それ所か遠い親戚として仲良くしたいらしい。
「ほら、喜んでるだろう」
僕が笑うと葉山が少し口元を緩める。
「……気をつけて行ってこいよ」
「うん、ありがとう。暖、今、楽しい?」
「めっちゃ楽しいよ。今度、オレら同棲することにしたんだよ」
僕は嬉しかった。
お互いのことを自然と避けながら愛し合っていた2人が、本当の恋愛をしている。
「大和ー、時間だー」
「わかった、今行くよ」
暖に近づき僕は、葉山を見る。彼はそっぽを向いた。
「暖、またね」
僕は暖を優しく抱きしめた。背中に回してくれる感触に僕は笑う。
暖から離れて、僕は朝陽に腕を広げる。
「ほら、君も」
暖に押され、僕の腕の間に入ってくる葉山は少し照れくさそうだった。
「見栄を張らずにね」
「わかってる」
背中を少し強めに叩かれる。彼なりの僕に対しての愛情表現かもしれない。口元は少し上がっているように見えた。
「じゃあね」
手を振り、検査場のゲートをくぐる。
振り返ると人形を片手に暖が手を振っていた。
背中に描かれた印を見て、暖達を指差す。頭に浮かんだ言葉を言葉にする。
「花は葉を愛し、葉は花を愛す」
2人を囲むように僕は丸を付けた。
「いいじゃねーか」
父が僕の脇腹を肘で突く。
「まぁね。僕たちは円堂だからね。花と葉を守れて誇らしいよ」
僕を見る父は自慢げに笑い、頭の上に手を置かれた。
「さぁて、行くぞー」
「母さんのバスクチーズケーキ早く食べたいなぁ~」
僕は暖達に背を向けて歩き出す。
どれだけ離れていても繋がっている僕たちの印は、体から消えても心に刻まれている。
end
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