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解放されたのは日が昇る前だった。
「そろそろやめろって……んっ」
さっきからずっとキスをされている。
しつこいくらいに。
「わかったから、んっ……んんっ」
このままだとオレの部屋でユーリが目が覚めてしまう。
「も、自分の部屋に帰れ!じゃないと怒るぞ」
ピタリ、と体が止まる。乱れた服装を整え、ふらり、とユーリは出て行った。
オレは盛大なため息をつく。重だるい体を起こし、服を整えベッドに入る。
何も知らないユーリのために。
目を閉じると頭痛がした。
ーーまただ。
オレの頭に記憶が流れ込んでくる。
オレは長い廊下を走っていた。息を切らし、必死に。腕を捕まれ、どこかの部屋に連れ込まれる。
恐怖で震えるオレを押し倒すユーリの瞳は禍々しい赤だった。
オレの抵抗虚しく体が重なり合う。
暗転し、目を開けばあられもないオレの姿を見て涙を流し絶望するユーリの姿があった。
「ーート様、アルト様」
目を覚ますといつもと変わらないユーリがいた。
「……部屋に戻れたのか」
「何か仰られましたか?」
「いや、何でもないよ。おはよう、ユーリ」
先程見た記憶のユーリはいつのユーリなのだろうか。オレには心当たりがなかった。
そもそもユーリとの体の関係が始まったのは最近だ。
しかし、体はどこか覚えている気がする。最初の頃にも感じたがオレの体はユーリを簡単に受け入れていた。
「アルト様、何か深く考えていますね」
「ああ、ちょっとな……違和感が凄くて」
「それはそれと関係あるのですか?」
オレの体に散った赤い印を指さす。
やっと消えたのにまた付けられてしまったのだ。
「……止めさせた方がいいと思います」
「それが出来たら苦労しないっていうかさー……嫌でもないしな」
「そうですか」
そう、嫌ではない。痛くもないからなのか、むしろ受け止めてあげたいと思うくらいだ。
おかしな話だな、と自分でも思う。
「髪、結っていきますね」
慣れた手つきで髪を梳かし、結っていく。
この時間が1番穏やかでオレは気に入っていた。
「なぁ、今日、久しぶりに街に行かないか?新しい髪紐が欲しいんだ」
「私とですか?」
「当たり前だろ、他に誰がいるんだよ」
待機中となっている残っている隊をアレンに任せ、オレたちは賑やかな街に出ていた。
「あ!アルト様だ!」
「アルト様、いつもありがとねぇ。ほら、これ持っていきな」
「坊ちゃん、これも持ってけ!」
両手には沢山の食べ物などが積み上がっていく。それを全てユーリに渡す。
道すがらオレたちを見ると領民はみんな喜ぶ。魔物から守っているということが大きいのだろう。
被害が最小限になり、街はどんどん活気づいている。
みんなが笑っている。オレはそれだけで嬉しい。どんな魔物からでも守りたいと思う。
暫く歩いていると道端に髪に付ける装飾品出している商人がいた。
「お、ちょっと見せてくれる?」
「これはアルト様、これも良かったらどうぞ」
商人は別のところから髪紐も出して来る。
緋色、深紅色、瑠璃色、紺色。様々な色があった。
ひとつの紐を持ってユーリの髪に当てる。
「……同じ色だな」
死ぬ前に付けていた色だ。
もしかしたらユーリもここで買ったのかもしれない。
「店主、これ買うよ」
「アルト様。ひとつよろしいでしょうか」
「なんだよ、急に」
「どうしてこの色なんですか?貴方に似合う色はもっと沢山ありますよ」
なぜか分からないがこの色を手に取ってユーリの髪に当てていた。
そしてその色が欲しい、とも思っただけだった。過去にもらったからかもしれない。
「……なんとなくだよ」
「はいよ、アルト様。もう付けていくかい?」
「そうだね、もう付けていくよ。ありがとう」
髪紐を店主から受け取り、今朝縛ってもらった髪紐を外しすみれ色の髪紐を付ける。
そのまま宝飾店にも入る。
ユーリの新しいネックレスを買おうとした。
「ここへは何しに?」
「んー、お前のネックレス買いに。それはもう錆びてるだろ?」
「このままでいいです」
ユーリが胸元のネックレスを握る。何かに縋っているかのような顔をしていた。
「いや、でもーーー」
「これでいいんですっ。お願いです。本当に大丈夫だから」
必死な様子で、苦しそうだった。
オレはそれでも、と店の棚に目を配らせる。
目に止まったものがあった。
「……わかった。じゃぁ、これにしよう」
オレはブレスレットを取って、なるべく肌が触れ合わないようにユーリに付ける。
サファイアの宝石が1つはめ込まれたシンプルなものだった。
「これは……」
「これならいいだろ。店主、これくれる?」
店主に金貨を払い、店を出た。
帰り道、ユーリは何も話さなかった。
腕に付けられたブレスレットを見ていた。俯いて顔は見えなかったが喜んでいるのかもしれない。
オレも何も話しかけなかった。
自分でも何してるのか分からなかったから。
オレの瞳と良く似た色を渡した。
なぜだか分からないがそうしたかった。
なんとなくだがユーリのことを意識し始めているのかもしれない。
そう思うくらい今のユーリの気持ちが知りたかった。
「そろそろやめろって……んっ」
さっきからずっとキスをされている。
しつこいくらいに。
「わかったから、んっ……んんっ」
このままだとオレの部屋でユーリが目が覚めてしまう。
「も、自分の部屋に帰れ!じゃないと怒るぞ」
ピタリ、と体が止まる。乱れた服装を整え、ふらり、とユーリは出て行った。
オレは盛大なため息をつく。重だるい体を起こし、服を整えベッドに入る。
何も知らないユーリのために。
目を閉じると頭痛がした。
ーーまただ。
オレの頭に記憶が流れ込んでくる。
オレは長い廊下を走っていた。息を切らし、必死に。腕を捕まれ、どこかの部屋に連れ込まれる。
恐怖で震えるオレを押し倒すユーリの瞳は禍々しい赤だった。
オレの抵抗虚しく体が重なり合う。
暗転し、目を開けばあられもないオレの姿を見て涙を流し絶望するユーリの姿があった。
「ーート様、アルト様」
目を覚ますといつもと変わらないユーリがいた。
「……部屋に戻れたのか」
「何か仰られましたか?」
「いや、何でもないよ。おはよう、ユーリ」
先程見た記憶のユーリはいつのユーリなのだろうか。オレには心当たりがなかった。
そもそもユーリとの体の関係が始まったのは最近だ。
しかし、体はどこか覚えている気がする。最初の頃にも感じたがオレの体はユーリを簡単に受け入れていた。
「アルト様、何か深く考えていますね」
「ああ、ちょっとな……違和感が凄くて」
「それはそれと関係あるのですか?」
オレの体に散った赤い印を指さす。
やっと消えたのにまた付けられてしまったのだ。
「……止めさせた方がいいと思います」
「それが出来たら苦労しないっていうかさー……嫌でもないしな」
「そうですか」
そう、嫌ではない。痛くもないからなのか、むしろ受け止めてあげたいと思うくらいだ。
おかしな話だな、と自分でも思う。
「髪、結っていきますね」
慣れた手つきで髪を梳かし、結っていく。
この時間が1番穏やかでオレは気に入っていた。
「なぁ、今日、久しぶりに街に行かないか?新しい髪紐が欲しいんだ」
「私とですか?」
「当たり前だろ、他に誰がいるんだよ」
待機中となっている残っている隊をアレンに任せ、オレたちは賑やかな街に出ていた。
「あ!アルト様だ!」
「アルト様、いつもありがとねぇ。ほら、これ持っていきな」
「坊ちゃん、これも持ってけ!」
両手には沢山の食べ物などが積み上がっていく。それを全てユーリに渡す。
道すがらオレたちを見ると領民はみんな喜ぶ。魔物から守っているということが大きいのだろう。
被害が最小限になり、街はどんどん活気づいている。
みんなが笑っている。オレはそれだけで嬉しい。どんな魔物からでも守りたいと思う。
暫く歩いていると道端に髪に付ける装飾品出している商人がいた。
「お、ちょっと見せてくれる?」
「これはアルト様、これも良かったらどうぞ」
商人は別のところから髪紐も出して来る。
緋色、深紅色、瑠璃色、紺色。様々な色があった。
ひとつの紐を持ってユーリの髪に当てる。
「……同じ色だな」
死ぬ前に付けていた色だ。
もしかしたらユーリもここで買ったのかもしれない。
「店主、これ買うよ」
「アルト様。ひとつよろしいでしょうか」
「なんだよ、急に」
「どうしてこの色なんですか?貴方に似合う色はもっと沢山ありますよ」
なぜか分からないがこの色を手に取ってユーリの髪に当てていた。
そしてその色が欲しい、とも思っただけだった。過去にもらったからかもしれない。
「……なんとなくだよ」
「はいよ、アルト様。もう付けていくかい?」
「そうだね、もう付けていくよ。ありがとう」
髪紐を店主から受け取り、今朝縛ってもらった髪紐を外しすみれ色の髪紐を付ける。
そのまま宝飾店にも入る。
ユーリの新しいネックレスを買おうとした。
「ここへは何しに?」
「んー、お前のネックレス買いに。それはもう錆びてるだろ?」
「このままでいいです」
ユーリが胸元のネックレスを握る。何かに縋っているかのような顔をしていた。
「いや、でもーーー」
「これでいいんですっ。お願いです。本当に大丈夫だから」
必死な様子で、苦しそうだった。
オレはそれでも、と店の棚に目を配らせる。
目に止まったものがあった。
「……わかった。じゃぁ、これにしよう」
オレはブレスレットを取って、なるべく肌が触れ合わないようにユーリに付ける。
サファイアの宝石が1つはめ込まれたシンプルなものだった。
「これは……」
「これならいいだろ。店主、これくれる?」
店主に金貨を払い、店を出た。
帰り道、ユーリは何も話さなかった。
腕に付けられたブレスレットを見ていた。俯いて顔は見えなかったが喜んでいるのかもしれない。
オレも何も話しかけなかった。
自分でも何してるのか分からなかったから。
オレの瞳と良く似た色を渡した。
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なんとなくだがユーリのことを意識し始めているのかもしれない。
そう思うくらい今のユーリの気持ちが知りたかった。
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