死に戻り騎士は壊れた愛を抱き締める 〜呪いは質が悪くて苦労しました〜

湯川岳

文字の大きさ
11 / 12

10.愛は偉大でした

しおりを挟む


 ユーリを落ち着かせると回復魔法を使いオレの傷をあらかた治してくれた。
 オレは疲れてしまい、今日はこのまま野宿することを決めた。魔物避けの魔法を施す。ユーリは焚き火を用意してくれていた。
ユーリの横に腰を下ろしネックレスを渡す。

「その魔法石、お前のことすごく助けたがっていたよ」

「そう、なんですか」

「何回も戻るなんて、お前も馬鹿だよ」

 何回も人の為に死ぬなんて馬鹿だ。

「私は自分の死より、貴方を失う方が怖かったです」

 真面目にそう答えるユーリに笑ってしまう。
 オレだったらどうだったのだろう、と考えてしまう。きっとユーリのような真似は出来ないかもしれない、と思った。

「……その、呪いはどんな魔物から?」

「ヘルハウンドです」

 珍しい魔物だった。ここら辺では出ないからだ。

 ユーリは過去の出来事をポツリ、ポツリ話してくれた。

「私の村は祖母が魔法石で結界を張っていました。しかし、ヘルハウンドが迷い込んでしまったのですーー」

 ユーリは悲しそうな顔をする。
 そのヘルハウンドと友達になってしまったこと。
 それを見てしまった村人がヘルハウンドを討伐に来てしまったこと。
  ユーリが騎士団を呼んだと思い込んでしまったヘルハウンドが呪いをかけて絶命したことを話してくれた。

「そのヘルハウンド、番がいたようなんです。なのに離れてしまって……魔物なのに情が湧いてしまう。おかしいですよね」

「そんなことないよ」
 
 1匹と1人の子供の悲劇だった。
 そのまだ終わらない悲劇にオレは巻き込まれているのだろう。

「……その呪い、解き方知ってるか?」

「いえ、知りません。貴方を殺してしまう以外……」

 オレは声を出して笑ってしまった。どこか骨が折れているのか、体の至る所が痛くなり悶えた。

「お前、調べろよ。解き方、もう1つあるんだよ」

「……え?」

「顔……、顔、もっと近付けて」

 オレは少し恥ずかしくなった。
 しかし、どこもかしこも痛くて腕ぐらいしか動かない。

「こ、こうですか?」

「もっとだよ」

 目の前にユーリの顔がある。目がしっかりオレを映してオレを見ていた。
 オレは嬉しかった。
 片腕をユーリの首に乗せ、引き寄せる。
 
初めて「ユーリ」にキスをした。

 ぶわっと黒いモヤがオレを覆う。しかし、それは拡散するように空気に消えた。
 夜が終わり太陽が顔を覗かせる。その差し込んだ光はオレたちを温かく照らしているようだった。

「ユーリ、愛してる」 

 腕を離し、ユーリが顔を離す。

「顔、真っ赤だな」

 きっともう触れても大丈夫だろう。
 オレはユーリの頬に手を置く。

「私、やっと……」

 ユーリの顔がくしゃくしゃに歪んで行く。大粒の涙が灰色の瞳から零れていく。

「うん、そうだな」

 オレはユーリの頭を抱く。
 苦しくて暗い長い長いユーリの旅が終わった。
 胸の中で子供のように声を上げて泣くユーリをオレは泣き止むまでずっと頭を撫で続けた。





 騎士団に戻れたのは夕方だった。
 ボロボロのオレ達を見たアレンはオレにポーションやら回復魔法やら掛けまくる。
 その後ろで怒り心頭の様子でこちらを見ていたバルトの姿は見ない振りをした。
 色々落ち着いたのは夜で、ユーリは、オレの部屋にいた。

「ネックレスは?」

「呪いが消えると同時に砕け散りました」

「……そうか」

 ユーリの腕にはオレがあげたブレスレットがいた。

「私にはあれはもういらないものです。今はこれが私の大切なものです」

「ユーリ……諦めないでいてくれてありがとう」

「……私はただ、呪いの解除が分からなくて貴方に会いたくて戻っていました」

 会いたいだけで死ねるお前がすごいよ、とは口には出さなかった。

「最初は10年前、次は9年と戻って行ったのは驚きでした。徐々に貴方と居られる時間が減る度に苦しくてたまらなかった」

「……もう、ずっといられるよ」

「私が横にいてもいいですか?」

「ずっといた奴が何を言ってるんだよ」

 ユーリはオレの頬に手を添える。

「……ずっと、お慕いしておりました」

「知ってるよ」

 ユーリはオレの髪紐を取る。はらり、と長い黒髪が垂れる。
 ユーリが啄むようなキスを落としてくる。ベッドにゆっくり倒される。

「ずっと一緒にいて下さい」

「うん、一緒にいよう」

「魔物から貴方を守ります」

「じゃぁ、オレはお前を守るよ」

「愛してます。アルト様」

「うん、知ってる」

 オレたちは、初めて夜を迎えた。


 


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【短編】【完結】王子様の婚約者は狼

天田れおぽん
BL
 サティ王子はクルクルした天然パーマな茶髪が可愛い18歳。婚約者のレアンは狼獣人で、子供の頃は子犬のように愛くるしかったのに、18歳となった今はマッチョでかっこよくなっちゃった。 「レアンのこと大好きだから守りたい。キミは信じてくれないかもしれないけれど……」  レアン(すでにオレは、貴方しか見ていませんが?)  ちょっと小柄なカワイイ系王子サティと、美しく無口なゴツイ系婚約者レアンの恋物語。 o♡o。+。o♡o。+。o♡o。+。o♡o。+。o♡o。 ノベルバにも掲載中☆ボイスノベルがあります。

あなたが好きでした

オゾン層
BL
 私はあなたが好きでした。  ずっとずっと前から、あなたのことをお慕いしておりました。  これからもずっと、このままだと、その時の私は信じて止まなかったのです。

出戻り王子が幸せになるまで

あきたいぬ大好き(深凪雪花)
BL
初恋の相手と政略結婚した主人公セフィラだが、相手には愛人ながら本命がいたことを知る。追及した結果、離縁されることになり、母国に出戻ることに。けれど、バツイチになったせいか父王に厄介払いされ、後宮から追い出されてしまう。王都の下町で暮らし始めるが、ふと訪れた先の母校で幼馴染であるフレンシスと再会。事情を話すと、突然求婚される。 一途な幼馴染×強がり出戻り王子のお話です。 ※他サイトにも掲載しております。

君さえ笑ってくれれば最高

大根
BL
ダリオ・ジュレの悩みは1つ。「氷の貴公子」の異名を持つ婚約者、ロベルト・トンプソンがただ1度も笑顔を見せてくれないことだ。感情が顔に出やすいダリオとは対照的な彼の態度に不安を覚えたダリオは、どうにかロベルトの笑顔を引き出そうと毎週様々な作戦を仕掛けるが。 (クーデレ?溺愛美形攻め × 顔に出やすい素直平凡受け) 異世界BLです。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

勇者様への片思いを拗らせていた僕は勇者様から溺愛される

八朔バニラ
BL
蓮とリアムは共に孤児院育ちの幼馴染。 蓮とリアムは切磋琢磨しながら成長し、リアムは村の勇者として祭り上げられた。 リアムは勇者として村に入ってくる魔物退治をしていたが、だんだんと疲れが見えてきた。 ある日、蓮は何者かに誘拐されてしまい…… スパダリ勇者×ツンデレ陰陽師(忘却の術熟練者)

【8話完結】どんな姿でも、あなたを愛している。

キノア9g
BL
かつて世界を救った英雄は、なぜその輝きを失ったのか。そして、ただ一人、彼を探し続けた王子の、ひたむきな愛が、その閉ざされた心に光を灯す。 声は届かず、触れることもできない。意識だけが深い闇に囚われ、絶望に沈む英雄の前に現れたのは、かつて彼が命を救った幼い王子だった。成長した王子は、すべてを捨て、十五年もの歳月をかけて英雄を探し続けていたのだ。 「あなたを死なせないことしか、できなかった……非力な私を……許してください……」 ひたすらに寄り添い続ける王子の深い愛情が、英雄の心を少しずつ、しかし確かに温めていく。それは、常識では測れない、静かで確かな繋がりだった。 失われた時間、そして失われた光。これは、英雄が再びこの世界で、愛する人と共に未来を紡ぐ物語。 全8話

雪を溶かすように

春野ひつじ
BL
人間と獣人の争いが終わった。 和平の条件で人間の国へ人質としていった獣人国の第八王子、薫(ゆき)。そして、薫を助けた人間国の第一王子、悠(はる)。二人の距離は次第に近づいていくが、実は薫が人間国に行くことになったのには理由があった……。 溺愛・甘々です。 *物語の進み方がゆっくりです。エブリスタにも掲載しています

処理中です...