リアナ1 王冠の竜騎手と心臓のない英雄

西フロイデ

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3 王都への旅立ち

第12話 ケイエ 領主の館にて 2

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 居室と出口を簡単に確認すると、三人は領主の妻の招きに応じて夕食の席に着いた。
 用意された豪華な夕食を前に、彼らはしばらく無言で食事を口に運んだ。ニンニクを添えて焼いた地走り竜の大きな骨付き肉や、蜂蜜とクローブのソースがかかったフルードラクなど、竜肉だけでも数種類が並んだ。南部領《フロンテラ》では珍しい魚介もある。それから、糖蜜ケーキに焼き林檎にベリー・タルト。これまで里長の娘の結婚式でふるまわれた料理が一番のごちそうだったが、それよりもさらに豪華な料理の数々だった。だが、あのときの心が浮き立つような楽しい気分を思い出すと、いっそう気分が沈んだ。こんなにたくさんの料理が並ぶような、おめでたい出来事なんてひとつもない。あんな恐ろしい出来事があった日にはまったくそぐわないような気がした。
 二人の青年は黙々と食べ終えたが、フィルのほうは料理に手を付けていないリアナのことが気にかかるらしく、食堂を出るまで気づかわしげな視線を送った。

 それぞれ別室を用意すると言った夫人の好意を辞して、もっとも広い客間を三人で使うことになった。一人になるのは不安だったので、リアナは少しだけほっとした。ほとんど見ず知らずといっていい二人の青年だが、今の彼女にはほかに頼る人間もいないのだ。

 部屋に戻りながら、リアナは食事の席に領主の姿がなかったことにようやく気がついた。オンブリアの南の国境にある領地フロンテラ。その領主の姿が館にないというのに、青年たちは気にした様子もなく宿泊するつもりでいるらしい。

 そう尋ねると、フィルが疑問に答えてくれた。
「いまは、国内のほとんどの領主貴族は、タマリスに向かっていると思うよ。……まあ、一部を除いて」
 フィルはちらりとデイミオンを見た。
「なぜ?」
「葬儀のために」
「葬儀のために?……」
 フィルは苦笑した。「隠れ里までニュースが伝わるには、かなり時間がかかるだろうからね……」
 その言い方は少しばかり言い訳めいていたので、もう少し詳しく聞きたかったが、さっさと歩いていくデイミオンについてほうに気を取られてしまった。

 庭に面した廊下からは、警備に立っている兵士たちが見える。屋敷の中には竜族の兵士たちがたくさんいるようだ。その数といい、案内に立った領主が彼らをちらちらと心配そうに見ていることからも、領主の私兵ではないのかもしれない。何人かは、デイミオンと同じ紺色の長衣ルクヴァを着ている。

 部屋に戻ると、レーデルルに餌を食べさせた。厨房に頼んで持ってきてもらったものだ。薄味に煮た魚を山羊乳に浸したものを、指ですくって少しずつ食べさせる。まだ幼竜なので、これは離乳食がわりだった。小さな口でたくさん欲しがって、ぴゅうっ、ぴゅうっ、とかわいい鳴き声をあげたりする。飼い竜の慣れた仕草に少しだけ心が落ち着くのを感じた。
 それで、ようやく話を切り出すことができた。

「あの……もう大丈夫だから……、今日あったことを、ちゃんと説明して」
 二人に向かって、小さいがはっきりした声でそう尋ねた。
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