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第10章 MOMOチャレンジ一年生
第51話:MOMOチャレンジ一年生・1
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次元鉄道の扉を抜けた。曖昧な闇の中へと飛び降りる。
気付けば赤い瓦の上に着地していた。何メートル上から落ちてきたという感じでもない。次元鉄道は世界を跨いで走る架空路線、きっと物理空間を想像するだけ無駄なのだ。実際、あたりにはもうレールも車体も見当たらない。しかしその痕跡だけは目の前に悠然と横たわっていた。
五階ほどの高さの屋根の上。赤い瓦が縁まで綺麗に敷き詰められている。その中央が幅十メートルほどの大きな溝でまっすぐ寸断されていた。そこだけ建物の中身が平坦になるまで綺麗に踏み潰されている。断面にはコンクリートや鉄骨、部屋の内部がドールハウスのように覗いていた。遥か下方の地面にレールの痕だけが残っている。既に走り去ったVAISの次元鉄道が、被害としてのみ存在感を撒き散らしている。
屋根の上から見渡せるのは深い森。エルフの森とは全く違う現代的な森だ。山の中には電波塔がいくつか建てられ、電気や水を引くための電線やパイプもちらほら見える。遥か遠く向こうでは街のような図形が空気の層の奥にうっすらぼやけていた。
「お帰りなさいませ、彼方様」
「ただいま、ジュリエット」
広い溝を挟んでジュリエットと向かい合う。彼女は相変わらず穏やかな表情をして屋根の上に立っていた。
彼方の出現に動じることもなく、むしろリラックスした動作で傍らのロッキングチェアに座る。そして見せつけるようにゆらゆらと揺れながらティーカップを口元に運ぶ。風に煽られて長い銀髪が大きく暴れているが、それすらも計算ずくでデザインされた彫刻のように絵になっている。
強風が吹き付けているのは頭上にヘリコプターが滞空しているからだ。屋根から僅か十数メートル程度の超低空に留まっている割には、吹く風も駆動音もむしろ穏やかすぎる。轟音が会話をかき消していてもおかしくないが、ヘリコプターから感じる風は山に吹き抜ける夏風くらいのものだ。
「ここはアンダーグラウンドの吹き溜まり、裏稼業の根城の一つで御座います。別にどなたの所有物と言うわけでも無いのですが、最近はすっかり湧かせたがりの灰火様が居着いてしまったために、わたくしと灰火様の占有状態といったところです」
「うちのVAISが貴重な別荘を潰して悪かったな。あいつはいつでもどこでもああやって登場する」
「いえいえ。この程度の損害は軽微な方で御座います。それにわたくしはバカンスを邪魔されたとも思っておりません。美しい方と会敵して親交を深める休日となると、むしろ願ったり叶ったりで御座います」
ジュリエットが空に向けて軽く手を上げた。ヘリコプターの窓が開き、メカニカルな等速運動でニュッと現れたのは、細く曲がったパイプの先端である。
そこから茶色い液体が一筋流れ落ちた。強風の中で右に左に大きく揺れながらも、その線は手品のようにジュリエットが持つティーカップへと吸い込まれていく。ここまでアクロバティックな珈琲のおかわりは後にも先にも二度と見ることはないだろう。
「器用だな」
「ありがとうございます。卵運び競争は不服だったようですが、珈琲注ぎ競争でもいたしましょうか?」
「悪くない。さっきは売り言葉に買い言葉でつい反発してしまったが、私がお前とやるべきことはその手のゲームだった。私も提案しよう、ボタン押し競争を」
彼方は自分の首を指先で軽く抑えて絞める。
それだけで虹色に輝くボタンが出現する。彼方とジュリエットのちょうど中間、次元鉄道のレールが屋根に残した溝の真ん中に浮かんでいる。ふわふわと浮遊しているわけではない。吹き付ける風にも、舞う塵にも、重力にすらも全く動じない。物理的なルールを受け付けない世界のバグとして、ただただその位置に描画されていた。
「これが私の終末器。私とお前のきっかり中間の座標に出現し、私が押せばこの世界は終わる。だからこのゲームのルールはこうだ。私が終末器を押したら私の勝ち、その前に私を殺せばお前の勝ち」
ジュリエットが終末器に向けてカップを放った。
衝突の瞬間、カップは一瞬だけかき消える。カップと終末器の座標が重なったとき、終末器がカップよりも優先して描画されるからだ。カップは終末器をすり抜けて遥か下方へと落ちて行く。地面で小さくパリンと音が鳴った。
「破壊する選択肢は無いようですね」
「終末器は私が押す以外の干渉は一切受け付けない。どんな物理法則もどんな能力も。一度出現したが最後、私自身にも破壊も移動もできない」
「承知いたしました。いずれにせよ、わたくしにとってはあなたを殺すという目標には何ら変更御座いません。それがわたくしの殺し屋としての責務です」
「そうだ。この世界にいる全存在にとって、元より私と終末器は不倶戴天の敵だ。終末器とは強制的に存在の全てを賭けさせるもの、私と相手の間で常に賭けるに値するもの、誰しもが排除しなければならないもの、そして私が戦って勝ち取るものだ。だからここに終末器を出すだけで私とお前はこの世界の命運を決めるゲームのプレイヤーにならざるを得ない」
「わたくしがあえて手渡した手紙もお読みになられたようですね。事後的に全てをフィクションだったことにするより存在を凌辱する能力が有り得ましょうか? わたくし個人の存在論的尊厳のためにも、わたくしは彼方様を殺害し、この世界から永久に排除しなければなりません」
「それでいい。一応公平のために教えておくが、厳密に言えばお前の勝利条件は私を殺すことだけではない。私にボタンを押させなければ何でも良いのだから、私を完全に拘束したり、終末器を埋め立てるなどして封印したりするのでもいい。だが、お前は殺し屋として私を殺さなければならないだろう。私がゲーマーとしてこのゲームに勝たなければならないように」
「御理解頂けて幸いで御座います。では、お礼にわたくしからも一つプレゼントを差し上げましょう」
ジュリエットが再び上空に向けて腕を掲げた。続けてぱちんと鳴らす指の音はヘリコプターが起こす風の中でも澄んでよく響く。
今度は小柄な少女がヘリコプターから降ってきた。それは十数メートルの自由落下だが、ジュリエットは当然のように少女を片手で受け止めた。そして紙屑でも投げるかのように彼方に向けて無造作に放る。広い溝を跨いで、二十キロ程の痩せた体躯が彼方の手元へと届いた。
「誰~?」
彼方がその顔を見間違えるはずもなかった。
不審な表情で彼方の腕の中から見上げるその目には、鮮やかな丸い花が咲いている。元現実世界やエルフ世界で付けていた花とは微妙に異なる、やや青みがかって縁が波打っている花だ。これで同じ顔の人間に会うのも三度目。
乱暴な扱いにも動じず、関心の薄い目線で彼方を不審げに見上げるばかりだ。
「この世界における立夏、つまりお前たちにとってはアニメキャラクターとしての立夏のオリジナルか」
「仰る通りで御座います。というのも、桜井様がその立夏様から着想を得てモデルとすることで例のアニメには立夏というキャラクターが登場したからです。もっとも、あなたにとっては経緯が全く逆さまなのでしょうが」
「そうだ。私にとっては立夏のオリジナルは事後的に発見されるものでしかない。私が終末器を押すことでそれを逆創造したからだ。主導権は依然として私にある」
「やはりおぞましい能力で御座います。わたくしのアポステリオリなオリジナルが逆創造される前に、あなたを殺害しなければなりません」
「それでいい。お前は何としても私を殺さなければならないし、私は何としても終末器を押さなければならない。これはそういうゲームだ。お前もしたければジュリエットに味方してもいいんだぜ」
彼方は足元の瓦を見やった。僅かな隙間から小さく白い粒がうぞうぞと湧き出している。
蛆虫の群れが風に乗って巻き上がり、ふわふわと立ち上がって彼方の目の前で人型を成す。蛆人間の灰火が起き抜けの締まりのない表情で頭をかいた。
「私は誰の敵でも味方でもないよ。そーいうポジショニングをするタイプの登場人物じゃーないって言ったよね。こーやって屋上まで湧いてきてみたのは、まあ、暇潰しだね。そのままエピソード8見てたんだけど、流石にそれよりはこっちの方が面白そーだから。私のことは気にせずに背景的なものと思ってもらって」
「言われなくてもそうするさ。ただしその前に一つだけ言っておきたいことがある」
「なにかな」
「この世界で初めて出会ったのがお前で良かった」
「うわ、なんか好感度がバグる地雷踏んだかな。でもこれどっちかいうとバッドエンドっぽいなー」
「お前への好感度は今も地の底を這っている。好き嫌いではなく、私にとって都合が良かったということだ。何故なら初めて出会ったのがお前以外なら、私は出会い頭のアッパーカットできっとそいつを殺していたからだ。そしてそのままルール無用の殺人鬼になっていただろう。だが、たまたまお前が死なない蛆虫だったから、私は自分のやるべきゲームに気付けた。元々私には殺して解決しようとするところもあったが、これからはフェアなゲームになるように宣戦布告の手順を踏もう」
「あ、それ譲歩したつもりだったんだ。私は今の方が遥かにタチが悪いと思うけどね。最初からアンフェアならまだしも、ぜんぜんフェアじゃないものをフェアだと思い込んでいるあたりがさ。ま、それも私にとってはどーでもい」
灰火の言葉はそこで切れた。口元をナイフが貫通したからだ。
彼方は僅かに身を捻り、顔面に飛んでくる刃先を避けた。灰火の身体越しの奇襲だが、身構えていればこのくらいは何でもない。ジュリエットにゲームスタートの掛け声が無いことはもうわかっている。問題は次の一手、飛び道具しか届かないこの間合いでジュリエットはいったい何を仕掛けるか。
次に見えたのは天に向かって駆け上がるナイフだった。短いナイフの直線レーザー、そのスピードは投擲を超えて狙撃ですらあった。
ナイフがヘリコプターの下部に突き刺さる。ガソリンがぴゅっと吹き出して漏れた瞬間、機体の下方が爆発した。バランスを崩したヘリコプターが煙を撒き散らしながら彼方目がけて墜落する。
気付けば赤い瓦の上に着地していた。何メートル上から落ちてきたという感じでもない。次元鉄道は世界を跨いで走る架空路線、きっと物理空間を想像するだけ無駄なのだ。実際、あたりにはもうレールも車体も見当たらない。しかしその痕跡だけは目の前に悠然と横たわっていた。
五階ほどの高さの屋根の上。赤い瓦が縁まで綺麗に敷き詰められている。その中央が幅十メートルほどの大きな溝でまっすぐ寸断されていた。そこだけ建物の中身が平坦になるまで綺麗に踏み潰されている。断面にはコンクリートや鉄骨、部屋の内部がドールハウスのように覗いていた。遥か下方の地面にレールの痕だけが残っている。既に走り去ったVAISの次元鉄道が、被害としてのみ存在感を撒き散らしている。
屋根の上から見渡せるのは深い森。エルフの森とは全く違う現代的な森だ。山の中には電波塔がいくつか建てられ、電気や水を引くための電線やパイプもちらほら見える。遥か遠く向こうでは街のような図形が空気の層の奥にうっすらぼやけていた。
「お帰りなさいませ、彼方様」
「ただいま、ジュリエット」
広い溝を挟んでジュリエットと向かい合う。彼女は相変わらず穏やかな表情をして屋根の上に立っていた。
彼方の出現に動じることもなく、むしろリラックスした動作で傍らのロッキングチェアに座る。そして見せつけるようにゆらゆらと揺れながらティーカップを口元に運ぶ。風に煽られて長い銀髪が大きく暴れているが、それすらも計算ずくでデザインされた彫刻のように絵になっている。
強風が吹き付けているのは頭上にヘリコプターが滞空しているからだ。屋根から僅か十数メートル程度の超低空に留まっている割には、吹く風も駆動音もむしろ穏やかすぎる。轟音が会話をかき消していてもおかしくないが、ヘリコプターから感じる風は山に吹き抜ける夏風くらいのものだ。
「ここはアンダーグラウンドの吹き溜まり、裏稼業の根城の一つで御座います。別にどなたの所有物と言うわけでも無いのですが、最近はすっかり湧かせたがりの灰火様が居着いてしまったために、わたくしと灰火様の占有状態といったところです」
「うちのVAISが貴重な別荘を潰して悪かったな。あいつはいつでもどこでもああやって登場する」
「いえいえ。この程度の損害は軽微な方で御座います。それにわたくしはバカンスを邪魔されたとも思っておりません。美しい方と会敵して親交を深める休日となると、むしろ願ったり叶ったりで御座います」
ジュリエットが空に向けて軽く手を上げた。ヘリコプターの窓が開き、メカニカルな等速運動でニュッと現れたのは、細く曲がったパイプの先端である。
そこから茶色い液体が一筋流れ落ちた。強風の中で右に左に大きく揺れながらも、その線は手品のようにジュリエットが持つティーカップへと吸い込まれていく。ここまでアクロバティックな珈琲のおかわりは後にも先にも二度と見ることはないだろう。
「器用だな」
「ありがとうございます。卵運び競争は不服だったようですが、珈琲注ぎ競争でもいたしましょうか?」
「悪くない。さっきは売り言葉に買い言葉でつい反発してしまったが、私がお前とやるべきことはその手のゲームだった。私も提案しよう、ボタン押し競争を」
彼方は自分の首を指先で軽く抑えて絞める。
それだけで虹色に輝くボタンが出現する。彼方とジュリエットのちょうど中間、次元鉄道のレールが屋根に残した溝の真ん中に浮かんでいる。ふわふわと浮遊しているわけではない。吹き付ける風にも、舞う塵にも、重力にすらも全く動じない。物理的なルールを受け付けない世界のバグとして、ただただその位置に描画されていた。
「これが私の終末器。私とお前のきっかり中間の座標に出現し、私が押せばこの世界は終わる。だからこのゲームのルールはこうだ。私が終末器を押したら私の勝ち、その前に私を殺せばお前の勝ち」
ジュリエットが終末器に向けてカップを放った。
衝突の瞬間、カップは一瞬だけかき消える。カップと終末器の座標が重なったとき、終末器がカップよりも優先して描画されるからだ。カップは終末器をすり抜けて遥か下方へと落ちて行く。地面で小さくパリンと音が鳴った。
「破壊する選択肢は無いようですね」
「終末器は私が押す以外の干渉は一切受け付けない。どんな物理法則もどんな能力も。一度出現したが最後、私自身にも破壊も移動もできない」
「承知いたしました。いずれにせよ、わたくしにとってはあなたを殺すという目標には何ら変更御座いません。それがわたくしの殺し屋としての責務です」
「そうだ。この世界にいる全存在にとって、元より私と終末器は不倶戴天の敵だ。終末器とは強制的に存在の全てを賭けさせるもの、私と相手の間で常に賭けるに値するもの、誰しもが排除しなければならないもの、そして私が戦って勝ち取るものだ。だからここに終末器を出すだけで私とお前はこの世界の命運を決めるゲームのプレイヤーにならざるを得ない」
「わたくしがあえて手渡した手紙もお読みになられたようですね。事後的に全てをフィクションだったことにするより存在を凌辱する能力が有り得ましょうか? わたくし個人の存在論的尊厳のためにも、わたくしは彼方様を殺害し、この世界から永久に排除しなければなりません」
「それでいい。一応公平のために教えておくが、厳密に言えばお前の勝利条件は私を殺すことだけではない。私にボタンを押させなければ何でも良いのだから、私を完全に拘束したり、終末器を埋め立てるなどして封印したりするのでもいい。だが、お前は殺し屋として私を殺さなければならないだろう。私がゲーマーとしてこのゲームに勝たなければならないように」
「御理解頂けて幸いで御座います。では、お礼にわたくしからも一つプレゼントを差し上げましょう」
ジュリエットが再び上空に向けて腕を掲げた。続けてぱちんと鳴らす指の音はヘリコプターが起こす風の中でも澄んでよく響く。
今度は小柄な少女がヘリコプターから降ってきた。それは十数メートルの自由落下だが、ジュリエットは当然のように少女を片手で受け止めた。そして紙屑でも投げるかのように彼方に向けて無造作に放る。広い溝を跨いで、二十キロ程の痩せた体躯が彼方の手元へと届いた。
「誰~?」
彼方がその顔を見間違えるはずもなかった。
不審な表情で彼方の腕の中から見上げるその目には、鮮やかな丸い花が咲いている。元現実世界やエルフ世界で付けていた花とは微妙に異なる、やや青みがかって縁が波打っている花だ。これで同じ顔の人間に会うのも三度目。
乱暴な扱いにも動じず、関心の薄い目線で彼方を不審げに見上げるばかりだ。
「この世界における立夏、つまりお前たちにとってはアニメキャラクターとしての立夏のオリジナルか」
「仰る通りで御座います。というのも、桜井様がその立夏様から着想を得てモデルとすることで例のアニメには立夏というキャラクターが登場したからです。もっとも、あなたにとっては経緯が全く逆さまなのでしょうが」
「そうだ。私にとっては立夏のオリジナルは事後的に発見されるものでしかない。私が終末器を押すことでそれを逆創造したからだ。主導権は依然として私にある」
「やはりおぞましい能力で御座います。わたくしのアポステリオリなオリジナルが逆創造される前に、あなたを殺害しなければなりません」
「それでいい。お前は何としても私を殺さなければならないし、私は何としても終末器を押さなければならない。これはそういうゲームだ。お前もしたければジュリエットに味方してもいいんだぜ」
彼方は足元の瓦を見やった。僅かな隙間から小さく白い粒がうぞうぞと湧き出している。
蛆虫の群れが風に乗って巻き上がり、ふわふわと立ち上がって彼方の目の前で人型を成す。蛆人間の灰火が起き抜けの締まりのない表情で頭をかいた。
「私は誰の敵でも味方でもないよ。そーいうポジショニングをするタイプの登場人物じゃーないって言ったよね。こーやって屋上まで湧いてきてみたのは、まあ、暇潰しだね。そのままエピソード8見てたんだけど、流石にそれよりはこっちの方が面白そーだから。私のことは気にせずに背景的なものと思ってもらって」
「言われなくてもそうするさ。ただしその前に一つだけ言っておきたいことがある」
「なにかな」
「この世界で初めて出会ったのがお前で良かった」
「うわ、なんか好感度がバグる地雷踏んだかな。でもこれどっちかいうとバッドエンドっぽいなー」
「お前への好感度は今も地の底を這っている。好き嫌いではなく、私にとって都合が良かったということだ。何故なら初めて出会ったのがお前以外なら、私は出会い頭のアッパーカットできっとそいつを殺していたからだ。そしてそのままルール無用の殺人鬼になっていただろう。だが、たまたまお前が死なない蛆虫だったから、私は自分のやるべきゲームに気付けた。元々私には殺して解決しようとするところもあったが、これからはフェアなゲームになるように宣戦布告の手順を踏もう」
「あ、それ譲歩したつもりだったんだ。私は今の方が遥かにタチが悪いと思うけどね。最初からアンフェアならまだしも、ぜんぜんフェアじゃないものをフェアだと思い込んでいるあたりがさ。ま、それも私にとってはどーでもい」
灰火の言葉はそこで切れた。口元をナイフが貫通したからだ。
彼方は僅かに身を捻り、顔面に飛んでくる刃先を避けた。灰火の身体越しの奇襲だが、身構えていればこのくらいは何でもない。ジュリエットにゲームスタートの掛け声が無いことはもうわかっている。問題は次の一手、飛び道具しか届かないこの間合いでジュリエットはいったい何を仕掛けるか。
次に見えたのは天に向かって駆け上がるナイフだった。短いナイフの直線レーザー、そのスピードは投擲を超えて狙撃ですらあった。
ナイフがヘリコプターの下部に突き刺さる。ガソリンがぴゅっと吹き出して漏れた瞬間、機体の下方が爆発した。バランスを崩したヘリコプターが煙を撒き散らしながら彼方目がけて墜落する。
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