王太子妃クラリスと王子たちの絆【完】

mako

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王子たちと暗躍する陰謀

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ランズ王国には三人の王子が存在する。
その中で第2王子は正妃の子であるフリードリヒ。
生まれながらの後継者であり、従う者も多い。
しかし、それに勝るとも劣らないほどの支持を持つのが第1王子、アルフレッドである。

アルフレッドは、フリードリヒが絵本の中の王子様のように華やかであれば、
勇敢な騎士のような雰囲気を纏い、美男子ながらその笑顔を見た者はごく僅かであった。
その実力は本物であるが、フリードリヒ誕生後、得体の知れない葛藤に悩まされる時期もあった。
しかし彼はそれを払拭すべく、勉学に励み、鍛錬を重ね、努力の結晶として力を蓄えた。
そしてその力に、多くの貴族たちが付いている。

そして最後に、第3王子ヨハネス。
側妃の子として生まれた彼は、上の二人の王子とは異なる空気を纏い、
主要職から外れた貴族たちを中心に支持を集めていた。

貴族たちにとって、仕える主の力が異なれば得られる恩恵も異なる。
そのため、力ある主を担ぎ上げるのは必然である。

ここにきて勢いを増しているのが第1王子アルフレッドだ。
王子自体の功績は有り余るほどある。
しかし、フリードリヒが立太子している事実は揺るがない。
第1王子派は、フリードリヒの失脚以外に道はないと見なし、あらゆる非難を重ねて彼を追い込んでいるのである。

「今夜も遅くなりそうだな」

テオドールは執務を終え、執務室に残っていたフィリップス、ランドール――
いわゆる「三羽ガラス」とともに、フリードリヒの帰りを待っていた。

ノック無しで開かれた扉に、三人は一斉に視線を向ける。

…なんだ、お前か。

テオドールの心の声を聞いたかのように、クラリスは眉をひそめて叫ぶ。

「私で悪かったわね!」

フィリップスはテオドールの横から落ち着いた声で言った。

「妃殿下が戻られたということは、殿下もそろそろですか?」

クラリスは小さく首を横に振り、疲れた様子で続けた。

「今夜は長くなりそうよ。ってかね、貴方たちの親ガラスは隙が多すぎるのよ」

そのまま、三羽ガラスの横に座り込むクラリス。

「殿下はやるべきことを完璧に熟されております。イチャモンを付けられているのはこちらですよ」

「そうね。だけど、こうして外野からヤンヤ言われるのは何故?第1王子なんて一つのスキャンダルもないわよ?」

…つうか、何しに来たんだよ。

テオドールはクラリスをじっと睨む。

クラリスは小さく息を吐き、テーブルの上にあるボトルを指差す。

「まあ、今夜殿下がお戻りになったら、これを飲ませて早く寝かせてあげて」

その手に握られたのは、幻のブドウ酒と呼ばれる希少なボトル。
全てがゴールドで覆われ、その存在感だけで価値が伝わる。
驚く三人にクラリスは微笑む。

「そんなに驚かなくても、毒なんて入ってないわよ」

…いやいや、そこじゃないだろ?

「妃殿下、これは…」

初めて口を開いたランドールに、クラリスは軽く肩をすくめて答える。

「こういう時は、飲んで寝るのが一番よ。いつまでも考え込んでいたって、ろくなことはないもの。
確かに殿下にも隙はあるけど、テオドールの言うようにイチャモンも事実。
王族として生まれたなら、足を引っ張りたい者なんて腐る程いるものよ」

三人はポカンと見つめ、クラリスは小さく首を傾げる。

「何よ、変なこと言ってる?」

フィリップスは微笑みながら首を横に振った。

「いえ、妃殿下は殿下を毛嫌いしておられるのかと思いましたので」

「は?フィリップスったら!好きも嫌いも無いわ。あるのは殿下が私の夫だという事実だけ。
でもね、同じ王族として殿下の気持ちも分かるのよ?付き合いは貴方たちの方が長いかも知れないけど、王族にしか分からない孤独もあるの。だから、今夜は早めに休ませてね」

疲れたクラリスはボトルをテーブルに置き、首を回して執務室を後にする。

三人は視線を離せず、ボトルの周囲を凝視するテオドールの姿に圧倒されていた。

「これ、本物だよな?」

触れようとした手をサッと退け、テオドールは慎重にボトルを見つめる。
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