王太子妃クラリスと王子たちの絆【完】

mako

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社交の場のひととき

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綺羅びやかな夜会が始まると、貴族たちはそれぞれ社交の輪を広げていく。
クラリスはファーストダンスを終え、ひと息ついていた。

「お飲み物でも取って参りますか?」

本日ピンチヒッターで側近を務めるテオドールの言葉に、クラリスは微笑んで答える。

「そうね、お願いするわ」

視線を戻すと、フリードリヒを取り囲む令嬢たちで賑わっていた。

…にしても凄い人気ね、我が夫は。

視線をさらに流すと、遠くの一角には貴族たちと重厚な会話を交わすアルフレッドの姿があった。正装に身を包み、普段よりも増した威厳と貫録を漂わせている。

…流石ね、頭が下がるわ。

クラリスは客観的に感心しながらバルコニーへ向かうと、夜の冷たい風が肌を撫でた。
夜空には煌めく星々。まるでデビュタントを迎える令嬢たちを祝福しているかのようで、クラリスの心は自然と弾み、笑みがこぼれた。

しかしその安らぎは長くは続かなかった。先客としていた令嬢たち三人が、その空気を一気に影に変えたのだ。

「あら、クラリス様ではないですか?」

学園時代のクラスメートである彼女たちだが…名前が思い出せない。おそらく相手方も同じであろう。だが、今やクラリスは王太子妃である。思い出したのか、令嬢たちは自然にクラリスを取り囲むように寄ってきた。

「ご無沙汰ですね」

クラリスは王太子妃スマイルで応える。

「殿下はお忙しい御身ですから、お一人でお寂しいでしょう?」

赤いドレスの令嬢が口を開くと、黄色いドレスの令嬢が続ける。

「妃殿下も大変ですね。殿下は皆にお優しいお方ですから(笑)」

嫌味を交えた笑いを浮かべ、最後にロイヤルブルーのドレスの令嬢が言った。

「ですが鉄パンツの妃殿下ですから、逆に助かるのでは?」

その一言に残る二人も楽しげに笑う。

「まぁ、そうですわね~」

クラリスも浮かない顔にならないよう、笑みを浮かべ返す。

「まぁ、そうなのですね?」

…何なの、このくだらない時間は。

クラリスは心の声を押し殺しながらも、柔らかく返す。

「ところで、皆さんもあちらに混じらなくてもよろしいの?」

会場のフリードリヒと令嬢たちに視線を向けると、赤いドレスの令嬢は胸を張って言った。

「私たちはアルフレッド殿下狙いですのよ?」

…おいおい、仮にも相手は第1王子よ。狙いって何?そもそも狙って落とせるものではないのに。

「でもクラリス様も学園時代は、まさか殿下狙いとは思っていませんでしたわ!」

赤いドレスの令嬢が調子に乗って言い放つ。

…いや、狙ってないけどね?

クラリスは黙って微笑むと、ちょうどそのときテオドールが果実水を手に声をかけた。

「妃殿下、こちらでしたか」

黄色いドレスの令嬢は、テオドールを見るや否や顔を真っ赤にし、叫ぶ。

「テオドール様!」

…お前はテオドール狙いかよ。つうか、声のトーン高すぎでしょ?

クラリスは令嬢たちの変貌ぶりに、思わず感心した。

テオドールは笑顔を返すと、クラリスに言った。

「殿下がお呼びです」

言われた通りクラリスが会場に戻ると、テオドールは軽く睨む。

「こんなものにお付き合いされることはありませんよ。心の声がいつ漏れるか、ハラハラしました」

クラリスは楽しげに応える。

「へえ…」

「何ですか?」

「テオドールも、ああいうのをくだらないと思うのね」

「そんな風にとは?」

「うん、あぁゆうの、くだらないって思うってことよ」

テオドールは不思議そうにクラリスを見つめる。

「逆に聞きますが、アレをくだらないと思わず、何と思うのですか?」

「だって、貴方たちはあぁやって侍らせて喜んでいたじゃない?」

思わず絶句するテオドール。

…まじか。

「何よ?」

「いや、まさか、殿下があぁやっているのを殿下は喜んでいると?」

クラリスも絶句する。

「…違うの?」

額に手を当て、テオドールは小さくため息をついた。

「また、ゆっくりお話しします…」

脱力した彼を、不思議そうに見つめるクラリスであった。
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