王太子妃クラリスと王子たちの絆【完】

mako

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王太子妃の証明

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『待て。』

衛兵を制止させると、フリードリヒは冷静かつ威厳ある声で続けた。

『私は嘘が嫌いだ。リザ嬢――お前の言うこと、証明できるのか?』

安定の貫禄。その場に沈黙が訪れる中、黙り込むリザを前に、エリザベスは不敵な笑みを浮かべる。

アルフレッドもなお食い下がるように問いかけた。

『エリザベス、君の言うこと、証明できるのか?』

驚いたエリザベスは目を大きく見開く。

『殿下、妻の私を信用なさらないのですか?』

『…妻ね』

アルフレッドは力なく吐き捨てた。その瞬間、場の空気にさらに重みを加えたのは、ランズ王国の王太子だった。

『義姉上。貴女はこのリザ嬢を知らないとおっしゃるのですね?』

混乱したエリザベスは深く考えもせず答える。

『知らないわ。前回の聞き取りで初めてお会いしたもの』

フリードリヒはゆっくり頷いた。

『では、あなたの側近とこのリザ嬢は?』

苛立つエリザベスは思わず考えずに答える。

『無いわ』



『では、リザ嬢。私に敬意を表してくれないか?』

突然の指示に、リザは戸惑いながらもカーテシーをする。

これを見た国王、王妃はもちろん、アルフレッドやヨハネスも驚きと共に大きな落胆に襲われる。その様子に戸惑いを見せるエリザベスに、フリードリヒは軽く言った。

『わからないのか?カーテシーだよ』

『義姉上も、やってみて下さい』

立ち上がったエリザベスは、誇らしげに美しいカーテシーを披露する。

フリードリヒはさらに促す。

『クラリス、君もお願いしていいか?』

クラリスは敢えてゆっくりと膝を折る。

エリザベスはフリードリヒを睨みつけ、声を荒げる。

『何ですの?殿下、カーテシーなど毎日ご覧になられているでしょうに』

『そうだね、で?わからない?』

…は?

『リザ嬢はわかるかな?』

リザは小さく呟く。

『膝を折る角度ですわ。私は幼い頃、妃殿下とカーテシーごっこをして遊んでいました。ですが妃殿下のカーテシーは下手で…。でも、エリザベス様のは私に合っていて、自然にできました』

これを聞いたエリザベスは思わず苛立つ。

『貴女、リントンのカーテシーが難しく、パナンが簡単みたいな言い方はやめなさい!教える力の差よ!』

我に返ったエリザベスはハッとフリードリヒを見る。

フリードリヒは静かに微笑む。

『カーテシーは大陸の南北で少し癖が違う。ランズ王国もリントン王国も南側、パナン王国は北側。どちらが良いとかはない。単なる癖だ。でも違和感に気づかないとは、貴女はどれだけ自分軸なのかね』

ワナワナと震えるエリザベスに、アルフレッドは冷たい目を向ける。

『エリザベス、そもそも王太子妃にはなれないわよ』

王妃の言葉に、エリザベスは落胆する。王妃に取り入り、フリードリヒが廃太子になれば、アルフレッドが王太子になる。その計算のもとにここに来たのだ。

『貴女は嘘ばかり。初めから気づいていたわ。でもパナン王国の思惑を知りたくて泳がせていたの』

『嘘?』

『ええ、嘘ばかり。あの程度の嘘で私に取り入ったつもり?毎日私のために刺した刺繍、よくできていたわ。でもあれは貴女が刺したものではない』

エリザベスは藁にもすがる思いで叫ぶ。

『私ですわ!』

王妃は静かに首を振る。

『いいえ、あれは私がかつてある王女に教えた手法。一般的ではない刺し方よ。そしてこのデザインも私のアレンジ』

王妃が取り出したハンカチを見て、クラリスは目を見開く。

『そしてこちらが、その王女が初めて刺した処女作。この二枚は出来栄えは異なるけれど、デザインは同じ。刺せるのは貴女ではなく、ランズ王国王太子妃クラリスだけ』

驚愕のエリザベス、そして涙を浮かべるクラリス。

『クラリス、貴女は立派な王太子妃になったわ。あの時の私より、ずっと素晴らしい』

王妃の微笑みには、最愛の息子に嫁いでくれたクラリスへの深い愛と感謝が込められていた。

フリードリヒもまた、そのデザインを目にして驚いた。幼い頃、ありとあらゆるものにそのデザインがあったことを覚えていたからだ。

…母上。

ひな壇に座る王妃に視線を向けるフリードリヒ。王妃はにこやかに微笑んでいた。
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