37 / 85
王妃の裁きとパナン王太子の降伏
しおりを挟む
項垂れるエリザベスに、容赦なくフリードリヒが告げる。
『極刑は免れないよ?』
驚愕する一同の中、王妃が側近に合図を送ると、両開きの扉が静かに開かれる。
その先には、パナン王国の王太子と側近たちが最上級の礼を取り、国王の前に跪いていた。
あれほどプライドの高い王太子が跪く光景に、王子たちは目を丸くする。
フリードリヒは不思議そうに王妃を見やる。
『お兄様…』
泣き崩れるエリザベスに目もくれず、王太子は低く言った。
『此度の件、誠に申し訳ありません。何卒穏便に。必要ならば、エリザベスの首を差し出します故』
『お兄様!』
叫ぶエリザベスを衛兵が取り押さえると、王太子の声が会場に響き渡る。
『黙れ!お前にパナン王国王女としてのプライドはないのか!己のやらかしたことの責任も取れぬのか!愚か者!』
気性の荒い王太子の言葉に、会場は張り詰める。
王妃は冷静なまま、淡々と告げた。
『貴方がた、そんなくだらないやり取りは他でやってください。
ところで、パナン王太子殿下?
今回の件、この者の首だけで済ませるつもりですの?』
…首だけで済むって?
王太子はうつむきながらも、毅然と答える。
『まずランズ王国王太子妃の地位を狙うため、関係のないスラムのお嬢さんまで巻き込む…。
そこまでして王太子妃にこだわるなんて、他国に知れたらとんだ恥さらし。
権威ある王族が、スラムの者を使うなんて…恥も外聞も、ねえ?』
…怖すぎる。
フリードリヒは母を見上げる。
『そしてこれが最大の罪。極刑に値する。王太子妃に堕胎薬を盛るなんて、貴方の国なら「ごめんなさい」で済むのですか?
仮に、貴方の妃が同じ目に遭っていたら?』
王太子は唇を噛み締める。
『極刑です』
『それで満足ですか?私は到底無理。最愛の息子の子ですのよ。私の孫になるのです。
ランズ王国の後継者としても許されませんが、それ以上に、息子の子を殺されていたとなれば――八つ裂きにしても足りませんわ』
エリザベスは目を見開き、昨日までの優雅な王妃の姿と今の冷徹な王妃を見比べる。
『勘違いしないで、エリザベス。貴女が嘘つきなのは知っている。でも、最愛の息子のお嫁さんを傷つけたことは、貴女の命より重いのよ』
…
『そうね、フリード。どうする?』
突然飛んできた矢に、フリードリヒは驚きつつも冷静に返す。
『まず慰謝料として、ラダン王国の借金で補填してもらいましょうか?』
王太子は言葉を失い、クラリスも驚く。
後ろに控えるテオドールを見ると、テオドールは真顔で首を横に振る。
王妃は微笑みながら続ける。
『我が国はお金に困っていませんもの。ラダンにはお世話になっているし、名案ね。
ついでにあのイチャモンつけてる金山の所有権からも手を引いて頂く。
そうすれば、嘘つき王女の首なんて必要ないわ!
仮にも私の大切なアルフレッドの妻として名を馳せていたのだから。
これが世に知られたら、アルフレッドの今後にも関わることよ』
…キャラ崩壊しそうな王妃だ。
クラリスは王妃を凝視する。
すると王妃はクラリスに向かって、お茶目に舌を出した。
パナン王国王太子は全てを受け入れ、エリザベスを連れて早々に王宮を後にした。
その様子を見届けると、フリードリヒは静かにリザに視線を向けた。
『極刑は免れないよ?』
驚愕する一同の中、王妃が側近に合図を送ると、両開きの扉が静かに開かれる。
その先には、パナン王国の王太子と側近たちが最上級の礼を取り、国王の前に跪いていた。
あれほどプライドの高い王太子が跪く光景に、王子たちは目を丸くする。
フリードリヒは不思議そうに王妃を見やる。
『お兄様…』
泣き崩れるエリザベスに目もくれず、王太子は低く言った。
『此度の件、誠に申し訳ありません。何卒穏便に。必要ならば、エリザベスの首を差し出します故』
『お兄様!』
叫ぶエリザベスを衛兵が取り押さえると、王太子の声が会場に響き渡る。
『黙れ!お前にパナン王国王女としてのプライドはないのか!己のやらかしたことの責任も取れぬのか!愚か者!』
気性の荒い王太子の言葉に、会場は張り詰める。
王妃は冷静なまま、淡々と告げた。
『貴方がた、そんなくだらないやり取りは他でやってください。
ところで、パナン王太子殿下?
今回の件、この者の首だけで済ませるつもりですの?』
…首だけで済むって?
王太子はうつむきながらも、毅然と答える。
『まずランズ王国王太子妃の地位を狙うため、関係のないスラムのお嬢さんまで巻き込む…。
そこまでして王太子妃にこだわるなんて、他国に知れたらとんだ恥さらし。
権威ある王族が、スラムの者を使うなんて…恥も外聞も、ねえ?』
…怖すぎる。
フリードリヒは母を見上げる。
『そしてこれが最大の罪。極刑に値する。王太子妃に堕胎薬を盛るなんて、貴方の国なら「ごめんなさい」で済むのですか?
仮に、貴方の妃が同じ目に遭っていたら?』
王太子は唇を噛み締める。
『極刑です』
『それで満足ですか?私は到底無理。最愛の息子の子ですのよ。私の孫になるのです。
ランズ王国の後継者としても許されませんが、それ以上に、息子の子を殺されていたとなれば――八つ裂きにしても足りませんわ』
エリザベスは目を見開き、昨日までの優雅な王妃の姿と今の冷徹な王妃を見比べる。
『勘違いしないで、エリザベス。貴女が嘘つきなのは知っている。でも、最愛の息子のお嫁さんを傷つけたことは、貴女の命より重いのよ』
…
『そうね、フリード。どうする?』
突然飛んできた矢に、フリードリヒは驚きつつも冷静に返す。
『まず慰謝料として、ラダン王国の借金で補填してもらいましょうか?』
王太子は言葉を失い、クラリスも驚く。
後ろに控えるテオドールを見ると、テオドールは真顔で首を横に振る。
王妃は微笑みながら続ける。
『我が国はお金に困っていませんもの。ラダンにはお世話になっているし、名案ね。
ついでにあのイチャモンつけてる金山の所有権からも手を引いて頂く。
そうすれば、嘘つき王女の首なんて必要ないわ!
仮にも私の大切なアルフレッドの妻として名を馳せていたのだから。
これが世に知られたら、アルフレッドの今後にも関わることよ』
…キャラ崩壊しそうな王妃だ。
クラリスは王妃を凝視する。
すると王妃はクラリスに向かって、お茶目に舌を出した。
パナン王国王太子は全てを受け入れ、エリザベスを連れて早々に王宮を後にした。
その様子を見届けると、フリードリヒは静かにリザに視線を向けた。
6
あなたにおすすめの小説
愛する人は、貴方だけ
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
下町で暮らすケイトは母と二人暮らし。ところが母は病に倒れ、ついに亡くなってしまう。亡くなる直前に母はケイトの父親がアークライト公爵だと告白した。
天涯孤独になったケイトの元にアークライト公爵家から使者がやって来て、ケイトは公爵家に引き取られた。
公爵家には三歳年上のブライアンがいた。跡継ぎがいないため遠縁から引き取られたというブライアン。彼はケイトに冷たい態度を取る。
平民上がりゆえに令嬢たちからは無視されているがケイトは気にしない。最初は冷たかったブライアン、第二王子アーサー、公爵令嬢ミレーヌ、幼馴染カイルとの交友を深めていく。
やがて戦争の足音が聞こえ、若者の青春を奪っていく。ケイトも無関係ではいられなかった……。
[完結]私を巻き込まないで下さい
シマ
恋愛
私、イリーナ15歳。賊に襲われているのを助けられた8歳の時から、師匠と一緒に暮らしている。
魔力持ちと分かって魔法を教えて貰ったけど、何故か全然発動しなかった。
でも、魔物を倒した時に採れる魔石。石の魔力が無くなると使えなくなるけど、その魔石に魔力を注いで甦らせる事が出来た。
その力を生かして、師匠と装具や魔道具の修理の仕事をしながら、のんびり暮らしていた。
ある日、師匠を訪ねて来た、お客さんから生活が変わっていく。
え?今、話題の勇者様が兄弟子?師匠が王族?ナニそれ私、知らないよ。
平凡で普通の生活がしたいの。
私を巻き込まないで下さい!
恋愛要素は、中盤以降から出てきます
9月28日 本編完結
10月4日 番外編完結
長い間、お付き合い頂きありがとうございました。
ループした悪役令嬢は王子からの溺愛に気付かない
咲桜りおな
恋愛
愛する夫(王太子)から愛される事もなく結婚間もなく悲運の死を迎える元公爵令嬢のモデリーン。
自分が何度も同じ人生をやり直している事に気付くも、やり直す度に上手くいかない人生にうんざりしてしまう。
どうせなら王太子と出会わない人生を送りたい……そう願って眠りに就くと、王太子との婚約前に時は巻き戻った。
それと同時にこの世界が乙女ゲームの中で、自分が悪役令嬢へ転生していた事も知る。
嫌われる運命なら王太子と婚約せず、ヒロインである自分の妹が結婚して幸せになればいい。
悪役令嬢として生きるなんてまっぴら。自分は自分の道を行く!
そう決めて五度目の人生をやり直し始めるモデリーンの物語。
『やりたくないからやらないだけ 〜自分のために働かない選択をした元貴族令嬢の静かな失踪〜』
鷹 綾
恋愛
「やりたくないから、やらないだけですわ」
婚約破棄をきっかけに、
貴族としての役割も、評価も、期待も、すべてが“面倒”になった令嬢ファーファ・ノクティス。
彼女が選んだのは、復讐でも、成り上がりでもなく――
働かないという選択。
爵位と領地、屋敷を手放し、
領民の未来だけは守る形で名領主と契約を結んだのち、
彼女はひっそりと姿を消す。
山の奥で始まるのは、
誰にも評価されず、誰にも感謝せず、
それでも不自由のない、静かな日々。
陰謀も、追手も、劇的な再会もない。
あるのは、契約に基づいて淡々と届く物資と、
「何者にもならなくていい」という確かな安心だけ。
働かない。
争わない。
名を残さない。
それでも――
自分の人生を、自分のために選び切る。
これは、
頑張らないことを肯定する物語。
静かに失踪した元貴族令嬢が、
誰にも縛られず生きるまでを描いた、
“何もしない”ことを貫いた、静かな完結譚。
【完】瓶底メガネの聖女様
らんか
恋愛
伯爵家の娘なのに、実母亡き後、後妻とその娘がやってきてから虐げられて育ったオリビア。
傷つけられ、生死の淵に立ったその時に、前世の記憶が蘇り、それと同時に魔力が発現した。
実家から事実上追い出された形で、家を出たオリビアは、偶然出会った人達の助けを借りて、今まで奪われ続けた、自分の大切なもの取り戻そうと奮闘する。
そんな自分にいつも寄り添ってくれるのは……。
【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした
ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。
彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。
そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。
しかし、公爵にもディアにも秘密があった。
その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。
※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています
※表紙画像はAIで作成したものです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる