王太子妃クラリスと王子たちの絆【完】

mako

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王妃の温かな眼差しと裏の策略

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先程までの緊迫した空気とは打って変わり、王妃はあたたかい眼差しをリザに向ける。

『さっきは悪かったね。
1人で懸命にスラム街で生きてきた君には、本当に頭が下がる』

リザは驚きを隠せず、フリードリヒを見つめた。

『けれど、君がクラリスを誤解していたとしても、貶めた事実は消えない』

リザは肩を落とす。恋焦がれたフィリップスは、ここでは他人のような顔でリザを見ているのだ。

…貴族って、怖すぎるわ。

大きく息を吐いたリザは、少し笑みを浮かべて言った。

『妃殿下、ごめんなさい。でも短い期間だったけど、お姫様気分を味わえて楽しかった。で…私の罪はどうなるの?』

フリードリヒは視線をクラリスに向け、彼女に委ねる。

『そうね…孤児院で働いてみない?』

リザは驚きつつ笑う。

『孤児院?私はもう一人で生活できるから、入れるわけないでしょ』

『違うわ。働くのよ。子どもたちのために。
三食付きで生活に困らない。そこで稼いだお金で、私に贈り物をしてくれる?』

クラリスの言葉には、かつて自分が自分の力で刺繍を刺していた経験が重なっている。
リザは微笑み、納得した様子で去っていった。
懐かしい笑顔をクラリスに向けながら。

王妃に視線が集まる。

『何か?』

平常運転の王妃。
国王は困惑の色を浮かべる。

『お前…パナン王太子を呼びつけていたとは、最初から知っていたのか?』

考えることは皆同じだった。クラリスは頷き、王妃を見る。

『フリードの動きからね。
それに、エリザベスが王太子妃の座を狙っているのはすぐに分かった。
アルフレッドだって気づいていたでしょう?』

アルフレッドは頷き、さらに続ける。

『で、あのクラリスへの嫌がらせ。フリードが動くのを静観していた』

フリードリヒを見るクラリスだが、当の本人は呆気に取られている。

王妃は優しく微笑み、クラリスに語りかける。

『よく頑張ったわね。反論したくなる時もあったでしょうに。弁明したくなる時もあったでしょうに。
貴女はもう立派な王太子妃よ』

クラリスは呆然とし、王妃に問う。

『ご存知だったのですか?私があの少女だと…』

王妃と国王は顔を見合わせ、笑い出す。

『アハハハ、知らないわけないじゃない?
だって、あのハウスを先代にねだったのは私ですもの』

…?

『あの頃は本当に多忙で、フリードともろくに接する時間が無かったの』

『そうだったね、半分鬱だったよ』

国王夫妻は当時を懐かしむ。

『そんな時、先代から森の妖精の話を聞き、会いに行ったのよ。
聞いていた通りの聡明で賢い姫だとすぐに分かった。
貴女との時間が心地よく、いつしか年下の貴女が私の心の拠り所になった。
貴女は天使のようだった』



『そして、先代からフリードリヒにも妖精の話を楽しみにしていると聞いてね?』

国王に振ると、国王は笑顔で答えた。

『そうだ、お嫁さんにしようとなるだろう?』

…いやいや、普通はならないだろ。
テオドールは心の中で突っ込みを入れる。

『だからね、当時他国から嫁いだ私は、常に誰かが側にいる環境が耐えられなかったの。
寝室なんてもっと嫌で…だから隠れ家的な場所を用意してあげたの』

…早すぎるわ。

『だから、あのハウスは正真正銘フリードとクラリスの物なのよ』

フリードリヒが問う。

『初めから分かっていたのですか?リザのこと』

王妃は当然のように答える。

『ええ』

その後ろ盾を炙り出したくて行動していたが、結果的に解決してくれて良かった、と微笑む。

フリードリヒは腑に落ちない様子で訊ねる。

『母上は何故そこまで私のことをご存知なのですか?』

…まるでストーカーでは?
テオドールは頷きつつ王妃を見ると、王妃は少し恥ずかしそうに微笑む。

『先代がお亡くなりになってからは、誰もフリードの状況を教えてくれなくなったの。
だから、必要でしょう?我が子の近況を知るために』

フリードリヒは呆れた顔で答える。

『私に直接尋ねて頂ければ良いではないですか?』

『王太子として疲労を重ねる殿下を知っている私だけに、邪魔はしたくなかったの。
それに、今更でしょう?貴方にとっては』

湿った空気の中、ヨハネスが口を開く。

『王妃、そんなに兄上のことをペラペラ喋る人がいたのですか?』

王妃はヨハネスを見つめ、答える。

『だから、手っ取り早くお友達を頼んだのよ』

…お友達?

クラリスは思い出したかのように口を開く。

『フィリップス?』

フィリップスは最上級の礼を取り、テオドールは呆れて声を漏らす。

『お前…よくもまぁペラペラと!側近が聞いたら呆れるぞ?』

『いや、王妃はフリードリヒ殿下の母上ですから』

『簡単に手懐けられるなよ!で?報酬は?』

フィリップスは王妃に笑顔を向け、軽く答える。

『まぁ…その色々とですね?』

王妃はクスクス笑い、付け加える。

『社交界の未亡人を少しね?』

…この色気は只者ではない。

クラリスは眉間にシワを寄せ、テオドールを睨む。

…え?何で俺?

テオドールは不貞腐れるようにそっぽを向いた。
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