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元義姉との再会
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帝国より長い馬車の列が、豪華絢爛にランズ王国王宮の門を潜ったとの報告が執務室に届いた。
皇帝と国王の会談が始まる頃、一同は庭で開かれるガーデンパーティへと降り立った。
ランズ王国王族の数を遥かに超える帝国からの来客が次々と集まる中、側近たちは後ろに控えながらも視線を鋭く巡らせ、護衛騎士たちもその周囲をぐるりと囲んでいた。
皇太子とフリードリヒが談笑する中、側近たちの視線がある人物に止まる。
『…あれは!』
そこには帝国第3皇子の隣に、パナン王国第1王女エリザベスが優雅に微笑んでいた。
パナン王国、エリザベス・パナン。かつてアルフレッド王子の妃であり、短い期間ではあるが確かにランズ王国第1王子妃であった女性。しかも、かつて王太子妃クラリスに堕胎薬を飲ませようと暗躍した張本人である。王妃はアルフレッドを思い、エリザベスの処遇をパナン王国王太子に委ねランズ王国を去ったはずだった。
それが、なぜここにいるのか――。
一同の鋭い視線を知ってか知らずか、エリザベスは優雅なオーラを纏い、まるで何事もなかったかのように微笑んで王宮の庭に足を踏み入れた。
テオドールはクラリスを庇うように前に出ると、クラリスも黙って頷く。
エリザベスは相変わらずパナン王国の侍従を引き連れ、テーブルを回って挨拶をしていた。その様子をランズ王国一同は注意深く見守る。
やがて、エリザベス御一行はクラリスの元へ近づき、独特の癖のあるカーテシーを披露した。
『ご無沙汰いたしております。妃殿下。』
落ち着いた物言い、圧倒的な存在感。クラリスも負けじとカーテシーを返し、美しく微笑む。
…黙っていれば負けてないんだけどね。
後ろに控えるテオドールも表情を変えず、クラリスを見守る。
『この度は誠におめでとうございます。』
堕胎薬まで盛った張本人が言えるのかと思うが、エリザベスは満面の笑みで祝辞を述べる。
『ありがとうございます』
クラリスは形式的に返す。すると、侍従たちは鼻で笑うようにクラリスを蔑んだ目で見る。
…なるほどね、そっちか。
クラリスは含みのある笑みで返す。
その様子を見ていたヨハネスが近づき、ため息交じりに言った。
『これはこれは、元義姉上(笑)久方ぶりですね。』
嫌味を込めたヨハネスにも、エリザベスや侍従たちは気にせず微笑み、一斉に頭を垂れる。
…ランズ王国第3王子には従順なのに、王太子妃には強気なんだな。
テオドールは不思議そうに見守る。
『ヨハネス殿下、ご無沙汰しております。本日はパナン王国から王子誕生のお祝いにと思い、わざわざ参じました。』
侍従たちは大きな包みを運んでくる。クラリスは驚いたように見つめる。
『わざわざありがとうございます。けれども、そのお気持ちだけ頂きますわ。』
穏やかに微笑むクラリスに、侍従は驚いた声を上げる。
『まぁ、何と!妃殿下はパナン王国がお嫌いですか?』
クラリスは瞬きをしながら答える。
『以前の茶会の際もパナン王国の茶菓子をなかなか召し上がりませんでしたもの。食文化の違いかと思っておりましたが、そうではなかったのですね?』
…あぁ、下剤入りの茶菓子を平らげてテオドールに叱られた時のね(笑)
クラリスは首を横に振る。
『好きも嫌いもありませんわ。ただ、私はお気持ちだけ頂くと申したまでです。』
侍従とクラリスのやり取りを見守るエリザベスが、静かに口を開く。
『妃殿下はまだ私の事を許していただけておりませんのね?』
悲しそうに語るエリザベスを守るように侍従たちが取り囲む。
『まぁ、エリザベス様。そのように心を痛めてはなりません。』
…えっと?何故こうなる?
クラリスは不思議そうに目の前の茶番を眺める。
『相変わらずですね。君のパナン王国王女への忠誠は見上げたものです。しかしそれは自国でなさってください。ここはランズ王国ですからね?』
侍従はヨハネスの言葉を受け、クラリスを睨む。
『そもそも、終わったことをいつまでも…!妃殿下は王子を身ごもり、無事に誕生したではありませんか?そんなおめでたい事に水を差すとは…どうしてわざわざ事を荒立てるような真似をなさるのですか?』
侍従の驚くべき口ぶりに、ヨハネスも口を挟めず固まる。クラリスは少し微笑み、言葉を返す。
『その件については、王妃がパナン王太子に処遇をお任せしておりましたので、私が口を挟むつもりはございません。そして今ここにいらっしゃるということは、全て終わったということでしょう?』
エリザベスは口角をわずかに上げる。
『ならば?』
目を細め、背筋が凍るような視線をクラリスに送る。
『これは公式の場ではございませんので、私の意思でご辞退申し上げます。私は堕胎薬の件を蒸し返しているのではありません。個人的に、エリザベス様からの贈り物は受け取りたくないのです。』
初めてはっきりと拒絶するクラリスに、パナン王国一同は驚きの表情を見せる。
『貴方、誰に向かって…そのような物言いをして許されると?』
クラリスは納得したかのように頷き、後ろのテオドールを見る。テオドールも頷く。
『…な、何よ?何ですか?』
怪訝そうな侍従に、クラリスは静かに言った。
『いいえ、何でもありません。私は個人的に、エリザベス様と親しくできませんの。』
『一国の王太子妃が、何とも情けない…』
エリザベスは愚かなクラリスに同情するかのように視線を送る。
『何と言われても構いませんわ。私は、大切な義兄であるアルフレッド第1王子を踏み台にし、あわよくば王太子妃にと目論んでおられた事が許せませんのよ。まぁ今では、エリザベス様がアルフレッド殿下に相応しいとは思えませんので、ある意味良かったのですが。』
辛辣な言葉に侍従は驚き、促すも、エリザベスは真っ直ぐクラリスを見つめ、微笑みながら冷たい視線を残して庭を後にした。
皇帝と国王の会談が始まる頃、一同は庭で開かれるガーデンパーティへと降り立った。
ランズ王国王族の数を遥かに超える帝国からの来客が次々と集まる中、側近たちは後ろに控えながらも視線を鋭く巡らせ、護衛騎士たちもその周囲をぐるりと囲んでいた。
皇太子とフリードリヒが談笑する中、側近たちの視線がある人物に止まる。
『…あれは!』
そこには帝国第3皇子の隣に、パナン王国第1王女エリザベスが優雅に微笑んでいた。
パナン王国、エリザベス・パナン。かつてアルフレッド王子の妃であり、短い期間ではあるが確かにランズ王国第1王子妃であった女性。しかも、かつて王太子妃クラリスに堕胎薬を飲ませようと暗躍した張本人である。王妃はアルフレッドを思い、エリザベスの処遇をパナン王国王太子に委ねランズ王国を去ったはずだった。
それが、なぜここにいるのか――。
一同の鋭い視線を知ってか知らずか、エリザベスは優雅なオーラを纏い、まるで何事もなかったかのように微笑んで王宮の庭に足を踏み入れた。
テオドールはクラリスを庇うように前に出ると、クラリスも黙って頷く。
エリザベスは相変わらずパナン王国の侍従を引き連れ、テーブルを回って挨拶をしていた。その様子をランズ王国一同は注意深く見守る。
やがて、エリザベス御一行はクラリスの元へ近づき、独特の癖のあるカーテシーを披露した。
『ご無沙汰いたしております。妃殿下。』
落ち着いた物言い、圧倒的な存在感。クラリスも負けじとカーテシーを返し、美しく微笑む。
…黙っていれば負けてないんだけどね。
後ろに控えるテオドールも表情を変えず、クラリスを見守る。
『この度は誠におめでとうございます。』
堕胎薬まで盛った張本人が言えるのかと思うが、エリザベスは満面の笑みで祝辞を述べる。
『ありがとうございます』
クラリスは形式的に返す。すると、侍従たちは鼻で笑うようにクラリスを蔑んだ目で見る。
…なるほどね、そっちか。
クラリスは含みのある笑みで返す。
その様子を見ていたヨハネスが近づき、ため息交じりに言った。
『これはこれは、元義姉上(笑)久方ぶりですね。』
嫌味を込めたヨハネスにも、エリザベスや侍従たちは気にせず微笑み、一斉に頭を垂れる。
…ランズ王国第3王子には従順なのに、王太子妃には強気なんだな。
テオドールは不思議そうに見守る。
『ヨハネス殿下、ご無沙汰しております。本日はパナン王国から王子誕生のお祝いにと思い、わざわざ参じました。』
侍従たちは大きな包みを運んでくる。クラリスは驚いたように見つめる。
『わざわざありがとうございます。けれども、そのお気持ちだけ頂きますわ。』
穏やかに微笑むクラリスに、侍従は驚いた声を上げる。
『まぁ、何と!妃殿下はパナン王国がお嫌いですか?』
クラリスは瞬きをしながら答える。
『以前の茶会の際もパナン王国の茶菓子をなかなか召し上がりませんでしたもの。食文化の違いかと思っておりましたが、そうではなかったのですね?』
…あぁ、下剤入りの茶菓子を平らげてテオドールに叱られた時のね(笑)
クラリスは首を横に振る。
『好きも嫌いもありませんわ。ただ、私はお気持ちだけ頂くと申したまでです。』
侍従とクラリスのやり取りを見守るエリザベスが、静かに口を開く。
『妃殿下はまだ私の事を許していただけておりませんのね?』
悲しそうに語るエリザベスを守るように侍従たちが取り囲む。
『まぁ、エリザベス様。そのように心を痛めてはなりません。』
…えっと?何故こうなる?
クラリスは不思議そうに目の前の茶番を眺める。
『相変わらずですね。君のパナン王国王女への忠誠は見上げたものです。しかしそれは自国でなさってください。ここはランズ王国ですからね?』
侍従はヨハネスの言葉を受け、クラリスを睨む。
『そもそも、終わったことをいつまでも…!妃殿下は王子を身ごもり、無事に誕生したではありませんか?そんなおめでたい事に水を差すとは…どうしてわざわざ事を荒立てるような真似をなさるのですか?』
侍従の驚くべき口ぶりに、ヨハネスも口を挟めず固まる。クラリスは少し微笑み、言葉を返す。
『その件については、王妃がパナン王太子に処遇をお任せしておりましたので、私が口を挟むつもりはございません。そして今ここにいらっしゃるということは、全て終わったということでしょう?』
エリザベスは口角をわずかに上げる。
『ならば?』
目を細め、背筋が凍るような視線をクラリスに送る。
『これは公式の場ではございませんので、私の意思でご辞退申し上げます。私は堕胎薬の件を蒸し返しているのではありません。個人的に、エリザベス様からの贈り物は受け取りたくないのです。』
初めてはっきりと拒絶するクラリスに、パナン王国一同は驚きの表情を見せる。
『貴方、誰に向かって…そのような物言いをして許されると?』
クラリスは納得したかのように頷き、後ろのテオドールを見る。テオドールも頷く。
『…な、何よ?何ですか?』
怪訝そうな侍従に、クラリスは静かに言った。
『いいえ、何でもありません。私は個人的に、エリザベス様と親しくできませんの。』
『一国の王太子妃が、何とも情けない…』
エリザベスは愚かなクラリスに同情するかのように視線を送る。
『何と言われても構いませんわ。私は、大切な義兄であるアルフレッド第1王子を踏み台にし、あわよくば王太子妃にと目論んでおられた事が許せませんのよ。まぁ今では、エリザベス様がアルフレッド殿下に相応しいとは思えませんので、ある意味良かったのですが。』
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