絶世の悪女と呼ばれる公爵令嬢【完】

mako

文字の大きさ
5 / 59

リア王国 王太子らの視察という名目

しおりを挟む
王都から少し離れた所に王国最大の孤児院がある。ここは開かれた孤児院として一般人との交流も兼ねて大きなホールや施設が並んでいる。

緑が多く孤児院と隣接して大きな公園があり子どもたちで賑いをみせていた。


王太子であるジルベルトは側近で幼なじみでもあるハロルドとケイダンを連れてよくここを訪れている。もちろん視察という名目ではあるが。



『ここは王都と違って空気が美味しいね』


公園のベンチに座るハロルドが言うとケイダンも頷いた。ケイダンはジルベルトを見るもジルベルトは遠くを見つめながらカップのお茶を飲んでいる。


『どうした?ジル。』

ケイダンがジルベルトを覗き込むとハロルドが

『そっとしておいてやれ。来週からはアレが始まるんだ。王太子の仮面を付け続けなきゃなんないんだからね?我々とは違う。去年みたいな事にならなきゃいいけどね。』

ハロルドは肩を震わせる笑いを堪えている。




昨年の留学シーズンでは王太子であるジルベルトは散々であった。そもそも本当にリア王国で学びたい貴族らは個人でやって来るのだ。それを国を挙げてとなれば仰々しいが王女の箔付けか、もしくはリア王国の王子たちを狙う王女や令嬢らの集まりである。


それらに対してジルベルトは王太子仮面を付けて接しなければならない。勘違いする令嬢も少なくはないのだ。昨年はそんな令嬢らが帰国しないと居座る者が出てきたのである。優しさも罪。今更ながら学んだジルベルトであった。


辟易とするジルベルトは遠くで子どもたちの遊び回る姿を見て癒やされていた。




『ロイ!やめろ!返せよ!』

1人の少年がロイという少年に詰め寄っている。ロイは少年の物であろう首飾りをブンブンに振り回すと首飾りはブンと飛び、向かいの木の上まで飛んで引っ掛かって止まった。




それを見守るジルベルトらはお互い顔を見合わせると


『懐かしいな…』

ハロルドが言うとジルベルトは


『お前はいつもあの、ロイという少年のようだったな。』

ケイダンは同意し笑っている。


…。







木を見上げる少年に1人の娘が声を上げる。


『アンディ!駄目よ。無理無理。』

娘はアンディの腕を掴むとアンディは


『お姉ちゃんからしたら、なんでもないただの首飾りかもしれないけど、僕にとっては何より大切なんだ!』


娘は木を見上げると


『だけど無理だわ!』

アンディは涙を堪えながら


『ただの貝殻の首飾りだけど僕にとってはどんな宝よりも大切なんだ。お母さんと最後に行った海で一緒に見つけたんだ。宝物だろ?』


娘は間髪入れずに


『それはそう!もちろんだわ。』


娘は木を見上げ木の周りを確認すると


『分かった!分かったからアンディはここで待ってて。私が行く!』


そう言うと娘はワンピースのまま、その木にさるのように登り始めた。






!!!

王太子らは驚き思わず立ち上がった。


『まぢかよ?』

ハロルドは目を見開き思わず駆け寄ろうとするも
ケイダンが制止する。


『我々が行けば大事になる!』


ジルベルトも同意し3人はベンチに腰を下ろし見守った。


『ってか何者だ?サルの様だぞってサルか?』

ケイダンはじっくりと観察している。

『一応どっかの、令嬢かな?』

ジルベルトが言うとハロルドは


『まさか、気に登れる令嬢なんて聞いたことないしあんな令嬢知らないよ?』   


…。








娘はほんの2、3分で木の上まで到達するとアンディに首飾りを大きく振ってみせた。その様子をアンディの隣のロイは安堵の様子で見つめながら


『お姉ちゃん頑張って!』


娘は大きく笑うと木の下を見下ろした。

首飾りを片手に降りるのは至難の業だ。だからと言ってこの首飾りを自分の首に掛けるのは憚れた。


…どうしよう?


娘は仕方なく首飾りを自分の首に掛けようとするもやはり躊躇いそれを左手に持ち替えた。
そしてあろうことが隣の木の枝に右手だけで乗り移るとアンディではなくロイを呼んだ。

片手で枝を持ち、ぶら下がりながら

『ロイ!この下まで来てこれを受け取って!アンディの大切な宝物よ。落としては駄目なの。貴方に出来る?』


少年に出来る?は徴発だ。この年頃の少年ならば答えは1つ。



『うん!任せて!』


ロイは両手で小さなカゴを作り娘の元へ行くと娘は最大に手を伸ばしてロイの手のカゴへそっと落とした。

喜ぶロイとアンディの横に、耐えられなくなった枝とともに娘は激しく落下した。



『『大丈夫?』』

ロイとアンディが慌てて娘に駆け寄ると娘はヒョイと立ち上がると

『鈍ったわね。』

戯けてみせた。


『ありがとう!』


アンディの言葉に娘は頷くとロイに向かって


『ロイ、どうしてアンディの首飾りを投げたりしたの?』


ロイは思い出したかのように俯くと


『謝ればいいんだろ?』


少し不貞腐れた。娘は不思議そうに


『ううん。何故謝るの?悪くないなら謝る必要なんて無くない?私はただ訳が知りたいだけよ?』


ロイは俯きながら


『ただ、アンディと遊びたかっただけ…でもアンディはいつもソレを見つめながら寝転んでいるからソレが無ければ一緒に遊べるかとおもったんだ。』


『そっかロイはアンディと遊びたかったのね?でもアンディの大切な物が無くなればアンディか悲しむとは思わなかった?』



ロイは少し上目遣いで娘を見ると


『そこまで考えてなかったや…ごめん』 


娘は嬉しそうにアンディを見ると


『アンディ、聞いたわよね?ロイの気持ち。今のごめんはアンディの心が軽くなるごめんでしょ?』


アンディは娘の言葉に笑顔で頷くと


『ロイ、ごめん。せっかく遊ぼうって誘ってくれてたのに、僕は断られるロイの気持ちを考えてなかったよ!』


アンディが謝るとロイもまた謝り、そしてまたアンディも謝ると娘は呆れたように

『もう、意味の無いごめんになってるわ!ごめんは心からでないと相手に響かないの。分かった?』


二人は顔を見合わせると恥ずかしそうに笑った。







その様子を見守っていたこの国の王太子らもお互い顔を見合わせると照れた様に微笑んだ。








しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』

放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。 「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」 身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。 冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。 「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」 得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。 これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。

【短編】記憶を失っていても

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
 7年以上前の記憶のない平民出身のラチェルは、6年前に娘のハリエットを生んでからグリオス国のアンギュロスの森付近の修道院で働きながら暮らしていた。  そんなある日ハリエットは見たことのない白銀色の大樹を見つけたと、母ラチェルに話すのだが……。  これは記憶の全てを失ったラチェル──シェシュティナが全てを取り戻すまでのお話。 ※氷雨そら先生、キムラましゅろう先生のシークレットベビー企画開催作品です( ´艸`)

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

結婚5年目のお飾り妻は、空のかなたに消えることにした

三崎こはく
恋愛
ラフィーナはカールトン家のお飾り妻だ。 書類上の夫であるジャンからは大量の仕事を押しつけられ、ジャンの愛人であるリリアからは見下され、つらい毎日を送っていた。 ある日、ラフィーナは森の中で傷ついたドラゴンの子どもを拾った。 屋敷に連れ帰って介抱すると、驚いたことにドラゴンは人の言葉をしゃべった。『俺の名前はギドだ!』 ギドとの出会いにより、ラフィーナの生活は少しずつ変わっていく―― ※他サイトにも掲載 ※女性向けHOT1位感謝!7/25完結しました!

料理がマズいと言われ続けて限界がきたので、もっとマズいものを作って差し上げたら旦那様に泣かれてしまいました

九条 雛
恋愛
和平の証として魔族の元へと嫁がされたエルネットは、作った料理が不味いと毎日なじられ続けていた。 それでも魔族の慣わしとして、家族の口へと入る料理は彼女が作らねばならないらしい。 侯爵家の令嬢で、料理をしたことがなかった自分が悪いのだと努力を続けるエルネットだったが、それでも夫は彼女の料理を不味いと言い捨て、愛人の元へ通いに行くと公言する。 ほとんど限界を迎えていた彼女の中で、ついに何かがプツリと切れた。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

【完結】言いつけ通り、夫となる人を自力で見つけました!

まりぃべる
恋愛
エーファ=バルヒェットは、父から十七歳になったからお見合い話を持ってこようかと提案された。 人に決められた人とより、自分が見定めた人と結婚したい! そう思ったエーファは考え抜いた結果、引き籠もっていた侯爵領から人の行き交いが多い王都へと出向く事とした。 そして、思わぬ形で友人が出来、様々な人と出会い結婚相手も無事に見つかって新しい生活をしていくエーファのお話。 ☆まりぃべるの世界観です。現実世界とは似ているもの、違うものもあります。 ☆現実世界で似たもしくは同じ人名、地名があるかもしれませんが、全く関係ありません。 ☆現実世界とは似ているようで違う世界です。常識も現実世界と似ているようで違います。それをご理解いただいた上で、楽しんでいただけると幸いです。 ☆この世界でも季節はありますが、現実世界と似ているところと少し違うところもあります。まりぃべるの世界だと思って楽しんでいただけると幸いです。 ☆書き上げています。 その途中間違えて投稿してしまいました…すぐ取り下げたのですがお気に入り入れてくれた方、ありがとうございます。ずいぶんとお待たせいたしました。

処理中です...