絶世の悪女と呼ばれる公爵令嬢【完】

mako

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学園生活

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楽しみにしていた学園生活初日、憂鬱な表情のエミリアを見てテオドールが声を掛けた。


『お嬢様、どうされました?あのサルはもう帰られましたし何がお困りなのです?』


朝食の進まないエミリアはテオドールを睨みつけると

『乙女心の分からない男ね』


八つ当たりである。


『乙女心?乙女がこちらに?』

嫌みをぶっこむテオドールに笑顔を向けると


『分かった分かった。悩むなんてらしくないものね。当たって砕けろよ。』



テオドールは思わず


『砕けられては困りますからね?』


そう言うとエミリアのコップにオレンジジュースを注ぎ促した。それを一気に飲み干すといつものエミリアに戻り学園へと出陣である。



クラスに入ると、王女や令嬢が既に席についていた。ぐるりと見渡すと流石は王女といったオーラをガンガン醸し出す王女や王太子妃となるのであろう令嬢が『何か?』とでも言いかねない雰囲気で座っている。思わず苦笑いになるエミリアは内心何故か安堵した。


…これなら絶世の悪女も霞むわね。


エミリアは憂鬱も忘れて心が軽く弾んでいた。


エミリアの隣には、見た所恐らくは王女と思われる美しい女性が席についていた。

『失礼いたします』

エミリアは声を掛けて隣に座るとその女性は小さく微笑む。

『初めまして、バルトス王国のマリア・バルトスと申します。短い間ですが宜しくお願いしますね。』

エミリアに握手を求めた。もちろんエミリアも手を差し出すと

『マドリン王国のエミリア・フォン・ヒルツベルトと申します。こちらこそ宜しくお願いします』

こちらは大きく微笑んでみせた。


『ヒルツベルト公爵家の?』


マリアは驚いたようにエミリアを見た。


…?何か?



『ええ、ご存知ですか?』


マリアは嬉しそうに


『ご存知も何も、お母様にはお世話になってますのよ?』


『母に?』

マリアは目を輝かせながら母との話しを語りだした。どうやらエミリアよりも近い存在のようだ。



『まぁ、それはそれは。世間は狭いんですね?』


エミリアは何となく心が弾んだ。


…マリア様とは仲良くなれそうね


留学初日はあっという間に終わりエミリアは安堵しながら帰路についた。


翌日からは自由に選択出来る授業となっていた。エミリアはせっかくだからこのリア王国の歴史を選択し数人のグループで学ぶ事になる。


エミリアはリア王国での留学の魅力は何と言っても自由。形式ばった自己紹介も無ければ、何かを強制されることも無い。自分がどこの誰かも関係なく1人の生徒として学びたければ学ぶも良し、遊びたければ遊ぶも良し。現にリア王国の観光地をまわって帰っていく者も居れば、貪欲に学びその後も尚学び続ける者もいるという。


エミリアはそのどちらでもないがせっかくの自由なのだから今しか経験できない事に焦点を当て日々を過ごしていた。

歴史を学ぶグループは、一日のほとんどを図書館で過ごしている。こちらも自由でたまたま図書館で集まってはいるが時間も好きな時に訪れ好きな時に帰る。それでもより深みを学ぶうちに欲求が増し誰もが早くに来て遅くまで集中している。


この日は朝から図書館に詰めていたエミリアは午後になり集中力が散漫している為、学園の裏にある森へと散歩に出ていた。


広がる芝生を目を奪われ、エミリアは辺りを見渡した誰も居ない事を確認すると、ゴロンと寝転び伸びをした。
見上げる空には雲ひとつ無く、起き上がると眼下には王都が広がる。辺りを見渡せば並ぶ木々。そこに流る小鳥のさえずり。


『最高なんだけど~?』

思わず声に出すエミリアの後ろから


『それはどうも。』


…。エミリアはハッと息を飲むとその声の主はエミリアの隣に腰を下ろした。


『ようこそ、我が国へ。エミリア嬢』


リア王国王太子のご登場である。


エミリアは言いたい事は山程あるがとりあえずは笑顔で

『初めまして、王太子殿下。』


…。

ジルベルトは笑顔のまま


『ジルベルトだ。』



エミリアは平然と


『王太子殿下は王太子殿下ですわ。』


ジルベルトは芝生に横になると少し笑いながら

『なに?外れたから拗ねてるの?』


エミリアはあからさまにジルベルトを見ると


『ずるいわ!そもそもね、王太子ならあんな所で遊んでなんてないし、まして屋台に並ぶなんてしないわ!』


ジルベルトは平然と


『でも実際並んでたよね?』


肩を震わせる笑っている。


『でも引き分けだわ。貴方こそ私をデビュタントの前の令嬢だと言ったわ!』


ジルベルトは起き上がるとエミリアを見て


『いや、大人っぽいデビュタント前と言った。それにこの国の令嬢ならば私が知らない訳がない。知らないとなればデビュタント前かと思っただけだよ?少しは加点が貰えるんじゃない?』

 エミリアは少し頭を巡らし

『いいえ、ご自分が知らないからデビュタント前だなんて短絡的過ぎるわ。だって国際留学会の時期なのよ?他国の線も考えるべきだわ!』



ジルベルトも納得したように


『…うん。それは一理あるね。』



その言葉にエミリアは勝ち誇ったかのように頷くとジルベルトを気にせず芝生に寝転んだ。


…やっぱり最高なんだけど?ここは。





『ねえ、なぜ晩餐会の時あんなだった?』



エミリアは怪訝そうにジルベルトを見ると


『あんなって何?』


『…うん?君らしく無いっていうか…』



…君らしくって何?あんた私を知らんだろうがよ?


エミリアは黙ったままジルベルトの言葉を待つ。



『ってかさ、あの王太子は君の婚約者なんだって?』



…。うわぁこいつ。嫌なこと思い出させるのね?


『そうみたいですね。』


エミリアは立ち上がるとスカートを整えるとジルベルトに背を向けた。


『そうみたいって君の事だよね?』


見上げるジルベルトにエミリアはあからさまに嫌な顔をしながら


『マドリン公爵令嬢としてお答えすればよろしいのかしら?それともただの留学生として答えても?』


驚いたジルベルトは


『もちろん、私の知ってるエミリア嬢に聞いている。』



エミリアは大きく息を吐くと



『いい?この国であのサルの話しを出さないで!婚約者って言っても貴方も分かる様に幼い頃から決められてるんだから私の力ではどうにもならないの!ここに居る間だけでも私らしく居たいの。』


一気に吐き出すエミリアを見てジルベルトは固まりながらも


『わ、悪かった。』


エミリアは自然な笑顔で


『うん、その謝罪はこちらの心が軽くなる本物ね。有り難く頂くわ!』



エミリアはそう言うと踵を返して図書館へ戻って行った。


…。

ジルベルトはただ呆然とエミリアの後ろ姿を眺めていた。











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