絶世の悪女と呼ばれる公爵令嬢【完】

mako

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ちょっと遅い成長期

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エミリアはいつものように少し遅い時間にランチに向かった。学園ではランチも自由なのでエミリアはいつもランチボックスを持参しているのである。


遅い時間なのであまり混み合ってはいないが渡り廊下まで来ると何だか騒がしく賑やかである。エミリアはそちらを眺めるとまるで推し活の様に令嬢たちが我先にと反対側から歩いてくる、リア王国の王太子とその側近らに押し寄せていた。
 
…どこの国でも同じなのね(笑)


エミリアは辟易としながら眺めているとマドリン王国とは異なり王太子は無表情である。後ろの側近こそ申し訳なさそうに苦笑いを送っている。エミリアはふとヨハネスの顔が浮かんできた。ヨハネスならばまるで絵本の中から飛び出してきたかのような笑顔を撒き散らし、何なら手まで振ってみせるのである。エミリアはゾッとし首をブンブンと振り、エミリアの秘密基地まで急いだ。


…今日のランチボックスは何かしら





エミリアは図書館の裏の山まで来るといつものように正座をしてランチボックスを頂く。開けた瞬間に広がる色鮮かな光景は毎日見ても感動の連続である。



『頂きます!』


エミリアは大好きなBLTサンドを頬張ると自然に笑みが溢れる。



『遅いお昼だね!』


エミリアは固まるとゆっくりと振り返る。先程まで令嬢の渦の中に居た3人が微笑んで歩いて来るのが見えた。


…なんだ、びっくりしたわ。



エミリアは気にせず尚も頬張る。

3人はエミリアを囲んで座るとケイダンは先ず以てランチボックスに驚いていた。



『カフェテリアには行かないの?』


ジルベルトが問うと


『あそこは気を使わなければならないもの。』


…。


ハロルドは不思議そうに


『公爵令嬢でも気を使うの?』


エミリアは怪訝そうにハロルドを見ると


『公爵令嬢だからでしょ?ここなら何も気にせず食べられるもの。』



『っていうか何故正座なの?』

またも問うハロルドにエミリアはまたも少し睨みつけ


『神聖なる食事中なのよ?』


『神聖なるって…』


ハロルドは呆れたようにエミリアを見る。


『あら、神聖なるよ。だって全ては民が丁寧に作ったお野菜や、お肉なんて私達と同じ生き物の命よ?感謝しなきゃって、あなたさっきからランチボックスを眺めているけど食べたいの?』


エミリアはケイダンに声を掛けた。ケイダンは慌てて首を振ると


『いやいや、そうではなくて君ひとりでこんなに食べるの?』


…。


エミリアはランチボックスを眺めて


『…だからカフェテリアでは足りないのよ!』


そう言うと美味しそうに頬張るエミリアは口をいっぱいにして微笑んでいる。驚きエミリアに釘付けになる3人に


『今、私は少し遅い成長期なのよ。』


…。


『かなり遅い成長期なんだね。エミリア嬢…。』


少食なケイダンは苦笑いをしながらエミリアを眺めている。


『まぁ、食べてごらんなさい。美味しいから!』


エミリアに促されるとジルベルトとハロルドは一切れをつまんで口に入れた。味わう前にエミリアは


『ね?美味しいでしょ?』


覗き込むエミリアにジルベルトは真っ赤になり頷いた。


『マドリンではランチボックスがデフォなの?』


ハロルドはエミリアのスープまで頬張ると 

『…。さぁ、どうかしら』


エミリアの歯切れの悪さから察知したハロルドは


『カフェテリアがデフォだね、これは。ただエミリア嬢のお腹は満たされないって事だね。』


『…。っあ、そう言えば貴方、王太子ならばもっと笑顔を振り撒かないと駄目よ。人気商売なんだから』


エミリアは思い出したかのようにジルベルトに言うとハロルドはスープを片手に



『いやいや我が国の王太子はコレでも学習してるのだ。王太子が笑顔を撒き散らせば勘違いをする令嬢が増えるだろ?要らぬ争いの種は撒かないに限るんだ。』



ジルベルトもバツの悪そうに頷くとエミリアは首を傾げながら


『そういう考えもあるのね…。ただ、令嬢なんてそれが無くても勘違いもするし争いなんて大好物じゃない?』


エミリアは大きく息を吐くと立ち上がり眼下の景色を見ながら深呼吸をした。


『やっぱりここは最高ね』


エミリアは振り返りランチボックスを片付けるとご機嫌となり山を下りて行った。



その後ろ姿をリア王国王太子と側近らは和やかに見送った。



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