絶世の悪女と呼ばれる公爵令嬢【完】

mako

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久々な時間

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嵐のように2人が去ると、エミリアは不思議そうにヨハネスを見つめた。目の前にいる王太子はかつての婚約者である。良く知っているはずのヨハネスだがどこか遠い感じがしたのである。


『エミリア、君は変わったね』

穏やかに微笑むヨハネスにエミリアもまた


『殿下も何か変わった気がしますわ。』


2人はクスクスと笑いながら


『殿下はいつも王太子スマイルを無駄に振りまいていらっしゃいましたので心内が分かりませんでした。ですがハロルドとは親密になさっておられる様ですね?』


ヨハネスはニヤリと笑うと

『ハロが何か言ってるな?』


エミリアは静かに微笑み首を振る。


『いいえ、寧ろ逆ですわ。何も話しませんもの。殿下の私室に行ったとの話しから私はあの迷宮のカラクリを聞きましたのよ?』


ヨハネスは笑い


『あれはハロにも解明できていないだけだよ!』


『いいえ、それだけではありません。私がマドリン公爵令嬢として知り得た事は死ぬまで漏らさぬ様に彼もまたプラベートで知り得た事は何一つ話しませんわ。』



『そうかな?まあそんな機密には触れてないだろうけど?』



エミリアは嬉しそうに微笑むと

『いいえ、ハロルドは私が公爵令嬢として過ごしてきた時間をほんの短い時間で越えていきましたわ。それは彼の情を揺さぶったということ。私は絶世の悪女でしたからね?』


クスクスと笑うエミリアを見てヨハネスは


『君は本当に変わった…というかそれが本来の姿なのか?』


少しさみしそうなヨハネスにエミリアは


『フランチェスカ様はどうなさるおつもりですか?』


『どうしようかね。どうしたらいいと思う?』


ヨハネスはソファから立ち上がると窓辺から外を眺めた。


ヨハネスの後ろ姿に語りかけるように


『さあ、どうでしょう。フランチェスカ様に限らず殿下が心内を話せる方、殿下が素のままで居られる方との御縁があればと切望しておりますわ。殿下、絶世が悪女が自信を持って言える事は1つ。素のままで居られると景色の色が変わりますわよ?モノクロだった景色が色付くのです。』


振り返るヨハネスは美しく微笑むエミリアを初対面のように思えた。


…エミリアはこんな顔をして笑うのか。


ヨハネスはただただ微笑むしか無かった。


『ところでエミリアはフランチェスカ嬢とは?』



エミリアはバツの悪そうに顔を顰めて


『時効ですよ?』


ヨハネスは興味を掻き立てられるとソファに舞い戻り腰を下ろした。


『私の家は家族が揃うコトもほとんど無く私は執事に育てられたようなもの。よく執事を従えて山に登りましたわ。山には大きな木が茂り、活力の源ですわ!』


先の見えない話しにヨハネスは何と無く相槌を打つ。


『大きな林檎の木。あれに登りたくて登りたくて。もちろん執事に取り押さえられますわよね?』



…何やってんだよ。我が国の公爵令嬢は…。


ヨハネスは頭を抱えながら上目遣いでエミリアを見るもエミリアはお構い無しに懐かしそうに話す。


『そんなある日、先客がおりましたの!私と同じようにドレスを身に着け、あろう事か林檎が一番早くに熟す上方にサルのようにスイスイと登って行くではありませんか!ワタシは先を越された怒りを執事にぶつけましたわ!』



思い出しながら興奮するエミリアに目を丸くしているヨハネスに尚も


『その令嬢こそフランチェスカ様ですわ!』


ヨハネスは驚くオチにソファから転げ落ちそうになるも


『まさか?』


恐る恐るエミリアを見ると興奮覚めやらぬ様に



『殿下!皆仮面を付けておりますのよ!令嬢たるもの。私が絶世の悪女であるように。』


納得するかのように頷いたエミリアは


『私はこの国に留学に来た初日に孤児院の子どもが投げ出したペンダントを取る為に木に登りましたの。これもフランチェスカ様のおかげですわ!』


…留学初日って、何やってたんだよ。マドリン王国王太子の婚約者の身でありながら…。


ヨハネスは心の声を押し込めた。


『その様子をジルに見初められ、今がありますのよ?素のままがどれだけ大事がご理解頂けました?』


…。納得した様なしていない様な。


ヨハネスは初めて見る生き物のような目でエミリアを見るとエミリアは得意気に両手を腰に当てて偉ぶった。





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