絶世の悪女と呼ばれる公爵令嬢【完】

mako

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決着の時3

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息を切らすマリアにジルベルトは冷たい眼差しを送るとガタガタ震えるドナウアー公爵に視線を移した。


『ドナウアー公爵。これから偽装印について調べが本格化すればすぐにわかる事だ。出版業者を束ねる公爵家にも、もちろん調べは入る。王族印の版は唯一無二だ。それを模倣する技術は一般人には出来ないからね。』


ドナウアー公爵派もはや子犬のような瞳をしている。

『でも公爵の力だけでは無理だよね?何せ金が掛かりすぎる。我が国において模倣を作るのは無理だ。他国それも秘密裏に進めるとなると裏社会だ。闇の業者は足元をみるから驚くほど高額であろうな?』




ジルベルトはそれだけ言うとドナウアー公爵を凝視していた。そんな時、広間の重い空気とは裏腹に軽いエミリアの声が発せられた。


『でも、王族印の模倣の厳罰は各国共通ですわ?いくら何でも公爵がそんな事もご存知ないなんて有り得ます?というか公爵でなくてもそんな事、子どもでも知ってますわよ?』


…。

エミリアは首を捻りしばらく考えてから


『まさか公爵は脅されていたのかしら?だってそうでしょう?でなければこんなアホな事やらかします?』



ドナウアー公爵はエミリアの言葉を援護と捉えたのかその場に項垂れた。


『ニコルは、ニコルは私たちにとってやっと授かった天使でした…。媚薬の件で修道院に入っていたとしても我が国においてあの媚薬は重罪。生きているだけで我々にとって、殿下の恩情に感謝してもしきれない程でした。』


…。


『ですがそのニコルが、ニコルが処刑されるときいて…。もちろん1度は覚悟した処刑ですが、生きている事だけを我々夫婦は毎日の生甲斐としていましたので助けられるのならばと思い…申し訳ありません…。』


『待って、どなたが処刑されるのかしら?』


エミリアの言葉にドナウアー公爵は


『え?ニコルですが。』


『どうして?』



『どうしてって…違うのですか?』


ドナウアー公爵はジルベルトを見ると


『私はそんな命令など出していないし、許可もしていないが?そして此度マドリン王国王太子殿下自らがニコル嬢の減刑にここまでいらしているのだが?』


『減刑…。』

ドナウアー公爵の呟きにヨハネスは


『そうだよ。あれは我が国王族の責任でもあるからね?ただ踊らされたニコル嬢には減刑をと思ってね。もちろん公爵令嬢ながらの無知は罪だからそれは償ってもらわないといけない。

公爵令嬢として良き相手との婚姻などは難しいだろうがせめて修道院ではなく公爵邸に戻って、王国のために尽力してもらいたいと思ってたんだ。』


ドナウアー公爵はヨハネスの言葉に涙を流しその場に座り込んだ。


『私が…私がバカだったのですね。ただニコルを遠くから見守っていただけであれば、我が家に戻る事が出きたというのに…』


『で?誰がニコル嬢が処刑だと? 』


ジルベルトの問いかけにドナウアー公爵は立ち上がると最上級の礼を取り、嘘偽りの無い事を示した上で


『バルトス王国王女より聞き及びました。王女はニコルの為に大枚を叩いて版を作って下さいました。』


『何を言っているの?知らないわよ?デタラメ言わないで!』


マリアの言葉を無視しヨハネスは


『アチャチャ…親子揃って踊らされちゃたね。』


額を手で覆うと


『だから話しを聞きなさい!私は知らないって言ってるでしょ!』



『君ね、さっきからうるさいよ。』


ヨハネスはマリアに苦言を呈すと広間にようやくマグヌスが現れた。マグヌスを確認するとヨハネスは


『マグヌス遅いよ…で?大丈夫?』


ヨハネスの問いかけにマグヌスは公共の場に相応しい笑顔を貼り付け


『もちろんです。』 


マグヌスと言葉と共に騎士団に保護されたニコルが現れた。ニコルの痩せ細り灰人のような姿にドナウアー公爵は目を見開き

『ニコル!』 


ニコルに駆け寄るもニコルは力なく微笑んでいる。


『部屋を用意しろ!まずは医者に見せてくれ』


ジルベルトは素早く指示を出すとエミリアは侍女らを呼び出し自らついてニコルと共に部屋を出て行った。



…。


驚きを隠せないマリアにヨハネスは


『そもそも君ね、我が国が何の手も打たずに罪人である君を開放するわけないでしょ?君がどこで何をしているかなんて全て我々の監視下にあるんだ?

にしても君は王女でありながら勤勉ではあるけれど無知にも程があるよ。隣国で版を作らせるなんて普通しないよ?』 

王族印の原版を手にするヨハネスに


『私を嵌めたの?』


『びっくりする事言わないでくれるかな?嵌めるも何も先に償いもせず放免となり自由気ままに生活していたのは君だよね?』


…。


『自由気ままだなんて、私は好きで王女になった訳ではないわ!王族なんてくそ喰らえだわ!』



『甘えるな!』


声を張り上げたのはまさかのヨハネスである。ヨハネスは絵本の中の王子様そのものな容姿であり、マグヌスでさえヨハネスが怒る所を見た事がない。 

『母上が言っておったように君には王族としてプライドがないのか?だれも王族に生まれたくて生まれてくるわけではない。もちろん平民に生まれたくて生まれてくるわけでもない。誰もが生まれてきたその環境で勝負していくしかないのだ!』



ジルベルトは静かに頷くと


『では君は、平民なら良かったのか?』


マリアは顔を顰めて


『嫌よ!』


『ならば公爵令嬢あたりか?貴族でも上位になればなるほど自由はなく王女とあまり変わらない。

子爵令嬢あたりか?それならば上位貴族の顔色を伺いながら時に侍従になってお世話などもするぞ?今みたいに上等なドレスも纏えないけど?』



『…。』



『君はただの駄々っ子と同じだね。だけどさ君の行いで1つ王国が消えてしまうかもしれない事実を理解している?』 


ジルベルトの言葉を理解出来ないマリアは


『大袈裟ね、脅すつもり?』


ヨハネスは驚いたように


『嘘だよね?本当にわからない?だって君は我が国で罪人となり国王の力でギリギリ放免されて、すぐにリア王国でやらかしたんだよ?

それも王族印の模倣だ。エミリアの言ってた通り重罪すぎて誰もがしないような事だよ?だって王族印の模倣なんてどこの国をも敵にまわすからね。国際的にも許されない事なんだ。流石に国王も無事では居られないさ。』


マリアは顔色を無くし


『そんな事知らなかったわ』


『知らなかったでは済まないけどね。』


ヨハネスは冷たく言い放つと踵を返してソファに腰を下ろした。




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