記憶を無くした公爵夫人【完】

mako

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アルベルタという人間

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それから2人は今までの時間を取り戻すかのように2人での時間を大切にしていた。

アルベルタは本来のアルベルタとなり夫人としての仕事もしっかりとこなし公爵邸は活気溢れる毎日であった。






『レオ、その後どうだ?』 

アランは執務室で山のように積み上げられる書類に目を通しながらソファに寝転ぶ側近に声を掛けた。

『まあ、普通に幸せ?』


アランは立ち上がりソファに移動すると


『ならばこんな所で横になってないで仕事をしてくれ。何故私があれ程の書類と格闘しておるのにお前はここで横になっているのだ?』

レオンハルトはニヤリと笑う。


『そうだ、アランの婚約者は決まったのか?』
 
アランはレオンハルトを睨み


『なんだよ、思い立ったかのように。どこからその話に飛んだ?』

『いや、アランは人が良すぎるからね。すぐに人に譲る癖がある。』


『‥。なんだよそれ。』


『そもそも1番最初にアルベルタに目を付けたのはアラン、お前であろう?第1王子が目を付けたのを知り自分の思いに蓋をしたんだ。まあ、それが回り回って私の手の中に入ったが。』


‥。アランは黙ったままレオンハルトを見る。


『誰でも分かるよ?第1王子もアーノルドさえもね。分かってないのはアルベルタ本人だけだ。』

クスクスと笑うレオンハルトを睨み付け


『わかってるなら幸せにしてくれな?』
 

『ああ、でもそうしたら第1王子はいつまで経ってもアルベルタを手に出来ないけどってまあ、もう無理だけどね。』


アランはレオンハルトの話す意図を理解し


『‥そうか。兄上の事なら気にするな。アーノルドがついているから。』


レオンハルトは少し驚き


『辺境へ行かせるのでは?』


アランは小さく笑い


『まさか。そんな勿体ない事はしないよ?あれはあくまでお前の為という、アルベルタの為だからね。』


レオンハルトも小さく笑い


『お前ってヤツは‥成就しない愛の為に‥』


アランは真顔で返す


『成就を望まないからこそ愛であろう?』


レオンハルトはアランの婚姻がまだまだ先になる事を否が応でも知ったのである。


レオンハルトが屋敷に戻ると多くの使用人と共にアルベルタが迎えてくれる。

アルベルタはレオンハルトに駆け寄り

『おかえりなさいませ』


屈託ない笑顔に癒やされるレオンハルトはアルベルタの腰を抱き屋敷に入っていく。


その様子を見守るセバスチャンと使用人。


お人形の様なアルベルタが真実の愛に巡り合い公爵邸の要となる。

そしてまた、真実の愛など興味もなかったレオンハルトがアルベルタに出会い、味わった事のない幸福感に満たされる物語。


2人の出会いは王子兄弟の長年の絡み合う糸を解き、アーノルド兄妹の濁った関係性を透明感溢れるものとした。


お人形と揶揄されたアルベルタはもうどこにもいない‥。




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