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考えるアナベル
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アナベルにとって退屈で窮屈な王宮生活も慣れてきた頃、いささか雲行きが怪しくなってきていた。
王太子であるライドがあのエレナ・シャニオンにご執心というのだ。社交に疎いアナベルであってもエレナ・シャニオンが王太子妃になる事難しい事は分かる。がしかし、ライドとエレナの距離はここに来て一気に縮まっていることだけは、アナベルにも分かるほどであった。
初めこそ物珍しさからくるものだと捉えられていたその光景が日々エスカレートしていくのに時間は掛からなかった。
…頭ん中、脳みそ入ってんのかしらあの馬鹿王子。
王太子妃など元より1ミリの興味も無かったアナベルではあるが、これはこれでマズイ。安寧な国家の元、保証されている引きこもり令嬢。その土台が傾かれては困るのだ。
この状況に危機を感じているのはアナベルだけではなかった。
王太子妃を夢見る令嬢らは勿論、政治的に必要とされここに参加している王太子派閥の公爵令嬢マリアンナもその1人である。そしてその背後には3つの派閥が複雑に絡み合っているのだ。
それを嘲笑うかのように今日もライドとエレナは楽しそうに中庭でお茶を飲んでいるのがアナベルの部屋からも見えた。
…確かに絵にはなるわ。
まるで絵の中の幸せそうな2人を鑑賞していると何か違和感を感じたアナベル。何がと言われても困るが何かが違う。
曇ったまま晴れない頭をブンブンと振るとアナベルは
『だいたいね、馬鹿にしてるわ。王太子妃教育というのに教育どころか令嬢の力を測るだけで、そしてその王太子は王太子妃選考中というのに呑気に楽しそうに1人の令嬢とイチャコラしちゃって!なら他の令嬢を解放しなさいよ!って話だわ。』
アナベルは心の声をダダ漏れにして振り返ると部屋のソファにミハエルが腰を下ろしている。
『で、殿下!な、何しておいでですか?!』
笑いを堪えて肩を震わすミハエルは目を見開くアナベルに
『何ってここで君の心の声を聞いていただけだよ。ちなみに私の名誉の為に言うけどノックはしたからね?』
…。
『で?第3王子派のヴィヴォワール家のご令嬢は部屋で王族の文句を吐き出しているだけで今日も自習をサボってるの?』
『サボってなんておりませんわ。あれはあくまで自主参加ですもの。』
『必要無いって?そんなに満点を揃えてたっけ?』
…ってか満点取る意味ありますか?
アナベルの成績は悪くは無いが『優』程度で
『最優』ではない。
『私なりにやっておりますわ。』
『全く、あぁ言えばこう言うね。だけどさ、言った通りだろ?兄上は平民上がりの男爵令嬢がお好みだって。そこに私情を挟まない?挟みまくっているから怒ってたんだろう?』
…めんどくさい男ね。
『怒ってなんておりませんけど…』
アナベルはミハエルの痛い視線を受け俯いた。
そしてアナベルには1つの疑問が湧いてきた。俯いていた顔を上げるとミハエルを真っ直ぐに見据え口を開いた。
『殿下、1つよろしいですか?』
ミハエルは首を傾けると
『珍しいというか初めてじゃない?アナベル嬢からの問いかけなど。うん、どうぞどうぞ。』
…引きこもってましたからね?
『殿下は王太子を見据えておられるのですか?』
アナベルのストレートの問いかけを鼻で笑うと
『いきなりどうしたの?いくら社交に疎い公爵令嬢でも我が国を今導いておられるのは父である陛下と兄上だ。彼らのお陰で今、安寧がもたらされている事は分かるであろう?』
『勿論にございます。でしたら殿下は余程暇なのですか?』
ミハエルは飛躍した話しに天を見上げると
『どうしたらその思考になるかな?私はこれでも王位継承権がある第3王子だよ?』
『勿論ですわ。そのお忙しい御身、王宮に集められている第3王子派の令嬢は私だけではございません。ご丁寧に3派閥均等に集められておりますもの。その令嬢全てにこのようなコミュニケーションを取られているならば余程な事でございましょう?』
ミハエルは一瞬真顔になったがすぐに我に返ると
『ご心配ありがとう。君の言う通り私はこれでも忙しいんだ。そろそろは失礼するよ。』
ミハエルは軽やかに立ち上がると踵を返して優雅に開かれた扉を颯爽と通り抜けて行った。
アナベルはミハエルが一瞬見せた真顔の裏には何があるのかが気になりこの日は眠る事無く朝を迎えたのである。
王太子であるライドがあのエレナ・シャニオンにご執心というのだ。社交に疎いアナベルであってもエレナ・シャニオンが王太子妃になる事難しい事は分かる。がしかし、ライドとエレナの距離はここに来て一気に縮まっていることだけは、アナベルにも分かるほどであった。
初めこそ物珍しさからくるものだと捉えられていたその光景が日々エスカレートしていくのに時間は掛からなかった。
…頭ん中、脳みそ入ってんのかしらあの馬鹿王子。
王太子妃など元より1ミリの興味も無かったアナベルではあるが、これはこれでマズイ。安寧な国家の元、保証されている引きこもり令嬢。その土台が傾かれては困るのだ。
この状況に危機を感じているのはアナベルだけではなかった。
王太子妃を夢見る令嬢らは勿論、政治的に必要とされここに参加している王太子派閥の公爵令嬢マリアンナもその1人である。そしてその背後には3つの派閥が複雑に絡み合っているのだ。
それを嘲笑うかのように今日もライドとエレナは楽しそうに中庭でお茶を飲んでいるのがアナベルの部屋からも見えた。
…確かに絵にはなるわ。
まるで絵の中の幸せそうな2人を鑑賞していると何か違和感を感じたアナベル。何がと言われても困るが何かが違う。
曇ったまま晴れない頭をブンブンと振るとアナベルは
『だいたいね、馬鹿にしてるわ。王太子妃教育というのに教育どころか令嬢の力を測るだけで、そしてその王太子は王太子妃選考中というのに呑気に楽しそうに1人の令嬢とイチャコラしちゃって!なら他の令嬢を解放しなさいよ!って話だわ。』
アナベルは心の声をダダ漏れにして振り返ると部屋のソファにミハエルが腰を下ろしている。
『で、殿下!な、何しておいでですか?!』
笑いを堪えて肩を震わすミハエルは目を見開くアナベルに
『何ってここで君の心の声を聞いていただけだよ。ちなみに私の名誉の為に言うけどノックはしたからね?』
…。
『で?第3王子派のヴィヴォワール家のご令嬢は部屋で王族の文句を吐き出しているだけで今日も自習をサボってるの?』
『サボってなんておりませんわ。あれはあくまで自主参加ですもの。』
『必要無いって?そんなに満点を揃えてたっけ?』
…ってか満点取る意味ありますか?
アナベルの成績は悪くは無いが『優』程度で
『最優』ではない。
『私なりにやっておりますわ。』
『全く、あぁ言えばこう言うね。だけどさ、言った通りだろ?兄上は平民上がりの男爵令嬢がお好みだって。そこに私情を挟まない?挟みまくっているから怒ってたんだろう?』
…めんどくさい男ね。
『怒ってなんておりませんけど…』
アナベルはミハエルの痛い視線を受け俯いた。
そしてアナベルには1つの疑問が湧いてきた。俯いていた顔を上げるとミハエルを真っ直ぐに見据え口を開いた。
『殿下、1つよろしいですか?』
ミハエルは首を傾けると
『珍しいというか初めてじゃない?アナベル嬢からの問いかけなど。うん、どうぞどうぞ。』
…引きこもってましたからね?
『殿下は王太子を見据えておられるのですか?』
アナベルのストレートの問いかけを鼻で笑うと
『いきなりどうしたの?いくら社交に疎い公爵令嬢でも我が国を今導いておられるのは父である陛下と兄上だ。彼らのお陰で今、安寧がもたらされている事は分かるであろう?』
『勿論にございます。でしたら殿下は余程暇なのですか?』
ミハエルは飛躍した話しに天を見上げると
『どうしたらその思考になるかな?私はこれでも王位継承権がある第3王子だよ?』
『勿論ですわ。そのお忙しい御身、王宮に集められている第3王子派の令嬢は私だけではございません。ご丁寧に3派閥均等に集められておりますもの。その令嬢全てにこのようなコミュニケーションを取られているならば余程な事でございましょう?』
ミハエルは一瞬真顔になったがすぐに我に返ると
『ご心配ありがとう。君の言う通り私はこれでも忙しいんだ。そろそろは失礼するよ。』
ミハエルは軽やかに立ち上がると踵を返して優雅に開かれた扉を颯爽と通り抜けて行った。
アナベルはミハエルが一瞬見せた真顔の裏には何があるのかが気になりこの日は眠る事無く朝を迎えたのである。
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