反主流派の公爵令嬢ですが何か？【完】

安定のヴィヴォワール邸

『お嬢様！まさかとは思いますが抜け出して来られたのですか？』

息を切らして玄関に現れたのはルディ。

馬車からピョンと飛び降りる主を怪訝そうに見つめながらアナベルを迎え入れると、普段ならばルディの言葉に間髪入れずに跳ね返す言葉が返って来ない事に案じアナベルを覗き込んだ。


『お嬢様？』


アナベルはルディに視線を合わせると


『聞こえてるわ。貴方と遊んでいる場合じゃないの。』


何やら考え込みながら私室へ戻っていく主をルディは急いで追いかけた。





『何があったのですか？』


アナベルは面倒くさそうにルディを見ると

『あのね、勝手じゃないの。放免されたの。』


『ですから何をやらかして放免されたのです？』

眉間にシワを刻むルディの胸ぐらを掴むとアナベルはぐいっと自身の顔に近づけ威嚇する。


『私じゃありません！やらかしは王太子殿下！あの脳内お花畑殿下ですわ！』

苦しそうなルディをアナベルは思いきり突き放すとソファに沈んだ。


事の詳細を聞いたルディは１つ頷き


『で？お嬢様の見解は？』


アナベルは予想しない問いかけにコテンと首を傾げ

『見解？』


『はい、見解です。仮にも我が国３大公爵家の１つヴィヴォワール公爵家のご令嬢の見解です。』


『そんな事知らないわよ。ただね、今まで通りとはいかないって事だけは分かるわ。

だってそうでしょう？安寧の国家でこそ成り立つ私の身。うかうかしてると危ないわ。』



『でもまぁ殿下も今だけでしょう。麻疹みたいなものですよ。』


首を3度横に振るアナベルは


『いいえ、今回は良い勉強になったわ。王太子殿下にはがっかりよ。頭ん中はお花畑。頭かち割ってごらんなさい。花しか出てこないわよ。』


…かち割っちゃあいかんだろ？


『で？第2王子ね。騎士団長らしく鍛錬に励んでおられるわ。だけどね、我関せずよ。剣術にしか興味ないのね。あれこそ頭かち割ってみたら剣しか出てこないわよ。』


…だからかち割っちゃいかんし剣は流石に出てこねぇだろ（笑）


『極めつけは我が派閥、第3王子ね。言っちゃ悪いけど王族の品位の欠片も見当たらないわ。曲者感半端ないしね。そもそも今回の状況を楽しんでいるようにも見えるわ。そもそも気に入らないわ！』


…何で上からかな？


ルディはアナベルを呆れた視線で見つめているとアナベルは尚も


『今頃王太子派は大混乱よね？マリアンナ様確定だと思って動いていただろうから、いきなり現れた男爵令嬢に持ってかれてはたまんないわ。で、でよ？その男爵令嬢は第２王子派よ。その男爵令嬢を送り込んだのがどこの派閥かよね？』


『第２王子派でしょう？その令嬢が第２王子派ならば。』


『そうとも限らないわよ？マリアンナ様を阻止したいのは第3王子派も同じ事。それよりも大きな力が動いてるって事よね？だっていくら可憐な令嬢が居たとしてもその令嬢を王太子殿下が気に入るとは限らないもの。初めから王太子殿下と男爵令嬢が繋がってたらまた話は違うだろうけど。』



まるで推理探偵のような主の姿に呆れながら


…いつから推理探偵になったよ。


ルディは大きなため息を落とした。