反主流派の公爵令嬢ですが何か?【完】

mako

文字の大きさ
18 / 70

理不尽でないでしょうか?

しおりを挟む
ミハエルは昨日、言い過ぎた自覚はある。だからこそ茶会が終わるのを伺っていたのだ。


第3王子としてこの世に生を受けたミハエルはこう見えて公私の区別をはっきりと付けた出来る男である。だからこそ公爵家に生まれその存在自体が恵まれているにも関わらず、公爵令嬢としての責務を果さぬアナベルに思う所があった。

第3王子派とされるヴィヴォワール公爵家。ミハエルでさえ公爵邸で開かれる夜会の折に数回簡単な挨拶をした事があるのみ。それも何年も前の話。ここ数年は私室に引きこもり顔を見たのは数年ぶり。

コミュニケーションに問題があるのか?それとも容姿に問題があるのか?はたまた体が弱いのか?そのどれもが当てはまらない事を王太子妃選考会で確信した。ならば何故。


ミハエルはアナベルという令嬢に興味を抱き少々意地の悪い事を言ってしまった事を少しだけ後悔していたのである。



アナベルは重いまぶたをゆっくりと開くとぼやけていた視界が徐々にクリアになってきた。

『…!』

目の前に映し出されたその顔面にアナベルは起き上がろうとするも


『ったぁ。』


ミハエルはアナベルを静かに寝かせると


『そんなあからさまに嫌そうな顔をしないでくれよ。』


『そ、そんなつもりはございませんわ。ただ驚いただけです。』


アナベルも昨日の今日でバツが悪そうに横を向いた。

『ねえ、側妃は嫌なんじゃなかった?』 

『駒ですから』

ミハエルはため息を吐くと


『分かった分かった謝るから!』

『別にミハエル殿下が謝られる事はございません。本当の事をおっしゃったまで。』


…。


『ならば聞くけど、何故助けた?』


『何故?』


『そう、何故あのサルを助けた?あのまま刺されていたら君は側妃にならなくても済んだかもしれないのに。』


…。

何故?アナベル自体もよくわからない。何故だろう。じっくり考えているアナベルをミハエルは急がせる事なく静かに待っている。

『適切かどうかは分かりませんが強いて言うならご恩返しでしょうか?』


『恩?サルに?』


『いいえ、我がトゥモルデン王国にですわ。』

『…?』

『私は公爵令嬢としての務めを果たす事なく勝手をして参りました。それを咎める事無く自由にさせて頂けた事にですわ。』


『だからってサルは関係ないよね?』


アナベルは静かに首を横に振った。


『いいえ、彼女はこの国の王太子であるライド殿下の真実の愛でございます。その真実の愛が無くなれば殿下だけでなくこの国も打撃を受けると同じ事。だからでしょうか。私にもよく分かりませんわ。』


アナベルは力なく美しく微笑んだ。


…。


ミハエルは返す言葉が見当たらなかった。




長い沈黙を打ち破ったのはランドルフとライドの入室であった。ランドルフから事の経緯を聞いたライドは険しい表情で部屋に来るや、連れ添ったランドルフとミハエルを部屋から出し今の今までミハエルが掛けていた椅子に腰を下ろした。


『…が言った?』


アナベルは聞き取れない言葉に首を捻る。


『誰がエレナの護衛になれと言った!』


アナベルは目の前で見たことの無いライドの姿に声を失った。王宮内での事件であるため頭を下げるのか、大切なエレナを救った事に頭を下げるのならばまだ分かる。だが目の前のライドは険しい表情でアナベルをその鋭い視線で射抜いているのだ。アナベルは逡巡させながらも


『も、申し訳ございません。』


『謝ってほしいわけじゃない、何故かと聞いている。』


…何故って。


アナベルはライドの意図が分からず混乱しながらライドの怒りの矛先が自分であるという事は理解した。


…こっちこそ、何で?ですが?


まるで理不尽に叱られているようでアナベルは次第に怒りが込み上げてきた。

…全ては殿下の頭がお花畑な事に起因するんじゃないの?混乱を招いているのは貴方です!


怒りをそのまま視線に込めてライドを軽く睨見つけるとライドは大きく息を吐いてつぶやいた。


『良かった…』


…は?


アナベルは自分の頭を打ち所が悪かったのかと確かめるように頭を振った。

…大丈夫みたいだけど。


不思議そうにライドを見つめるとライドは小さく笑いそのまま部屋を後にした。



…何?何なん?


アナベルはライドの後ろ姿を見送りながら首をひねった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』

放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。 「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」 身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。 冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。 「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」 得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。 これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。

働かないつもりでしたのに、気づけば全部うまくいっていました ――自由に生きる貴族夫人と溺愛旦那様』

鷹 綾
恋愛
前世では、仕事に追われるだけの人生を送り、恋も自由も知らないまま終わった私。 だからこそ転生後に誓った―― 「今度こそ、働かずに優雅に生きる!」 と。 気づけば貴族夫人、しかも結婚相手は冷静沈着な名門貴族リチャード様。 「君は何もしなくていい。自由に過ごしてくれ」 ――理想的すぎる条件に、これは勝ち確人生だと思ったのに。 なぜか気づけば、 ・屋敷の管理を改善して使用人の待遇が激変 ・夫の仕事を手伝ったら経理改革が大成功 ・興味本位で教えた簿記と珠算が商業界に革命を起こす ・商人ギルドの顧問にまで祭り上げられる始末 「あれ? 私、働かない予定でしたよね???」 自分から出世街道を爆走するつもりはなかったはずなのに、 “やりたいことをやっていただけ”で、世界のほうが勝手に変わっていく。 一方、そんな彼女を静かに見守り続けていた夫・リチャードは、 実は昔から彼女を想い続けていた溺愛系旦那様で――。 「君が選ぶなら、私はずっとそばにいる」 働かないつもりだった貴族夫人が、 自由・仕事・愛情のすべてを“自分で選ぶ”人生に辿り着く物語。 これは、 何もしないはずだったのに、幸せだけは全部手に入れてしまった女性の物語。

裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。

夏生 羽都
恋愛
王太子の婚約者で公爵令嬢でもあったローゼリアは敵対派閥の策略によって生家が没落してしまい、婚約も破棄されてしまう。家は子爵にまで落とされてしまうが、それは名ばかりの爵位で、実際には平民と変わらない生活を強いられていた。 辛い生活の中で母親のナタリーは体調を崩してしまい、ナタリーの実家がある隣国のエルランドへ行き、一家で亡命をしようと考えるのだが、安全に国を出るには貴族の身分を捨てなければいけない。しかし、ローゼリアを王太子の側妃にしたい国王が爵位を返す事を許さなかった。 側妃にはなりたくないが、自分がいては家族が国を出る事が出来ないと思ったローゼリアは、家族を出国させる為に30歳も年上である伯爵の元へ後妻として一人で嫁ぐ事を自分の意思で決めるのだった。 ※作者独自の世界観によって創作された物語です。細かな設定やストーリー展開等が気になってしまうという方はブラウザバッグをお願い致します。

残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
公爵令嬢アンジェリカは六歳の誕生日までは天使のように可愛らしい子供だった。ところが突然、ロバのような顔になってしまう。残念な姿に成長した『残念姫』と呼ばれるアンジェリカ。友達は男爵家のウォルターただ一人。そんなある日、隣国から素敵な王子様が留学してきて……

【短編】記憶を失っていても

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
 7年以上前の記憶のない平民出身のラチェルは、6年前に娘のハリエットを生んでからグリオス国のアンギュロスの森付近の修道院で働きながら暮らしていた。  そんなある日ハリエットは見たことのない白銀色の大樹を見つけたと、母ラチェルに話すのだが……。  これは記憶の全てを失ったラチェル──シェシュティナが全てを取り戻すまでのお話。 ※氷雨そら先生、キムラましゅろう先生のシークレットベビー企画開催作品です( ´艸`)

【完】出来損ない令嬢は、双子の娘を持つ公爵様と契約結婚する~いつの間にか公爵様と7歳のかわいい双子たちに、めいっぱい溺愛されていました~

夏芽空
恋愛
子爵令嬢のエレナは、常に優秀な妹と比較され家族からひどい扱いを受けてきた。 しかし彼女は7歳の双子の娘を持つ公爵――ジオルトと契約結婚したことで、最低な家族の元を離れることができた。 しかも、条件は最高。公の場で妻を演じる以外は自由に過ごしていい上に、さらには給料までも出してくてれるという。 夢のような生活を手に入れた――と、思ったのもつかの間。 いきなり事件が発生してしまう。 結婚したその翌日に、双子の姉が令嬢教育の教育係をやめさせてしまった。 しかもジオルトは仕事で出かけていて、帰ってくるのはなんと一週間後だ。 (こうなったら、私がなんとかするしかないわ!) 腹をくくったエレナは、おもいきった行動を起こす。 それがきっかけとなり、ちょっと癖のある美少女双子義娘と、彼女たちよりもさらに癖の強いジオルトとの距離が縮まっていくのだった――。

王子様とずっと一緒にいる方法

秋月真鳥
恋愛
五歳のわたくし、フィーネは姉と共に王宮へ。 そこで出会ったのは、襲われていた六歳の王太子殿下。 「フィーネ・エルネスト、助太刀します! お覚悟ー!」 身長を超える大剣で暗殺者を一掃したら、王子様の学友になっちゃった! 「フィーネ嬢、わたしと過ごしませんか?」 「王子様と一緒にいられるの!?」 毎日お茶して、一緒にお勉強して。 姉の恋の応援もして。 王子様は優しくて賢くて、まるで絵本の王子様みたい。 でも、王子様はいつか誰かと結婚してしまう。 そうしたら、わたくしは王子様のそばにいられなくなっちゃうの……? 「ずっとわたしと一緒にいる方法があると言ったら、フィーネ嬢はどうしますか?」 え? ずっと一緒にいられる方法があるの!? ――これは、五歳で出会った二人が、時間をかけて育む初恋の物語。 彼女はまだ「恋」を知らない。けれど、彼はもう決めている――。 ※貧乏子爵家の天真爛漫少女×策略王子の、ほのぼのラブコメです。 ※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。

料理がマズいと言われ続けて限界がきたので、もっとマズいものを作って差し上げたら旦那様に泣かれてしまいました

九条 雛
恋愛
和平の証として魔族の元へと嫁がされたエルネットは、作った料理が不味いと毎日なじられ続けていた。 それでも魔族の慣わしとして、家族の口へと入る料理は彼女が作らねばならないらしい。 侯爵家の令嬢で、料理をしたことがなかった自分が悪いのだと努力を続けるエルネットだったが、それでも夫は彼女の料理を不味いと言い捨て、愛人の元へ通いに行くと公言する。 ほとんど限界を迎えていた彼女の中で、ついに何かがプツリと切れた。

処理中です...