反主流派の公爵令嬢ですが何か?【完】

mako

文字の大きさ
59 / 70

相変わらずですわ。

しおりを挟む
アナベルとエレナを乗せた馬車はゆっくりと進んでゆく。活気溢れる街の音がアナベルの耳に心地よく響く。


『アナベル様、あの頃は楽しかったですね!』


…。


エレナにとっては王宮での暮らしは夢のようであったかも知れないがアナベルからすれば、巻き込まれた感、半端ない日々であった。


『ところで朗報とは?どうされたのですか?』


まさかのまさかではあるがアナベルはカイン・カサンドラとエレナのツーショットを幾度か見ているだけに少し気になってはいた。カイン・カサンドラはこの世間知らずのエレナの手におえる相手ではない。


エレナはアナベルの気も知らずまるでサプライズを演出するかのように嬉しそうに微笑んでいた。


どれだけ走ったのであろう。街はずいぶんと遠くなってきた。


『エレナ様、そのカフェとはどこなのですか?』


エレナは少し気まずそうに俯くと


『カフェではないのです。あっ!でもカフェみたいなものなのです!』


…カフェみたいなもの?


『美味しいお茶も飲めますしね』


…お忙しいお茶ならば常日頃飲んでいますが?


宮殿のお茶に勝るものはなかろう。


アナベルがそんな事を考えているようやく馬車が停止した。エレナはすぐにピョンと立ち上がると扉を開けてピョンと降り立った。


…デジャヴだわ。まだピョンピョンやってる! 

アナベルは驚きながらも扉を降りようとすると目の前にはあのカイン・カサンドラがアナベルへと手を差し出した。驚き思わずカインを睨見つけたアナベルではあるが、エレナのようにピョンと降り立つ術など持っていない。それを分かっているかのようにカインはニヤリも口角を上げている。


…ムカつく奴ね。


アナベルはそっと手を取り、見知らぬ土地へ足を踏み出した。

エスコートされるアナベルの前をエレナはスキップを踏みながら歩みを進めていく。


…スキップ…懐かしいわ。

『ずいぶんと元気の良いご令嬢だ。』


カイン・カサンドラはアナベルを見つめながら微笑んだ。

…。


まさかのまさかであるのだろうか?この2人はどこで知り合いこうなったのだ?アナベルは隣のカインを見上げながら屋敷の中へと足を踏み入れた。見たところ誰も住んで居なさそうなそれでいて綺麗に整えられている。奥の部屋に通され促されるまま席に付くとエレナは嬉しそうに話しだした。


『アナベル様?以前の私は未熟で愚かでしたわ。公爵令嬢の貴女を側妃において男爵家の私が王太子妃だなんて、道理が通りませんもの。』


…王太子妃教育ではなくて貴族令嬢教育ね!


『ですから身をわきまえて今回はアナベル様が王太子妃で私が側妃に収まれば何の問題と無いでしょう?』


…何言ってんだ?


アナベルは真面目に心の中で問いかけた。


目をパチクリさせるアナベルは有頂天ぎみのエレナの空気を邪魔するのは本意ではないがやはり問いかけた。


『あの、王太子妃とは?どなたの?』


エレナは当然のように微笑むと


『まぁアナベル様ったら。カイン・カサンドラ様に決まってますわ。他にどなたがいらっしゃるのですか!』


…待て待て、話しがおかしくないか?


『エレナ様?私は皇太子妃ですのよ?カサンドラ王国とは関係などございませんよ?』


『今はまだそうですけど、これからそうなりますの!』


…いやいや勝手に決めるなよ。


2人の会話を微笑んで見つめて居るカインにアナベルは


『カイン様、何とかおっしゃって下さいまし!』


カイン・カサンドラはとぼけたように

『何故?問題ないけど?』


…いやいや問題しかないけど?


アナベルは目の前の話の通じない2人を交互に見つめた。


『エレナ様、いいですか?貴女は大きな勘違いをしていらっしゃるわ。私はトゥモルデン帝国の皇太子妃ですからね?それに、もし、もしもの話ですけど皇太子妃で無くなったとしてもどなたへも嫁ぐつもりなどございませんわよ?』


エレナはアナベルの言葉を理解しようと固まっていたがようやく理解できたのか慌てて口を開いた。


『困ります!それでは私がカイン様の側妃になれないじゃないですか!』


『そもそもおかしな話ですわよ?何故あなたの側妃と私が関係ありますの?』


アナベルの問にエレナも納得したのかカイン・カサンドラに視線を流した。カイン・カサンドラはうん?とでもいうように微笑んでエレナの問の返答かのような仕草をみせた。


エレナは頭を巡らせながらも、ついに脳みそがキャパオーバーがきて


『とにかくアナベル様にはカサンドラ王太子妃になって頂かなくては困るのです!』


『貴女が困るか困らないかは存じませんが、それほどまでにカイン様に嫁がれたいならエレナ様が王太子妃となればよろしいのでは?』


アナベルの言葉にぱぁと花を咲かせたエレナではあるがすぐに現実に戻された。


『それは無理だよ。』


2人は一斉にカイン・カサンドラを見た。


『王太子妃になるにはそれなりに、いや相当に優れていないとね。エレナ嬢には無理だよ。』 

アナベルは一見、微笑んでいるカインの表情の奥にある冷たい眼差しに寒気を覚えた。


『エレナ様。そもそも何故カサンドラ王国なのですか?何故カサンドラ王太子なのですか?』

『だって…』


エレナの返答を遮るようにカイン・カサンドラは口を開いた。


『エレナ嬢はね、トゥモルデン王国で王太子に弄ばれてボロボロになって我が国に流れ着いたんだ。それを拾ったのが我が国だからね?』


…拾った?


アナベルは眉間にシワを寄せた。


『でしたら何故、エレナ様の側妃と私が関係するのです?』


カイン・カサンドラは王太子スマイルを前面に


『私が求めているからだよ。』


…はぁ?


アナベルは驚き目を見開いた。


『エレナ様、帰りましょう。カイン様に嫁いでも貴女は幸せにはなれないわ。』

エレナの手を引くアナベルを他所にカイン・カサンドラはエレナを凝視すると


『いいのかな?』

不適な笑みを送ったのである。







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』

放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。 「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」 身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。 冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。 「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」 得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。 これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。

働かないつもりでしたのに、気づけば全部うまくいっていました ――自由に生きる貴族夫人と溺愛旦那様』

鷹 綾
恋愛
前世では、仕事に追われるだけの人生を送り、恋も自由も知らないまま終わった私。 だからこそ転生後に誓った―― 「今度こそ、働かずに優雅に生きる!」 と。 気づけば貴族夫人、しかも結婚相手は冷静沈着な名門貴族リチャード様。 「君は何もしなくていい。自由に過ごしてくれ」 ――理想的すぎる条件に、これは勝ち確人生だと思ったのに。 なぜか気づけば、 ・屋敷の管理を改善して使用人の待遇が激変 ・夫の仕事を手伝ったら経理改革が大成功 ・興味本位で教えた簿記と珠算が商業界に革命を起こす ・商人ギルドの顧問にまで祭り上げられる始末 「あれ? 私、働かない予定でしたよね???」 自分から出世街道を爆走するつもりはなかったはずなのに、 “やりたいことをやっていただけ”で、世界のほうが勝手に変わっていく。 一方、そんな彼女を静かに見守り続けていた夫・リチャードは、 実は昔から彼女を想い続けていた溺愛系旦那様で――。 「君が選ぶなら、私はずっとそばにいる」 働かないつもりだった貴族夫人が、 自由・仕事・愛情のすべてを“自分で選ぶ”人生に辿り着く物語。 これは、 何もしないはずだったのに、幸せだけは全部手に入れてしまった女性の物語。

裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。

夏生 羽都
恋愛
王太子の婚約者で公爵令嬢でもあったローゼリアは敵対派閥の策略によって生家が没落してしまい、婚約も破棄されてしまう。家は子爵にまで落とされてしまうが、それは名ばかりの爵位で、実際には平民と変わらない生活を強いられていた。 辛い生活の中で母親のナタリーは体調を崩してしまい、ナタリーの実家がある隣国のエルランドへ行き、一家で亡命をしようと考えるのだが、安全に国を出るには貴族の身分を捨てなければいけない。しかし、ローゼリアを王太子の側妃にしたい国王が爵位を返す事を許さなかった。 側妃にはなりたくないが、自分がいては家族が国を出る事が出来ないと思ったローゼリアは、家族を出国させる為に30歳も年上である伯爵の元へ後妻として一人で嫁ぐ事を自分の意思で決めるのだった。 ※作者独自の世界観によって創作された物語です。細かな設定やストーリー展開等が気になってしまうという方はブラウザバッグをお願い致します。

残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
公爵令嬢アンジェリカは六歳の誕生日までは天使のように可愛らしい子供だった。ところが突然、ロバのような顔になってしまう。残念な姿に成長した『残念姫』と呼ばれるアンジェリカ。友達は男爵家のウォルターただ一人。そんなある日、隣国から素敵な王子様が留学してきて……

【短編】記憶を失っていても

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
 7年以上前の記憶のない平民出身のラチェルは、6年前に娘のハリエットを生んでからグリオス国のアンギュロスの森付近の修道院で働きながら暮らしていた。  そんなある日ハリエットは見たことのない白銀色の大樹を見つけたと、母ラチェルに話すのだが……。  これは記憶の全てを失ったラチェル──シェシュティナが全てを取り戻すまでのお話。 ※氷雨そら先生、キムラましゅろう先生のシークレットベビー企画開催作品です( ´艸`)

王子様とずっと一緒にいる方法

秋月真鳥
恋愛
五歳のわたくし、フィーネは姉と共に王宮へ。 そこで出会ったのは、襲われていた六歳の王太子殿下。 「フィーネ・エルネスト、助太刀します! お覚悟ー!」 身長を超える大剣で暗殺者を一掃したら、王子様の学友になっちゃった! 「フィーネ嬢、わたしと過ごしませんか?」 「王子様と一緒にいられるの!?」 毎日お茶して、一緒にお勉強して。 姉の恋の応援もして。 王子様は優しくて賢くて、まるで絵本の王子様みたい。 でも、王子様はいつか誰かと結婚してしまう。 そうしたら、わたくしは王子様のそばにいられなくなっちゃうの……? 「ずっとわたしと一緒にいる方法があると言ったら、フィーネ嬢はどうしますか?」 え? ずっと一緒にいられる方法があるの!? ――これは、五歳で出会った二人が、時間をかけて育む初恋の物語。 彼女はまだ「恋」を知らない。けれど、彼はもう決めている――。 ※貧乏子爵家の天真爛漫少女×策略王子の、ほのぼのラブコメです。 ※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。

料理がマズいと言われ続けて限界がきたので、もっとマズいものを作って差し上げたら旦那様に泣かれてしまいました

九条 雛
恋愛
和平の証として魔族の元へと嫁がされたエルネットは、作った料理が不味いと毎日なじられ続けていた。 それでも魔族の慣わしとして、家族の口へと入る料理は彼女が作らねばならないらしい。 侯爵家の令嬢で、料理をしたことがなかった自分が悪いのだと努力を続けるエルネットだったが、それでも夫は彼女の料理を不味いと言い捨て、愛人の元へ通いに行くと公言する。 ほとんど限界を迎えていた彼女の中で、ついに何かがプツリと切れた。

【完結】無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない

ベル
恋愛
旦那様とは政略結婚。 公爵家の次期当主であった旦那様と、領地の経営が悪化し、没落寸前の伯爵令嬢だった私。 旦那様と結婚したおかげで私の家は安定し、今では昔よりも裕福な暮らしができるようになりました。 そんな私は旦那様に感謝しています。 無口で何を考えているか分かりにくい方ですが、とてもお優しい方なのです。 そんな二人の日常を書いてみました。 お読みいただき本当にありがとうございますm(_ _)m 無事完結しました!

処理中です...