最愛の人の幸せが私の幸せ【完】

mako

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剣ではなく、知恵で討て

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ファビウスは、手袋を嵌めたまま文書の束を次々に検めていた。無表情に見えるその顔には、明らかな集中の色が宿っている。

手元に広げられたのは――
偽の部署「第4課」の帳簿。物資の移動記録。
それらが王弟派の資金流れと不自然な一致を見せている。

「……やはり、表向きの資金の半分以上が“紙の上だけ”で動いている」

椅子に腰かけ、彼は一冊の帳簿を手に取った。
そこに記されていた名前に、目が止まる。

 
「グレーヴ家名義・非公式支出」
 ――そこには、複数の名士の家名が並んでいた。

「……“保守派”の中に、今も王弟派と通じている者がいるのか」

ファビウスは静かにメモを取った。続いて別の封筒を取り出す。それは――マリアが手にしていたとされる「筆跡の見本台帳」。

そして、ある記録に辿り着く。

 > 納品日:○月×日
 > 宛先:G-04課 アルノー・グレーヴ補佐官殿
 > 内容:筆跡写本(公爵令嬢リディアンネ筆)1部



「……証拠は、揃ったな」

ファビウスは立ち上がる。それと同時に、背後の影が動いた。

「気づいていたんですね、ファビウス様」

姿を現したのは、侍女アデル。だがその表情は、いつもの柔和な侍女ではなかった。


「貴女が“内通者”だったとは……少し、意外でした」

ファビウスは淡々と告げる。アデルは静かに微笑んだ。


「マリア様が捨て駒にされたと知った時、もう迷いはありませんでした。あの方を捨てた連中が“王宮にまだいる”なら――私の手で、終わらせたいんです」

ファビウスは一瞬だけ彼女を見つめ、頷いた。


「……協力しろ。君の証言があれば、この一件は確実に“内乱未遂”で処理できる。証拠は、すでにここにある」

彼は書類を一つにまとめると、懐に収めた。


「――明朝、王太子殿下へ報告する」






机の上に並べられた証拠の束を、ハインツは一枚ずつ丁寧に目を通していた。彼の表情は静かだったが、その瞳の奥では怒りと決意が静かに燃えていた。

「ここまで……やられていたのか。マリアの件は、序章にすぎなかった」

「はい。そして今、王弟派の“再起”は、完全に潰える時を迎えます」

ファビウスは背筋を伸ばして立ち、最後の封筒を差し出す。

「この情報は、王に直接上申します。殿下からの指示として」

「……頼む」

ハインツはその手を受け取り、短く、だが力強く答えた。

「もう誰一人、あんな目には遭わせない。リディアンネも――そして、マリアすら」

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