最愛の人の幸せが私の幸せ【完】

mako

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声なき者に、光を

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天井高く、陽光がステンドグラスを通して降り注いでいた。
 その下、王太子の隣に並ぶ一人の令嬢の姿に、列席した廷臣たちはざわめいていた。

 ――公爵令嬢、リディアンネ。

 一度は陰謀の渦中に置かれ、王太子妃の候補から退けられるのでは、と囁かれていた存在。
 しかし今、彼女はここに、**“真実を貫いた者”**として立っている。

 前方、玉座に腰掛けた国王が静かに口を開いた。

 「先日、王弟派の残党による内乱未遂が発覚した。
  その首謀はアルノー・グレーヴ――かつて我が弟の側近として王位継承に干渉した者である」

 場内の空気が凍りつく。
 王は続ける。

 「グレーヴは、偽の文書を用いて宰相家とその令嬢を陥れ、王太子の信用を揺るがすことを画策した。
  だが、それはこの令嬢の揺るぎなき態度、そして忠義なる臣下たちによって、未然に防がれた」

 その言葉に、リディアンネの瞳が揺れる。

 玉座の王は、はっきりと宣言した。

 「ここに、リディアンネ・フォン・ヴァルトシュタインの名誉がすべて回復されたことを公にしよう。
  この王宮において、彼女は……“信義の象徴”である」

 沈黙。
 だがその直後、廷臣の一人が――高名な枢機卿が、立ち上がった。

 「公爵令嬢に、敬意を」

 それを皮切りに、次々と立ち上がる貴族たち。
 やがて全員が一斉に頭を下げる。その静かな動きが、なにより雄弁な“承認”だった。

 王太子ハインツが一歩、彼女の隣に立ち、視線を合わせる。

 「君の勇気と誇りが、王宮を救った。
  ……そして、私の心も」

 リディアンネは一瞬目を伏せ、そして、ゆっくりと顔を上げた。

 「わたしはただ、信じた道を選んだだけです」

 それは誇り高き言葉だった。
 王宮の空気が、確かに――彼女に向かって、変わり始めていた。
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