婚約破棄から始まる物語【完】

mako

文字の大きさ
48 / 76

真実の愛の終わり

しおりを挟む
こうしてアレクセイとヴィクトリアの真実の愛は終わりを告げた。

『アレク、いつから動いてた?』

『うん?』

とぼけるアレクセイにレイモンドは問うた。

『いつから離縁を目論んでたんだ?』

アレクセイは苦笑いをしながら

『初夜の後?』


『そんなに早く?どんだけペラッペラの真実の愛なんだよ』


『だな?』

照れる様に笑ったアレクセイにレイモンドは



『でもさ、最後のあの表情はあまりに美しく、危うく持ってかれそうになったよ』

思い出すかのようなレイモンドに

『じゃあ、持ってけば?』


レイモンドはすぐさま首を振り

『要らんわ!』


アレクセイはレイモンドを一人執務室に残し部屋に戻った。





『アナスタージア‥』

アナスタージアの部屋を訪れたアレクセイは静かに声を掛けた。夜も遅くなっていたので眠りについているかも知れない。だけれどアナスタージアにすぐに会いたかった。


ベッドから起き上がるアナスタージアは涙を流していた。

急いで駆け寄り抱きしめる。

『アレク‥』

泣き腫らした顔は、普段よりも幼く見えた。

『アナ、どうした?』

涙を優しく拭うとアナスタージアは小さく笑い

『大丈夫なのですよ。毎日こうして泣きながら眠るのが日課ですから。』

『毎日?毎日泣いてたの?』

『ですから慣れておりますので!』

鼻水をすすりながら話すアナスタージア。
アレクセイは痛む心を目を閉じて受け入れた。


『アナ、すまない。』

『アレク、何を謝るのですか?』


『こんなに辛い思いをさせて』

『これは私が勝手に恋に落っこちたからですわ!』


アレクセイはおどけるアナスタージアを眺めながら込み上げてくるものがあった。アレクセイは顔を隠す様にアナスタージアを抱きしめながら

『アナ、結婚しよう。』

アナスタージアは平然と

『もう、しておりますわ。』

『‥そうではなくて、君に正妃になってほしい。』


‥固まるアナスタージア。

『ヴィクトリアの子どもは私の子どもではない。初めから分かっていたんだけどね。早くアナに伝えたかったが状況が状況だったからね。全部片付けてから話したかったんだ。』


『‥』


『アナ?』


アナスタージアはアレクセイを睨み付けて


『どうしてくれるのですか?』

アレクセイは‥いきなりの問いに首を傾げた。


アナスタージアは白いハンカチでいっぱいになった以前より大きなバスケットを持ってきた。


『これ、え?また?』

『アレクと会えない間にこんなに溜まってしまい、本当にお店が開けそうですわ!責任持って持ち帰って下さいね。』


アレクセイは嬉しそうに微笑み


『持ち帰るなんて事できないよ?
だってこれからはアナの部屋は私と同じになるのだから。』


アナスタージアは満面の笑みを浮かべてアレクセイに飛びついた。華奢なアナスタージアを軽く抱きとめ

『会いたかった‥』

本音を漏らすアレクセイなアナスタージアも

『もう、涙が枯れましたわ。』

上目遣いで攻撃してみた。



『アナ、そんな手法どこで覚えたの?』

アレクセイが困った様に言うと

『私も時間はたっぷりありましたもの、学びますわ』

『そんな事、学ばなくてもいいよ‥』

降参するかのように呟くと

『アナ、今日はねアナとずっと一緒に居られる様に頑張ったんだ。褒美は?』

耳元で囁やかれ、真っ赤になるアナスタージアに

『イヤ?』

アナスタージアの耳を甘咬みすると

ピョンと跳ね上がるアナスタージアをすくい上げベッドに運び組み敷いた。

重なる視線が待ち焦がれた2人を一層に熱くした。

アレクセイは微笑むアナスタージアの頬に手を触れると同事にアナスタージアはゆっくりと目を閉じた。


2人は離れていた時間を取り戻すかの様に求め合い、眠りにつく頃には夜が明けていたのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ハーレム系ギャルゲの捨てられヒロインに転生しましたが、わたしだけを愛してくれる夫と共に元婚約者を見返してやります!

ゴルゴンゾーラ三国
恋愛
 ハーレム系ギャルゲー『シックス・パレット』の捨てられヒロインである侯爵令嬢、ベルメ・ルビロスに転生した主人公、ベルメ。転生したギャルゲーの主人公キャラである第一王子、アインアルドの第一夫人になるはずだったはずが、次々にヒロインが第一王子と結ばれて行き、夫人の順番がどんどん後ろになって、ついには婚約破棄されてしまう。  しかし、それは、一夫多妻制度が嫌なベルメによるための長期に渡る計画によるもの。  無事に望む通りに婚約破棄され、自由に生きようとした矢先、ベルメは元婚約者から、新たな婚約者候補をあてがわれてしまう。それは、社交も公務もしない、引きこもりの第八王子のオクトールだった。  『おさがり』と揶揄されるベルメと出自をアインアルドにけなされたオクトール、アインアルドに見下された二人は、アインアルドにやり返すことを決め、互いに手を取ることとなり――。 【この作品は、別名義で投稿していたものを改題・加筆修正したものになります。ご了承ください】 【この作品は『小説家になろう』『カクヨム』にも掲載しています】

アンジェリーヌは一人じゃない

れもんぴーる
恋愛
義母からひどい扱いされても我慢をしているアンジェリーヌ。 メイドにも冷遇され、昔は仲が良かった婚約者にも冷たい態度をとられ居場所も逃げ場所もなくしていた。 そんな時、アルコール入りのチョコレートを口にしたアンジェリーヌの性格が激変した。 まるで別人になったように、言いたいことを言い、これまで自分に冷たかった家族や婚約者をこぎみよく切り捨てていく。 実は、アンジェリーヌの中にずっといた魂と入れ替わったのだ。 それはアンジェリーヌと一緒に生まれたが、この世に誕生できなかったアンジェリーヌの双子の魂だった。 新生アンジェリーヌはアンジェリーヌのため自由を求め、家を出る。 アンジェリーヌは満ち足りた生活を送り、愛する人にも出会うが、この身体は自分の物ではない。出来る事なら消えてしまった可哀そうな自分の半身に幸せになってもらいたい。でもそれは自分が消え、愛する人との別れの時。 果たしてアンジェリーヌの魂は戻ってくるのか。そしてその時もう一人の魂は・・・。 *タグに「平成の歌もあります」を追加しました。思っていたより歌に注目していただいたので(*´▽`*) (なろうさま、カクヨムさまにも投稿予定です)

悪役令嬢の役割は終えました(別視点)

月椿
恋愛
この作品は「悪役令嬢の役割は終えました」のヴォルフ視点のお話になります。 本編を読んでない方にはネタバレになりますので、ご注意下さい。 母親が亡くなった日、ヴォルフは一人の騎士に保護された。 そこから、ヴォルフの日常は変わっていく。 これは保護してくれた人の背に憧れて騎士となったヴォルフと、悪役令嬢の役割を終えた彼女とのお話。

この度娘が結婚する事になりました。女手一つ、なんとか親としての務めを果たし終えたと思っていたら騎士上がりの年下侯爵様に見初められました。

毒島かすみ
恋愛
真実の愛を見つけたと、夫に離婚を突きつけられた主人公エミリアは娘と共に貧しい生活を強いられながらも、自分達の幸せの為に道を切り開き、幸せを掴んでいく物語です。

旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~

榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。 ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。 別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら? ー全50話ー

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

竜皇帝陛下の寵愛~役立たずの治癒師は暗黒竜に今日も餌付けされ中!

ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリリアーナ・アンシーは社交界でも醜い容姿故にアザラシ姫と呼ばれていた。 そんな折、敵対する竜の国との平和条約の為に生贄を差し出すことになった。 その相手は純白の聖女と呼ばれるサンドラだったが国の聖女を差し出すわけにも行かず、リリアーナが身代わりを務めることになった。 辺境伯爵令嬢ならば国の為に働くべきだと泣く泣く苦渋の選択をした婚約者だったが体よくリリアーナを国から追い出し、始末する魂胆が丸見えだった。 王も苦渋の選択だったがリリアーナはある条件を付け了承したのだ。 そして決死の覚悟で敵国に迎えられたはずが。 「君が僕のお嫁さんかい?とりあえず僕の手料理を食べてくれないかな」 暗黒竜と恐れられた竜皇帝陛下は何故か料理を振る舞い始めた。 「なるほどコロコロ太らせて食べるのか」 頓珍漢な勘違いをしたリリアーナは殺されるまで美味しい物を食べようと誓ったのだが、何故か食べられる気配はなかった。 その頃祖国では、聖女が結界を敷くことができなくなり危機的状況になっていた。 世界樹も聖女を拒絶し、サンドラは聖女の地位を剥奪されそうになっていたのだった…

処理中です...